[OA-1-4] 作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いたクライアントとセラピストとの意味のある作業の共有と協働
【はじめに】
作業療法では意味のある作業に焦点を当てた支援が推奨されているが,「大切な作業」に対するニードを自ら話すクライアントは少なく,臨床においてその実践は難しい(梅崎ら,2008).しかし,作業療法の説明や意思決定支援における面接を経て,作業療法を展開することにより,作業療法に対する認識を深め,クライアントとの協働的な関係を構築することができる可能性があり,その経過を共有することには意義がある.今回,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice,以下ADOC)を用いて,どの作業の獲得を目標とするかクライアントと共同意思決定し,電気刺激療法や反復促通療法を用いて複合的に介入した結果,クライアントニードである右上肢での箸操作を再獲得でき,主観的評価も改善したため,以下に報告する.尚,本報告にあたり事例に同意を得た.
【事例紹介】
70歳代女性,右利き,病前ADLは自立.左前頭頭頂葉,左視床,左脳梁部に急性脳梗塞を認め,右不全麻痺を発症.第31病日より当院回復期リハビリテーション病棟を経て発症145病日後に自宅退院した. Mini-Mental State Examination (以下MMSE) 20点.機能的自立度評価法 (以下FIM) 88点.食事動作6点.左上肢にてスプーンを使用.右上肢機能評価はFugl-Meyer Assessment (以下FMA) 35/66点.Action Research Arm Test (以下ARAT) 9/57点.Box and Block Test (以下BBT) 右5個,左42個.Motor Activity Log (以下MAL) AOU0.33点,QOM0.33点.日常生活上での麻痺手の使用頻度と質の低下を認めた.
【方法】
作業療法では,事例が大切にしている作業に焦点化し,それを再獲得できるよう一緒に取り組んでいくことを説明した.その後にニードや主観的な作業の問題点の把握を行うために,ADOCを用いた面接を行った.「自分の身の回りのことは自分で行いたい」「利き手が使えないと生活が不便」との発言を認めた.具体的な目標として食事が挙がるも,初回評価時の満足度は1/5点であった.「こんな手ではなんも出来へん」と麻痺手に対し否定的な言動を認め,希望や見通しの希薄さが見受けられた.事例のニードである「場所を問わず3食右上肢で箸 (介助箸を含む) を使用し,家族と一緒に食事を摂る」を合意目標とした.「なぜその作業が出来ないのか」をお互いに意見を出したのち,麻痺手の随意運動の範囲を拡げることを目的に,電気刺激療法や反復促通療法を併用し,課題指向型訓練として正しい持ち方の指導,介助箸の開閉操作訓練,物品を使用した摘み動作訓練,口元リーチを伴った実動作訓練と段階的に難易度設定した順序で進めることを説明し,同意を得た.
【結果】
FMA:63/66点,ARAT:46/57点,BBT:右34個,左41個,MAL:AOU3.7点QOM3.3点と麻痺手の使用頻度,質の向上を認めた.FIM:112点,食事動作6点と点数の変化はないが,右上肢での介助箸操作が可能となった. ADOCを用いた最終評価時の食事に対しての満足度は4/5点と改善し,「これだけ出来るようになったら右手で食べられる」「これで家に帰れる」と発言を認めた.
【考察】
一般的に作業療法は抽象的でイメージが湧きにくく,認知度が低いとされている.その為,作業療法の説明やADOCを用いた面接,目標設定を行うことで事例が意味や価値を感じる作業に焦点化した作業療法を協働し,介入を行うことで,クライアントにとっての健康や幸福に寄与することが出来ると考える.
作業療法では意味のある作業に焦点を当てた支援が推奨されているが,「大切な作業」に対するニードを自ら話すクライアントは少なく,臨床においてその実践は難しい(梅崎ら,2008).しかし,作業療法の説明や意思決定支援における面接を経て,作業療法を展開することにより,作業療法に対する認識を深め,クライアントとの協働的な関係を構築することができる可能性があり,その経過を共有することには意義がある.今回,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice,以下ADOC)を用いて,どの作業の獲得を目標とするかクライアントと共同意思決定し,電気刺激療法や反復促通療法を用いて複合的に介入した結果,クライアントニードである右上肢での箸操作を再獲得でき,主観的評価も改善したため,以下に報告する.尚,本報告にあたり事例に同意を得た.
【事例紹介】
70歳代女性,右利き,病前ADLは自立.左前頭頭頂葉,左視床,左脳梁部に急性脳梗塞を認め,右不全麻痺を発症.第31病日より当院回復期リハビリテーション病棟を経て発症145病日後に自宅退院した. Mini-Mental State Examination (以下MMSE) 20点.機能的自立度評価法 (以下FIM) 88点.食事動作6点.左上肢にてスプーンを使用.右上肢機能評価はFugl-Meyer Assessment (以下FMA) 35/66点.Action Research Arm Test (以下ARAT) 9/57点.Box and Block Test (以下BBT) 右5個,左42個.Motor Activity Log (以下MAL) AOU0.33点,QOM0.33点.日常生活上での麻痺手の使用頻度と質の低下を認めた.
【方法】
作業療法では,事例が大切にしている作業に焦点化し,それを再獲得できるよう一緒に取り組んでいくことを説明した.その後にニードや主観的な作業の問題点の把握を行うために,ADOCを用いた面接を行った.「自分の身の回りのことは自分で行いたい」「利き手が使えないと生活が不便」との発言を認めた.具体的な目標として食事が挙がるも,初回評価時の満足度は1/5点であった.「こんな手ではなんも出来へん」と麻痺手に対し否定的な言動を認め,希望や見通しの希薄さが見受けられた.事例のニードである「場所を問わず3食右上肢で箸 (介助箸を含む) を使用し,家族と一緒に食事を摂る」を合意目標とした.「なぜその作業が出来ないのか」をお互いに意見を出したのち,麻痺手の随意運動の範囲を拡げることを目的に,電気刺激療法や反復促通療法を併用し,課題指向型訓練として正しい持ち方の指導,介助箸の開閉操作訓練,物品を使用した摘み動作訓練,口元リーチを伴った実動作訓練と段階的に難易度設定した順序で進めることを説明し,同意を得た.
【結果】
FMA:63/66点,ARAT:46/57点,BBT:右34個,左41個,MAL:AOU3.7点QOM3.3点と麻痺手の使用頻度,質の向上を認めた.FIM:112点,食事動作6点と点数の変化はないが,右上肢での介助箸操作が可能となった. ADOCを用いた最終評価時の食事に対しての満足度は4/5点と改善し,「これだけ出来るようになったら右手で食べられる」「これで家に帰れる」と発言を認めた.
【考察】
一般的に作業療法は抽象的でイメージが湧きにくく,認知度が低いとされている.その為,作業療法の説明やADOCを用いた面接,目標設定を行うことで事例が意味や価値を感じる作業に焦点化した作業療法を協働し,介入を行うことで,クライアントにとっての健康や幸福に寄与することが出来ると考える.