[OA-10-2] 兵庫県指定自動車教習所における自動車運転再開支援に関する実態調査
【はじめに】脳卒中や頭部外傷患者(以下,脳損傷者)における運転機会の減少は,うつ症状をはじめ,健康アウトカム悪化と関連することが報告されている.脳損傷者の運転再開に向けた能力評価のゴールドスタンダードは実車評価とされており,教習所との連携が不可欠である.連携促進のために,医療機関は教習所側の状況を把握した上で協力関係を構築することが求められる.
【目的】兵庫県内の教習所の脳損傷者に対する自動車運転再開支援の認知度や受け入れ状況・対応などの実態,COVID-19流行前後の繁忙期の変化を把握する.
【方法】兵庫県指定自動車教習所協会に登録されている全55教習所の代表者1名に対し,郵送法でのアンケートを実施した.調査目的,調査対象などを書面により説明し,返送を持って調査への同意を得られたものとした.回収期間は2021年12月から2022年1月末までとした.質問内容は脳損傷者に対する実車評価の有無,医療機関からの情報提供の有無や必要性,COVID-19流行前後の繁忙期の変化などとした.COVID-19流行前後の繁忙期の変化の差の分析はCochran-Mantel-Haenszel testを用い,post-hoc-testとして流行前後のグループワイズ比較を実施した(有意水準5%).統計ソフトはR 4.2.2を用いた.
なお,本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会より,人を対象とする生命科学・医学的研究に関する倫理指針に該当しないものであり,倫理申請は不要であると返答を得て実施した.
【結果】アンケートは,全55施設中,25施設から回答を得た(回収率45.5%).1)脳損傷者に対して自動車運転再開支援を行う医療機関があることについて,知っている(33%),どちらかといえば知っている(25%),どちらかといえば知らない(17%),知らない(25%). 2)実車評価の実施について,あり(25%),なし(71%),依頼を受けたが実施していない(4%).3)実車評価を行う上で医療機関に求める情報について(複数回答可),身体機能障害(83%),高次脳機能障害(83%),運転免許の種類(83%),発症前の運転状況(67%),運転免許の有効期間(50%)運転していない期間(50%)の順で多かった.4)実車評価が受け入れ困難な理由について(複数回答可),そもそもこれまで実車評価の依頼を受けたことがない(72%),身体機能障害や高次脳機能障害について具体的な知識がない(61%),実車評価を進める具体的な方法がわからない(61%),実車評価を担当する適任の指導員がいない(61%),業務が多忙で脳損傷者を受け入れる余裕がない(50%)の順で多かった.5)COVID-19流行前後の繁忙期の変化について,流行前は1,2,3,8,9,12月が繁忙期であるとの回答が50%を超えていた.COVID-19流行前後のグループワイズ比較の結果,COVID-19流行前に加えて5,6,10月が繁忙期であるとの回答が有意に増加していた(p<0.05).
【考察】教習所は障害に関する情報だけでなく,運転免許の種類や発症前の運転状況などの運転に関する情報を必要としていた.また,実車評価の受け入れにあたり,教習所の身体機能障害や高次脳機能障害に関する知識と実車評価の方針も検討する必要性がある.教習所の繁忙期はCOVID-19流行前後で変化していたため,教習所側の業務負担を考慮して実車評価を依頼する必要がある.本研究は2020年度兵庫県作業療法士会学術推進部研究助成を受けた.
【目的】兵庫県内の教習所の脳損傷者に対する自動車運転再開支援の認知度や受け入れ状況・対応などの実態,COVID-19流行前後の繁忙期の変化を把握する.
【方法】兵庫県指定自動車教習所協会に登録されている全55教習所の代表者1名に対し,郵送法でのアンケートを実施した.調査目的,調査対象などを書面により説明し,返送を持って調査への同意を得られたものとした.回収期間は2021年12月から2022年1月末までとした.質問内容は脳損傷者に対する実車評価の有無,医療機関からの情報提供の有無や必要性,COVID-19流行前後の繁忙期の変化などとした.COVID-19流行前後の繁忙期の変化の差の分析はCochran-Mantel-Haenszel testを用い,post-hoc-testとして流行前後のグループワイズ比較を実施した(有意水準5%).統計ソフトはR 4.2.2を用いた.
なお,本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会より,人を対象とする生命科学・医学的研究に関する倫理指針に該当しないものであり,倫理申請は不要であると返答を得て実施した.
【結果】アンケートは,全55施設中,25施設から回答を得た(回収率45.5%).1)脳損傷者に対して自動車運転再開支援を行う医療機関があることについて,知っている(33%),どちらかといえば知っている(25%),どちらかといえば知らない(17%),知らない(25%). 2)実車評価の実施について,あり(25%),なし(71%),依頼を受けたが実施していない(4%).3)実車評価を行う上で医療機関に求める情報について(複数回答可),身体機能障害(83%),高次脳機能障害(83%),運転免許の種類(83%),発症前の運転状況(67%),運転免許の有効期間(50%)運転していない期間(50%)の順で多かった.4)実車評価が受け入れ困難な理由について(複数回答可),そもそもこれまで実車評価の依頼を受けたことがない(72%),身体機能障害や高次脳機能障害について具体的な知識がない(61%),実車評価を進める具体的な方法がわからない(61%),実車評価を担当する適任の指導員がいない(61%),業務が多忙で脳損傷者を受け入れる余裕がない(50%)の順で多かった.5)COVID-19流行前後の繁忙期の変化について,流行前は1,2,3,8,9,12月が繁忙期であるとの回答が50%を超えていた.COVID-19流行前後のグループワイズ比較の結果,COVID-19流行前に加えて5,6,10月が繁忙期であるとの回答が有意に増加していた(p<0.05).
【考察】教習所は障害に関する情報だけでなく,運転免許の種類や発症前の運転状況などの運転に関する情報を必要としていた.また,実車評価の受け入れにあたり,教習所の身体機能障害や高次脳機能障害に関する知識と実車評価の方針も検討する必要性がある.教習所の繁忙期はCOVID-19流行前後で変化していたため,教習所側の業務負担を考慮して実車評価を依頼する必要がある.本研究は2020年度兵庫県作業療法士会学術推進部研究助成を受けた.