[OA-12-2] 痙縮を有する脳卒中患者に対し,修正CI療法と共に圧力波治療を実施し復職に至った一例
【はじめに】脳卒中後の上肢麻痺に対してエビデンスが確立されている治療法にConstraint-induced movement therapy(以下,CI療法)がある.CI療法では,Transfer Package(以下,TP)と呼ばれる行動戦略を用い,獲得した機能を実生活に活かすことを目的としている.また,上肢麻痺と共に代表的な臨床症状である痙縮は,随意運動やADLを制限するため,作業療法士が対応すべき諸問題の1つである.そこで当院では,圧力波治療(Radial Shock Wave Therapy:以下,RSWT)を導入した.RSWTは,整形疾患の組織変性による疼痛・機能改善に有効性が認められていたが,近年,中枢神経疾患の痙縮改善に効果がある事が各種論文により示されている.今回,外来作業療法にて修正CI療法を実践すると共に,上肢痙縮筋に対してRSWTを実施した結果,上肢機能の向上を認め,復職に至った一例を報告する.尚,本報告は,当院倫理審査委員会の承認の上,本人より口頭と書面にて同意を得ている.
【事例紹介】左放線冠梗塞により右片麻痺を呈した右利きの60代後半男性.発症前ADLは自立し,弁当屋の店主として働いていた.回復期リハ病棟入院(41病日~137病日)を経て,147病日の外来作業療法開始時,右上肢は,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢・手指Ⅳ,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下,FMA-UE)37/66点,感覚軽度鈍麻,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)肘関節屈筋2,手関節・手指屈筋1+,握力10.4㎏,STEF51点,Motor Activity Log(以下,MAL)は,Amount of Use(以下,AOU)2.7点,Quality of Movement(以下,QOM)1.9点であった.デマンドは日常生活での麻痺手の使用と復職であった.
【方法】外来作業療法にて週3~4回1日60分,約1か月介入した.1)RSWT:週1回約20分(4~8日間隔)計5回行った.照射部位は,上肢痙縮筋の筋腹および筋腱移行部とした.2)修正CI療法:Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)を用いて,「包丁を使う」,「パソコンやレジの操作」,「文字を書く」,「重たいものを持つ」等を目標とし,課題指向型訓練を中心に介入を行った.TPは竹林ら(2017)の方法に準じて実施し,麻痺手使用の行動契約と共に自宅での麻痺手の使用場面の割り当て(Home Skill Assignment:以下,HSA)リストを作成し,HSAリストにおける問題解決技法の指導とモニタリングの促進を行った.達成したHSAリストの項目は,適宜内容の更新を行った.
【経過・結果】152病日に実施した1回目のRSWT後,MASは肘関節屈筋1,手関節・手指屈筋0となった.179病日に実施した5回目のRSWT後の再評価では,MASは1回目RSWT後と同様,BRS上肢・手指Ⅴ,FMA-UE 53/66点,握力17.2㎏,STEF60点,MALのAOU4.0点,QOM3.7点となった.目標とした動作が麻痺手を使用して可能となり,復職に至った.
【考察】MCIDについて,FMA-UEは7~10点,MALのAOUは0.5点,QOMは0.5~1.1点とされている.本事例は修正CI療法の前後でFMA・MALともにMCIDを超える変化を示しており,上肢機能において臨床上有意な改善を認めた.また,先行研究で報告されている通り,本事例においても1回目のRSWT後,MASの改善を認めた.今回の結果から,痙縮を有する本事例に対しRSWTを用いたことが,より効率的な上肢機能の改善に繋がった可能性が示唆された.また上肢機能の改善だけではなく,TPを含む修正CI療法を行ったことで,獲得した上肢機能を日常生活に汎化させることができ,復職に繋がる麻痺手の使用頻度や動作の質の向上に有用であったと考える.今後は複数例での効果検証を図る必要がある.
【事例紹介】左放線冠梗塞により右片麻痺を呈した右利きの60代後半男性.発症前ADLは自立し,弁当屋の店主として働いていた.回復期リハ病棟入院(41病日~137病日)を経て,147病日の外来作業療法開始時,右上肢は,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢・手指Ⅳ,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下,FMA-UE)37/66点,感覚軽度鈍麻,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)肘関節屈筋2,手関節・手指屈筋1+,握力10.4㎏,STEF51点,Motor Activity Log(以下,MAL)は,Amount of Use(以下,AOU)2.7点,Quality of Movement(以下,QOM)1.9点であった.デマンドは日常生活での麻痺手の使用と復職であった.
【方法】外来作業療法にて週3~4回1日60分,約1か月介入した.1)RSWT:週1回約20分(4~8日間隔)計5回行った.照射部位は,上肢痙縮筋の筋腹および筋腱移行部とした.2)修正CI療法:Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)を用いて,「包丁を使う」,「パソコンやレジの操作」,「文字を書く」,「重たいものを持つ」等を目標とし,課題指向型訓練を中心に介入を行った.TPは竹林ら(2017)の方法に準じて実施し,麻痺手使用の行動契約と共に自宅での麻痺手の使用場面の割り当て(Home Skill Assignment:以下,HSA)リストを作成し,HSAリストにおける問題解決技法の指導とモニタリングの促進を行った.達成したHSAリストの項目は,適宜内容の更新を行った.
【経過・結果】152病日に実施した1回目のRSWT後,MASは肘関節屈筋1,手関節・手指屈筋0となった.179病日に実施した5回目のRSWT後の再評価では,MASは1回目RSWT後と同様,BRS上肢・手指Ⅴ,FMA-UE 53/66点,握力17.2㎏,STEF60点,MALのAOU4.0点,QOM3.7点となった.目標とした動作が麻痺手を使用して可能となり,復職に至った.
【考察】MCIDについて,FMA-UEは7~10点,MALのAOUは0.5点,QOMは0.5~1.1点とされている.本事例は修正CI療法の前後でFMA・MALともにMCIDを超える変化を示しており,上肢機能において臨床上有意な改善を認めた.また,先行研究で報告されている通り,本事例においても1回目のRSWT後,MASの改善を認めた.今回の結果から,痙縮を有する本事例に対しRSWTを用いたことが,より効率的な上肢機能の改善に繋がった可能性が示唆された.また上肢機能の改善だけではなく,TPを含む修正CI療法を行ったことで,獲得した上肢機能を日常生活に汎化させることができ,復職に繋がる麻痺手の使用頻度や動作の質の向上に有用であったと考える.今後は複数例での効果検証を図る必要がある.