[OA-13-1] 脳卒中後上肢麻痺への治療法選択に関する理学療法士・作業療法士の臨床的意思決定
【はじめに】近年,リハビリテーション領域では,根拠に基づく医療の実践が推奨されているが,その実践には,支援リソースの不足が障壁として報告されている.そこで,支援リソースの不足の問題を解決する手段として,Decision Aids; DAが近年開発されている.DAとは,患者と医療者が治療に関する情報を共有し,患者の価値観に基づいて意思決定が行えるよう開発された支援ツールである.今回,我々は脳卒中後上肢麻痺への治療法に関するDAの開発に向けた理学療法士(PT)・作業療法士(OT)を対象とした調査を行った.その結果,脳卒中後上肢麻痺への治療選択における意思決定の要因として,「卒後教育における学習・訓練内容」などの要因が影響することが示唆された.しかし,先行研究では,治療法によって,治療選択に関する意思決定に影響する要因は異なることが報告されている.本研究の目的は,我々が調査したデータをもとに,意思決定に関わる要因の違いを,治療法ごとのサブグループ分析によって明らかにすることである.
【方法】本研究は質問紙を用いた横断研究後のサブグループ分析による研究である.質問紙は「第1部:回答者の人口統計学的特徴」「第2部:治療法の選択」「第3部:治療選択に関わる意思決定の要因」の3部構成とし,MOS Short-Form 356-Item Health Surveyの日本語版が作成された手順を参考にし,質問紙の項目は先行研究から作成した.質問紙の第2部で提示する治療法は,脳卒中患者の治療に携わった経験が3年以上の専門家数名と協議し,合意の得られた24つを選定した.回答者には,上肢麻痺の重症別に最も臨床で用いる治療法を一つ選択するよう求めた.第3部では,治療法を選択する際に各項目がどの程度意思決定に影響するかを5件法で回答を求めた.対象は,日本で脳卒中患者の治療に携わるPT,OTとし,回答者には,質問紙への回答を行う前に,研究の概要と研究参加への利益と不利益などを提示し,回答をもって研究参加への同意が得られたものとすることを明記した上で回答を募った.回答者の人口統計学的特徴と,重症度別の治療法について記述的統計量を算出した.サブグループ分析では,先行研究に基づき,全回答の10%以上の回答を得た治療法を対象とした.回答データの正規性の確認をShapiro-wilk検定で行い,サブグループ間の比較は,正規性の有無に合わせてOne-way ANOVAもしくは一般化線形モデル分析を行い,Bonferroni法による多重比較で検討した.なお,本研究は大阪府立大学倫理委員会の承認を受けている.
【結果】640名の回答が得られ,PT・OT以外の職種からの2件を除外した.サブグループ分析の対象とした治療法は,軽度上肢麻痺に対する課題指向型練習(52%),CI療法(15%),中等度に対する促通反復療法(22%),課題指向型練習(19%),電気刺激療法(18%),ボバース療法(10%),重度に対する電気刺激療法(38%),促通反復療法(18%),ボバース療法(10%),関節可動域訓練(10%)であった.サブグループ間の比較では,課題指向型練習とCI療法では「治療法を用いた臨床経験」,電気刺激療法と促通反復療法,ボバース療法とでは「治療違法の有効性に関するエビデンス」の項目で有意差がみられた.
【考察】本研究の結果から,治療法ごとにその治療法を選択する際の意思決定には相対的に異なった要因の影響度があることが明らかとなった.このような治療選択に関わる要因の分析は,患者と療法士との意思決定に向けた支援に有用であると考える.
【方法】本研究は質問紙を用いた横断研究後のサブグループ分析による研究である.質問紙は「第1部:回答者の人口統計学的特徴」「第2部:治療法の選択」「第3部:治療選択に関わる意思決定の要因」の3部構成とし,MOS Short-Form 356-Item Health Surveyの日本語版が作成された手順を参考にし,質問紙の項目は先行研究から作成した.質問紙の第2部で提示する治療法は,脳卒中患者の治療に携わった経験が3年以上の専門家数名と協議し,合意の得られた24つを選定した.回答者には,上肢麻痺の重症別に最も臨床で用いる治療法を一つ選択するよう求めた.第3部では,治療法を選択する際に各項目がどの程度意思決定に影響するかを5件法で回答を求めた.対象は,日本で脳卒中患者の治療に携わるPT,OTとし,回答者には,質問紙への回答を行う前に,研究の概要と研究参加への利益と不利益などを提示し,回答をもって研究参加への同意が得られたものとすることを明記した上で回答を募った.回答者の人口統計学的特徴と,重症度別の治療法について記述的統計量を算出した.サブグループ分析では,先行研究に基づき,全回答の10%以上の回答を得た治療法を対象とした.回答データの正規性の確認をShapiro-wilk検定で行い,サブグループ間の比較は,正規性の有無に合わせてOne-way ANOVAもしくは一般化線形モデル分析を行い,Bonferroni法による多重比較で検討した.なお,本研究は大阪府立大学倫理委員会の承認を受けている.
【結果】640名の回答が得られ,PT・OT以外の職種からの2件を除外した.サブグループ分析の対象とした治療法は,軽度上肢麻痺に対する課題指向型練習(52%),CI療法(15%),中等度に対する促通反復療法(22%),課題指向型練習(19%),電気刺激療法(18%),ボバース療法(10%),重度に対する電気刺激療法(38%),促通反復療法(18%),ボバース療法(10%),関節可動域訓練(10%)であった.サブグループ間の比較では,課題指向型練習とCI療法では「治療法を用いた臨床経験」,電気刺激療法と促通反復療法,ボバース療法とでは「治療違法の有効性に関するエビデンス」の項目で有意差がみられた.
【考察】本研究の結果から,治療法ごとにその治療法を選択する際の意思決定には相対的に異なった要因の影響度があることが明らかとなった.このような治療選択に関わる要因の分析は,患者と療法士との意思決定に向けた支援に有用であると考える.