第57回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-14] 一般演題:脳血管疾患等 14

Sun. Nov 12, 2023 9:40 AM - 10:40 AM 第2会場 (会議場A1)

[OA-14-3] 脳梗塞急性期における意識障害改善の関連因子

松本 幸樹1,2, 高見 彰淑2, 牧野 美里2 (1.旭川赤十字病院リハビリテーション科, 2.弘前大学大学院保健学研究科)

【はじめに】脳卒中急性期に頻発する意識障害は,脳卒中により低下した生活機能に悪影響を及ぼし,これらを更に低下させる.例えば,意識障害が影響し高次脳機能評価ができない,作業活動が持続しないなど,作業療法評価および介入に支障を来す.そのため,急性期の作業療法士は,意識障害の改善を予測してリハビリテーション(リハ)プログラムを計画する必要がある.そこで,本研究は,脳梗塞患者における意識障害の改善に関連する要因を検討することを目的とした.
【方法】研究デザインは,前向き観察研究とし,リハ開始日(発症翌日)から2週間の経過を追跡した.本研究は,弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会(整理番号:2021-013)の承認のもとに実施した.対象は,当院に入院してリハを行った脳梗塞患者321名とし,入院時にMRI検査を実施できなかった者,リハ開始時に意識清明であった者,重度失語症を認めた者,2週間の観察期間が終了する前に退院となった者を除外した186名を調査対象とした.調査項目は,患者背景として,年齢,性別,視床・脳幹病変の有無,入院時責任病巣体積,機械的血栓回収療法の有無,増悪(脳梗塞拡大,出血性梗塞など)の有無を,既往歴として,脳卒中および認知症の有無を,合併症として,せん妄(日本語版Intensive Care Delirium Screening Checklist),脳浮腫,感染症および脱水・電解質異常の有無を,評価結果として,リハ開始時のJapan Coma Scale(JCS)およびNational Institute of Health Stroke Scale (NIHSS),リハ開始時と比較した2週間後のJCS改善の有無を,リハ状況として,リハ総実施時間/日(分),坐位,立位,歩行練習実施の有無を,服薬状況として,意識障害改善薬使用の有無を収集した.統計解析はJCS改善の有無に関連する因子を検討するために,まずはJCSで一段階以上改善した群(改善群)と非改善群の2群間における全変数をカイ二乗検定,t検定,Man-Whitney U検定で比較した.次に,JCS改善の有無を従属変数,その他の全変数を独立変数とし,強制投入法を用いた多重ロジスティック回帰分析を実施した.
【結果】JCS改善群は113名(60.8%),非改善群は73名(39.2%)であった.JCS改善群は,非改善群よりも年齢が若く(p=0.004),機械的血栓回収療法を実施したものが多く(p=0.044),増悪(p=0.011)および既往の認知症(p=0.040)を有するものが少なく,せん妄(p=0.002)は軽症であった.JCS改善の有無に関連する因子を,多重ロジスティック帰分析を用いて分析した.分析の結果,JCS改善の有無に関連する因子は,年齢(OR0.96,95%CI 0.92-0.99),増悪の有無(OR0.18,95%CI 0.05-0.59),せん妄(OR0.56,95%CI 0.39-0.79),脳浮腫の有無(OR0.178,95%CI 0.04-0.73),リハ開始時JCS(OR3.15,95%CI 1.97-5.03),立位練習実施の有無(OR17.22,95%CI 2.98-99.46)の6項目が選択され,判別的中率は77.0%と良好であった.
【考察】急性期におけるJCS改善の有無に関連する要因を検討した結果,年齢が若く,増悪やせん妄,脳浮腫を有しておらず,リハ開始時JCSが不良であり,立位練習を実施しているものはJCSの改善が良好である可能性が示された.以上より,脳梗塞患者における意識障害は,年齢,増悪,せん妄および脳浮腫の有無,リハ開始時JCS,立位練習実施の有無を考慮することで意識障害の改善を予測できる可能性が示唆された.