第57回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-15] 一般演題:脳血管疾患等 15

Sun. Nov 12, 2023 9:40 AM - 10:40 AM 第3会場 (会議場B1)

[OA-15-1] 脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対して,家族参加型Transfer packageを付加したCI療法を実施した3事例ケースシリーズ

堀 翔平1, 齋藤 結花1, 齋藤 潤也1, 竹林 崇2 (1.札幌渓仁会リハビリテーション病院リハビリテーション部, 2.大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科)

【はじめに】脳卒中後上肢麻痺に対しての治療法の一つにConstraint induced movement therapy(CI療法)がる.CI療法の利点として,麻痺手使用の増大と動作の質の向上が挙げられている.それらを実現するための構成要素として,改善した機能を生活に汎化させる手法としてのTransfer package(以下,TP)がある.TPは通常,対象者と作業療法士(以下,OT)が1対1で実施するが,プロトコルの中には,Caregiver contract(以下,CC)が明示されている.先行研究では国内外で,OTから方法を伝達された友人や家族をコーチとしたCI療法において,一定の成果を挙げたと報告されている.多くの報告の中で,量的練習の観点からCCが用いられているが,筆者らは,TPに家族を参画させ,麻痺手使用に関するモニタリングを家族が担うことでTPの運用を円滑に進め,MALの値が改善した事例を過去の同学会にて報告した.また,脳性麻痺児を対象としたレビューでは,CI療法のプロトコルの重要な側面としてCCを挙げ,介護者の関与と教育が重要であると述べられている.しかし本邦においては,脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対するCCの効果ついての報告は見当たらない.そこで,今回我々は,回復期の脳卒中後上肢麻痺を呈し,麻痺手のセルフモニタリングの不備,作業療法への参加およびモチベーションの管理が困難であった事例に対してCCおよび,TPに家族を参画させ麻痺手使用の増大やセルフモニタリングの改善を図った3例の経過に考察を加えて報告する.【対象】2017年6月1日から2021年9月6日現在までに当院の回復期病棟に入棟した対象者の中で,TPに家族を参画させアプローチを行った3事例(男性2名,女性1名,年齢57±30.63歳,脳出血2名,脳梗塞1名)を対象とした.尚,本報告において対象者に趣旨を説明し書面にて同意を得ている.【方法】CI療法に関しては課題指向型練習と家族参加型のCaregiver contract Transfer package(CC-TP)を実施した.CC-TPは筆者の報告を参考に家族の参画を誘致した上で実施した.通常のTPで実施する運用に加え,モニタリングや行動契約の場面では家族に積極的に助言や意見を頂きながら議論を進めた.自主練習についても先行研究を参考にし,家族および病棟スタッフ主導で20〜40分/日程度実施した.【結果】結果は介入前/CC-TP導入前/CC-TP導入後として示す.FMAは,29.33±11.09点/41.67±14.52点/51.00±8.29点.MAL(AOU/QOM)は,(2.10±1.28点/1.90±1.44点) /(2.33/±0.98点/2.07±1.03点)/(4.01±0.63点/3.72±0.70点)であった.【考察】本アプローチ後,複数の上肢機能評価において臨床上意味のある最小変化量を超える改善を示した.MALに関しては,CC-TP導入後,優位に改善し,本介入の妥当性が担保される結果を示した.通常TP時の評価結果から,本報告における3事例については,通常の運用方法では,TPが機能していなかった可能性が考えられた.本報告のように認知機能障害や種々の高次脳機能障害によりモニタリングに不備がある事例については,CCや脳性麻痺児に対するCI療法の運用に倣い,主介護者の介入によりモニタリングを一部補完するような取り組みが必要である可能性が考えられた.