[OA-3-3] 回復期リハの復職支援として職場上司と面談を実施したが,就労の定着に難渋した高次脳機能障害患者に関する報告
【序論と目的】回復期リハ病棟に入院する高次脳機能障害事例の職場上司と面談を実施した.OTが提示した業務調整案に同意を得た上で事例は復職したが,能力以上の業務を課せられ,仕事の継続に難渋した.事例が就労の定着に難渋した要因を考察し,回復期リハにおけるOTの役割について報告することが本研究の目的である.なお,当院臨床研究倫理審査小委員会の承認及び対象者には同意を得ている.
【対象】事例は50代の女性,右被殼出血を発症し,第23病日に当院回復期リハ病棟に入院した.内縁の夫,息子と暮らし,駐車場管理会社の事務職を5日/週,8.5時間/日勤務していた.業務内容は顧客情報管理,経理,接客,電話対応であった.第92病日の心身機能はBrs.左上肢Ⅴ‐手指Ⅴ‐下肢Ⅴ,MMSE28点,TMT-A181秒,TMT-B271秒であり,注意機能障害が残存していた.屋外歩行はT字杖と短下肢装具で自立し,FIMは124点であった.職業能力は簡単なパソコン入力や書類の整理は可能だが,資料の仕分け,顧客リストの入力,数値の集計で誤りが多かった.OTは職場関係者に対し,事例の障害を理解してもらった上で業務調整案を提示し,復職を目標に面談を実施することとした.
【方法】面談では,高次脳機能障害について,複数の情報を処理できず疲れ易い,業務の優先順位がつけられず時間を要す,新規の業務はミスが増えることを挙げた.業務調整案について,初めて担う業務は他職員と行い,二次チェックを依頼する,業務はリスト化してもらう,金銭管理や期限を要求する業務及び電話対応は控える,定期面談で事例の業務負担を確認してもらう,時短勤務から開始し,徐々にフルタイム勤務を目指すことを挙げた.退院後の復職状況はOTが電話聴取することとした.
【結果】第104病日に面談を実施し,OT,事例,内縁の夫,同部署の上司が参加した.上司は,体調を第一優先してほしいと話し,OTが提示した業務調整案を会社の産業医に報告して復職時期と業務内容を調整することで合意した.事例は第106病日に退院,第122病日から開始した当院外来リハと並行し,第221病日に復職した.勤務は5日/週のフルタイム勤務だが,残業がないよう配慮された.請求書の処理や書類の整理を事例のペースで行い,上司が2次チェックしていた.2ヵ月間の復職プランが会社で実施されていることを確認し,外来リハは第255病日に終了となった.第531病日に電話調査を実施した.事例は期限を要求される業務や金銭管理業務を課され,作業の遅れや失敗を叱責され,仕事が出来ない職員として認識されていた.事例及び内縁の夫は,高次脳機能障害を理由に業務内容の配慮を希望したが,当該の上司は「高次脳機能障害のことは聴いていない」と発言した.内縁の夫は入院中の面談に関して,高次脳機能障害を証明する診断書を発行したり,業務調整案の書類には会社の署名を残すべきだと要望した.
【考察】回復期リハ病棟に入院する高次脳機能障害事例の職場上司と面談し,業務調整案を提示した.結果,復職直後は事例の障害に配慮した業務であったが,1年後は能力以上の業務を課せられ,就労の継続が困難な状況であった.高次脳機能障害者の復職は,職場関係者から長期的に理解してもらう支援が必要で,入院中は障害を証明する診断書の発行や精神保健福祉手帳の取得が有用と考える.また,本事例は復職2ヵ月後に医療機関の支援が断たれてしまった.回復期や外来リハ終了後は,就労支援機関に繋ぎ,対象者の能力に応じた業務調整を職場側に依頼してもらうことが回復期リハにおけるOTの役割と考える.
【対象】事例は50代の女性,右被殼出血を発症し,第23病日に当院回復期リハ病棟に入院した.内縁の夫,息子と暮らし,駐車場管理会社の事務職を5日/週,8.5時間/日勤務していた.業務内容は顧客情報管理,経理,接客,電話対応であった.第92病日の心身機能はBrs.左上肢Ⅴ‐手指Ⅴ‐下肢Ⅴ,MMSE28点,TMT-A181秒,TMT-B271秒であり,注意機能障害が残存していた.屋外歩行はT字杖と短下肢装具で自立し,FIMは124点であった.職業能力は簡単なパソコン入力や書類の整理は可能だが,資料の仕分け,顧客リストの入力,数値の集計で誤りが多かった.OTは職場関係者に対し,事例の障害を理解してもらった上で業務調整案を提示し,復職を目標に面談を実施することとした.
【方法】面談では,高次脳機能障害について,複数の情報を処理できず疲れ易い,業務の優先順位がつけられず時間を要す,新規の業務はミスが増えることを挙げた.業務調整案について,初めて担う業務は他職員と行い,二次チェックを依頼する,業務はリスト化してもらう,金銭管理や期限を要求する業務及び電話対応は控える,定期面談で事例の業務負担を確認してもらう,時短勤務から開始し,徐々にフルタイム勤務を目指すことを挙げた.退院後の復職状況はOTが電話聴取することとした.
【結果】第104病日に面談を実施し,OT,事例,内縁の夫,同部署の上司が参加した.上司は,体調を第一優先してほしいと話し,OTが提示した業務調整案を会社の産業医に報告して復職時期と業務内容を調整することで合意した.事例は第106病日に退院,第122病日から開始した当院外来リハと並行し,第221病日に復職した.勤務は5日/週のフルタイム勤務だが,残業がないよう配慮された.請求書の処理や書類の整理を事例のペースで行い,上司が2次チェックしていた.2ヵ月間の復職プランが会社で実施されていることを確認し,外来リハは第255病日に終了となった.第531病日に電話調査を実施した.事例は期限を要求される業務や金銭管理業務を課され,作業の遅れや失敗を叱責され,仕事が出来ない職員として認識されていた.事例及び内縁の夫は,高次脳機能障害を理由に業務内容の配慮を希望したが,当該の上司は「高次脳機能障害のことは聴いていない」と発言した.内縁の夫は入院中の面談に関して,高次脳機能障害を証明する診断書を発行したり,業務調整案の書類には会社の署名を残すべきだと要望した.
【考察】回復期リハ病棟に入院する高次脳機能障害事例の職場上司と面談し,業務調整案を提示した.結果,復職直後は事例の障害に配慮した業務であったが,1年後は能力以上の業務を課せられ,就労の継続が困難な状況であった.高次脳機能障害者の復職は,職場関係者から長期的に理解してもらう支援が必要で,入院中は障害を証明する診断書の発行や精神保健福祉手帳の取得が有用と考える.また,本事例は復職2ヵ月後に医療機関の支援が断たれてしまった.回復期や外来リハ終了後は,就労支援機関に繋ぎ,対象者の能力に応じた業務調整を職場側に依頼してもらうことが回復期リハにおけるOTの役割と考える.