[OA-4-4] 上肢挙上運動をアシストする外骨格ロボットリハビリテーションによって機能改善を認めた1例
【序論】 脳卒中患者において上肢運動麻痺の改善は重要な課題であり,上肢リハビリテーション(以下,リハ)の実施には上肢挙上運動を行うために肩を中心とした近位部の安定性が不可欠である.麻痺側肩の機能障害は,機能改善の阻害因子となるだけでなく,亜脱臼や痛みなど他の合併症の原因となることが知られている.したがって,麻痺側肩の機能改善を目指すことは,安全かつ効果的なリハを行う上で重要である.近年,脳卒中上肢リハではロボット療法が広く用いられているが,麻痺側肩に特化したロボットは少なく,上肢挙上運動をサポートするロボットは特に少ない.現在,上肢挙上運動をアシストする外骨格ロボットを開発し,臨床研究を実施している.この外骨格ロボットは,株式会社国際電気通信基礎技術研究所によって開発されたもので,肘と前腕をベルトで支え,空気圧によって人工筋肉を駆動させることで,滑らかな上肢挙上運動をアシストすることが可能である.上肢挙上運動時のアシスト量は,自身の上肢の重さを基準に100段階で調整することが可能である.今回,外骨格ロボットを用いたリハを実施し上肢機能の改善を認めた1症例を報告する.
【症例紹介】 症例は左視床出血による右片麻痺を呈した50代男性,発症から4年後に上肢リハ実施目的でA病院を受診し,短期集中リハ目的で入院となった.入院時のFugl-Meyer Assessment(FMA)上肢スコアは27点,痙縮はModified Ashworth Scale(MAS)で肘屈曲1+,手掌屈1+,上肢の使用頻度はMotor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)が0.5点,Quality of Movement(QOM)が0.7点であり,上肢挙上運動中に肘屈曲代償が著明に見られた.
【方法】 介入プロトコルは,事前評価,10日間の介入,事後評価の計12日で構成された.介入頻度は週4から5回であり,全プロトコルは3週間以内に終了した.事前・事後評価は, FMA上肢スコア,MAS,MAL,表面筋電図(EMG),肩屈曲の三次元動作分析を実施した.動作分析はKinect Azure(Microsoft)を用いて,肩屈曲の最大自動可動域(A-ROM),および肘屈曲代償の割合を算出した(計算式:{肩から手の長さ/(肩から肘の長さ)+肘から手の長さ)}×100).この計算式は,値が小さいほど肘が屈曲していることを示す指標であり,肘伸展位であれば分母と分子が同値になるため100%となり,肘が屈曲すると分子が小さくなるため割合が小さくなる.介入は,事前評価で取得したEMGから算出したアシスト量にて,上肢挙上運動を1日10回×10セットの計100回(約40分)を10日間実施した.さらに,ロボットリハの他に,1日8時間随意運動介助型電気刺激(MURO Solution)を装着し,週5回1時間の作業療法を実施した.なお,本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき実施し,慶應義塾大学倫理委員会の審査・承認を得て行った.個人情報は匿名化によって保護し,インフォームド・コンセントは対象者本人から文書説明・文書同意によって取得した.
【結果】 ロボットリハの介入後,FMA上肢スコアが33点,MASが肘屈曲1,手掌屈1+,MALのAOUが1.0点,QOMが1.3点に改善した.動作分析では,介入前の肩屈曲最大A-ROMは103度であったが,介入後は140度に改善した.肩屈曲103度での肘屈曲代償の割合は,介入前は74.7%であったが,介入後は80.2%となり,肘屈曲代償が軽減した.
【結論】 上肢挙上運動をアシストするロボットを用いたリハによって,慢性期脳卒中患者において機能改善が見られた.今後は症例数を増やし,本ロボットの安全性や有効性を示すことで,上肢リハにおける治療選択の1つとなり得る.
【症例紹介】 症例は左視床出血による右片麻痺を呈した50代男性,発症から4年後に上肢リハ実施目的でA病院を受診し,短期集中リハ目的で入院となった.入院時のFugl-Meyer Assessment(FMA)上肢スコアは27点,痙縮はModified Ashworth Scale(MAS)で肘屈曲1+,手掌屈1+,上肢の使用頻度はMotor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)が0.5点,Quality of Movement(QOM)が0.7点であり,上肢挙上運動中に肘屈曲代償が著明に見られた.
【方法】 介入プロトコルは,事前評価,10日間の介入,事後評価の計12日で構成された.介入頻度は週4から5回であり,全プロトコルは3週間以内に終了した.事前・事後評価は, FMA上肢スコア,MAS,MAL,表面筋電図(EMG),肩屈曲の三次元動作分析を実施した.動作分析はKinect Azure(Microsoft)を用いて,肩屈曲の最大自動可動域(A-ROM),および肘屈曲代償の割合を算出した(計算式:{肩から手の長さ/(肩から肘の長さ)+肘から手の長さ)}×100).この計算式は,値が小さいほど肘が屈曲していることを示す指標であり,肘伸展位であれば分母と分子が同値になるため100%となり,肘が屈曲すると分子が小さくなるため割合が小さくなる.介入は,事前評価で取得したEMGから算出したアシスト量にて,上肢挙上運動を1日10回×10セットの計100回(約40分)を10日間実施した.さらに,ロボットリハの他に,1日8時間随意運動介助型電気刺激(MURO Solution)を装着し,週5回1時間の作業療法を実施した.なお,本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき実施し,慶應義塾大学倫理委員会の審査・承認を得て行った.個人情報は匿名化によって保護し,インフォームド・コンセントは対象者本人から文書説明・文書同意によって取得した.
【結果】 ロボットリハの介入後,FMA上肢スコアが33点,MASが肘屈曲1,手掌屈1+,MALのAOUが1.0点,QOMが1.3点に改善した.動作分析では,介入前の肩屈曲最大A-ROMは103度であったが,介入後は140度に改善した.肩屈曲103度での肘屈曲代償の割合は,介入前は74.7%であったが,介入後は80.2%となり,肘屈曲代償が軽減した.
【結論】 上肢挙上運動をアシストするロボットを用いたリハによって,慢性期脳卒中患者において機能改善が見られた.今後は症例数を増やし,本ロボットの安全性や有効性を示すことで,上肢リハにおける治療選択の1つとなり得る.