[OA-5-3] 急性期脳卒中患者に対して目標設定が身体機能とADLに与える影響
【はじめに・目的】
近年,目標設定の重要性が再認識されており,目標設定を通して,個別性を重視した治療計画や患者が作業療法へ参加を促すことが期待されている.また,対象者の「個別的なニーズや目標」を探索し,それらを中心に捉えたアプローチが望ましいとガイドライン等によって報じられている.脳卒中リハビリテーションにおいても目標設定を通して,個別性を重視した治療計画や患者を作業療法への参加を促すことが期待され,目標設定の実践が行われている.しかし,急性期脳卒中患者に対し目標設定がもたらす効果についての報告は少ない.その為,急性期脳卒中患者に,各週に目標設定を行い,各週の目標を基に課題指向型訓練と課題に対してのフィードバックを行った群(以下,FB群)と初回のみ,目標設定を行い課題指向型訓練のみを行った群(Control群)で,2群の指標に変化がみられるのか検証する.
【対象・方法】
当院に2022年6月から12月に脳卒中にて入院し,入院前に著明な運動機能および認知機能低下を認めず,ADL自立,著明な高次脳機能障害を呈していない患者64名(Control群:男性24名 女性8名 計32名 平均年齢74.4±9.2歳,FB群:男性30名 女性4名 計34名 平均年齢71.1±10.4歳).6月から8月をControl群,9月から12月をFB群として介入を行った.身体機能評価には,上肢FMA,日常生活における麻痺側の使用頻度をMAL,日常生活動作はFIM運動項目を用いて評価した.目標設定には, Goal attainment scaling(以下,GAS), Canadian Occupational Performance Measure(以下,COPM)の遂行度,満足度を用いて評価した.GASは-1を現状の目標とし,+2を3週までに到達できない目標とした.Control群は,初回のみ目標設定を行い,各評価を3週まで再評価し,FB群は,各週で各評価,目標の再認と,フィードバックを行った.両群ともに訓練は課題指向型訓練を行った.
統計学的処理では,Friedman検定にて両群の各期間における変化を調べ,Holm法にて時期ごとでの差を比較し,Mann-Whitney U検定を用いて両群の評価の値を比較検討した.有意水準は,全て5%未満とした.
【結果】
Control群はFMA,MAL,FIM各期間で有意差(p<0.01)があり,3週目まで改善していた.GASは,初回vs1週目は有意差があったが,以降の週には有意差は認められなかった.COPMの,満足度では,2週目以降に有意差は認められなかった.FB群ではすべての評価項目において各期間に有意差(p<0.01)があり,改善していた.
両群の比較では,初回の各評価には有意差は認められなかった.3週目の各評価の比較では,FMA,MAL,FIMに有意差は認められなかったが,COPM,GASには有意差(p<0.01)を認めた.
【考察】
両群ともに3週目には身体機能,ADLは改善していたが,FB群では,目標設定の評価において優位に改善していた. Smith EBらは,目標設定の有無で身体機能,QOL,リハビリテーション実施期間のいずれにおいても有意差は検出されずと報告している.今回の結果からも先行研究に類似した結果となった.しかし,目標設定のスコアであるGAS,COPMはFB群において改善しており,特に満足度は6.0±1.2であり,MCID以上の結果が得られた.目標設定による身体機能の変化は限定的ではあるが,患者本人の満足度は目標設定により改善し,患者自身の目標に対するパフォーマンスやモチベーションには貢献できるものと推察される.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は関門医療センター倫理審査委員会の承認(承認番号:R0406-1)を得て実施された.
近年,目標設定の重要性が再認識されており,目標設定を通して,個別性を重視した治療計画や患者が作業療法へ参加を促すことが期待されている.また,対象者の「個別的なニーズや目標」を探索し,それらを中心に捉えたアプローチが望ましいとガイドライン等によって報じられている.脳卒中リハビリテーションにおいても目標設定を通して,個別性を重視した治療計画や患者を作業療法への参加を促すことが期待され,目標設定の実践が行われている.しかし,急性期脳卒中患者に対し目標設定がもたらす効果についての報告は少ない.その為,急性期脳卒中患者に,各週に目標設定を行い,各週の目標を基に課題指向型訓練と課題に対してのフィードバックを行った群(以下,FB群)と初回のみ,目標設定を行い課題指向型訓練のみを行った群(Control群)で,2群の指標に変化がみられるのか検証する.
【対象・方法】
当院に2022年6月から12月に脳卒中にて入院し,入院前に著明な運動機能および認知機能低下を認めず,ADL自立,著明な高次脳機能障害を呈していない患者64名(Control群:男性24名 女性8名 計32名 平均年齢74.4±9.2歳,FB群:男性30名 女性4名 計34名 平均年齢71.1±10.4歳).6月から8月をControl群,9月から12月をFB群として介入を行った.身体機能評価には,上肢FMA,日常生活における麻痺側の使用頻度をMAL,日常生活動作はFIM運動項目を用いて評価した.目標設定には, Goal attainment scaling(以下,GAS), Canadian Occupational Performance Measure(以下,COPM)の遂行度,満足度を用いて評価した.GASは-1を現状の目標とし,+2を3週までに到達できない目標とした.Control群は,初回のみ目標設定を行い,各評価を3週まで再評価し,FB群は,各週で各評価,目標の再認と,フィードバックを行った.両群ともに訓練は課題指向型訓練を行った.
統計学的処理では,Friedman検定にて両群の各期間における変化を調べ,Holm法にて時期ごとでの差を比較し,Mann-Whitney U検定を用いて両群の評価の値を比較検討した.有意水準は,全て5%未満とした.
【結果】
Control群はFMA,MAL,FIM各期間で有意差(p<0.01)があり,3週目まで改善していた.GASは,初回vs1週目は有意差があったが,以降の週には有意差は認められなかった.COPMの,満足度では,2週目以降に有意差は認められなかった.FB群ではすべての評価項目において各期間に有意差(p<0.01)があり,改善していた.
両群の比較では,初回の各評価には有意差は認められなかった.3週目の各評価の比較では,FMA,MAL,FIMに有意差は認められなかったが,COPM,GASには有意差(p<0.01)を認めた.
【考察】
両群ともに3週目には身体機能,ADLは改善していたが,FB群では,目標設定の評価において優位に改善していた. Smith EBらは,目標設定の有無で身体機能,QOL,リハビリテーション実施期間のいずれにおいても有意差は検出されずと報告している.今回の結果からも先行研究に類似した結果となった.しかし,目標設定のスコアであるGAS,COPMはFB群において改善しており,特に満足度は6.0±1.2であり,MCID以上の結果が得られた.目標設定による身体機能の変化は限定的ではあるが,患者本人の満足度は目標設定により改善し,患者自身の目標に対するパフォーマンスやモチベーションには貢献できるものと推察される.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は関門医療センター倫理審査委員会の承認(承認番号:R0406-1)を得て実施された.