第57回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等/MTDLP

[OA-5] 一般演題:脳血管疾患等 5/MTDLP 1

Fri. Nov 10, 2023 2:30 PM - 3:30 PM 第3会場 (会議場B1)

[OA-5-4] 急性期脳卒中患者のレジリエンスと抑うつ,QOLとの関連:横断研究

堀内 翔平1,2, 八重田 淳2 (1.医療法人社団明芳会横浜旭中央総合病院リハビリテーションセンター, 2.筑波大学大学院 人間総合科学学術院人間総合科学研究群 リハビリテーション科学学位プログラム)

【背景】脳卒中は死亡や永続的な障害を引き起こし,発生率は年齢とともに増加する.脳卒中後の障害として抑うつ症状が挙げられ,発生頻度は約33%と高く,Activity of Daily Living(以下,ADL)の向上を妨げ,Quality of Life(以下,QOL)を低下させ,死亡率を増加することが報告されている.そのため,脳卒中後の抑うつ症状に対する支援は重要である.
 近年,ポジティブ心理学の発展に伴い,内在するポジティブな力を探求することが重視されている.その中でもレジリエンスは,「適応を促しストレスの負の影響を軽減する個人特性」と定義され,発展してきた.また,QOLの向上や抑うつ症状の軽減に有効であることが報告されているが,脳卒中において同様であるかについては,本邦にて十分検討されていない.
【目的】本研究の目的は,急性期リハビリテーションを受ける脳卒中患者においてのレジリエンスと抑うつ,QOLとの関連を明らかにすることである.
【方法】研究デザインは横断研究とした.研究対象者は当院にて脳卒中を発症し,急性期にてリハビリテーションを受けているとした.包含基準はバイタルサインが安定しているもの,研究参加に同意したものとし,除外基準は一過性脳虚血発作の診断を受けたもの,意識障害や認知症,高次脳機能障害があり質問紙に回答できないものとした.レジリエンスは日本語版Connor Davidson Resilience Scale(以下,CD-RISC)にて測定し,抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS),QOLはStroke Specific Quality of Life(以下,SS-QOL)を測定した.その他の収集項目として,基本属性,脳卒中の重症度,ADL能力を収集した.統計解析では,CD-RISCにおける日本人の平均点65点以上を高レジリエンス群,64点以下を低レジリエンス群に分類し,群間比較を行った.その後,CD-RISCを従属変数HADS,SS-QOLを独立変数として,ピアソンの相関分析,スピアマンの相関分析を用いて相互関連性を確認した.尚,本研究は当院倫理員会の承認を得て実施した.
【結果】研究対象者67名となり,対象者の平均年齢(標準偏差)は70.19(12.78)歳,男性 65.7%,脳梗塞が83.6%であった.家族構成では独居が11.9%であった.CD-RISCの平均点(標準偏差)は63.81(16.91)で,64点未満の研究対象者の36人(53.7%)が低レジリエンス群に分類された.群間比較の結果,自己効力感,調整コーピング,HADSの抑うつにおいて有意差を認めた(p< .05).相関分析では,CD-RISCとHADSとの間に中程度の負の相関関係を認め(r = −0.329,p< .01),SS-QOLの気分との間には中程度の正の相関関係を認めた(r = .326,p < .05)
【考察】脳卒中者においてもレジリエンスによってストレスの低減が図られたことから,抑うつや気分の安定に作用している可能性がある.また,レジリエンスを向上させるためにも,レジリエンスに関連する要因を明らかにする必要性がある.