[OA-5-5] 亜急性期脳卒中者の日常生活活動に対する生活行為向上マネジメントの効果
【序論】生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP) は作業療法を見える化したマネジメントツールである.MTDLPは介護保険や精神障害領域で効果検証がされている.しかし,亜急性期脳卒中者に効果検証はされていない.有効性が明らかになれば,亜急性期から対象者の望む活動,参加に資する意義がある.そこで,本研究の目的は亜急性期脳卒中者の日常生活活動(以下,ADL)に対するMTDLPの効果をシングルケースデザイン(以下,SCD)で明らかにすることである.
【対象】A氏,70歳代,男性,診断名は脳梗塞である.左片麻痺はBrunnstrom Stage(以下,BRS)上肢Ⅲ,手指Ⅲ,下肢Ⅳであった.MMSE21点と注意障害,記憶障害を認めた.ADLはFunctional Independence Measure (以下,FIM)総得点60点,食事と整容以外は車いすで介助を要した.病前は妻と同居でADL自立していた.生きがいはコーラス教室の参加であった.A氏と妻は「身辺処理自立,コーラス教室の再参加」を希望した.
【方法】SCDの AB法を用いる.各期間は1週間とする.A 期(第10~16病日)は機能やADL練習,B 期(第17~23病日)はMTDLPを行う.AB期間とも1日1時間の介入とする.MTDLPは日本作業療法士協会マニュアルより,①生活行為聞き取りシートで合意目標を立案する.A氏は「コーラス教室に再参加するため,歩いて身辺処理ができる」とし,予後予測は脳卒中リハビリ患者の早期自立度予測(二木ら,1982)を参考にした.②MTDLPシート,生活行為課題分析シートでアセスメントとプランニングを行う.③A氏,支援者参加型プログラム(基本:機能練習.応用:多職種でADL練習.社会適応:支援者へ合意目標,ADL評価の伝達),モニタリングを実行する.④生活行為申し送り表の活用とした.評価はBRS,FIM総得点,運動FIM合計,認知FIM合計,下位項目得点とし,これらを従属変数とした.統計学的分析は各期の値をMann Whitney U検定を行う.統計ソフトはJSTATを用い,有意水準は5%とした.また,目視法で検討も行う.尚,本研究はA氏より同意を得ている.
【結果】各期で有意差を認めた評価の平均点(勾配)を記載する.A/B期のFIM総得点63.8点(1.4)/ 74.4点(2.9),運動FIM合計34.8点(1.4)/45.8点(3.2),トイレ動作1点(0)/4.6点(0.3),排尿コントロール3.6点(0.3)/ 5.6点(0.4),排便コントロール3.6点(0.3)/5.6点(0.4)であった.他評価に有意差は認めなかった.
【考察】本研究ではFIM総得点,運動FIM合計,排泄関連得点に有意な改善を認めた.これは,以下の2点が要因と考える.1点目が脳卒中者の各ADL項目の順当な回復過程を辿ったためと考える.脳卒中患者のADL回復順序は食事,整容,排泄,更衣,移乗,歩行,入浴,階段としている(道免ら,2018).A氏は食事,整容の自立度が高かった.そのため,排泄関連で有意な改善を示したと考える.2点目が合意目標を支援者で共有し,望む活動に焦点を当てた介入ができたと考えられる.本邦の脳卒中治療ガイドラインより,回復期脳卒中者に対してADLを向上させるため,多職種連携に基づいた包括的なリハビリ診療が勧められる.ADL内でもトイレ動作は頻度が多く,多職種が関わると推測される.MTDLPはPDCAサイクルに基づく対象者と支援者参加型の介入であるため,亜急性期から多職種連携を促進できる手段と考える.望む活動の支援を切れ目なく行えたことで,FIMの有意な改善を示したと考える.
【結論】亜急性期脳卒中者のADLに対するMTDLPの有効性が示唆された.そのため,亜急性期からMTDLPを行う意義があり,今後のMTDLP発展に貢献できると考える.しかし,本研究はSCDであり,自然回復の影響が排除できない.今後は,複数例での効果検証に繋げたい.
【対象】A氏,70歳代,男性,診断名は脳梗塞である.左片麻痺はBrunnstrom Stage(以下,BRS)上肢Ⅲ,手指Ⅲ,下肢Ⅳであった.MMSE21点と注意障害,記憶障害を認めた.ADLはFunctional Independence Measure (以下,FIM)総得点60点,食事と整容以外は車いすで介助を要した.病前は妻と同居でADL自立していた.生きがいはコーラス教室の参加であった.A氏と妻は「身辺処理自立,コーラス教室の再参加」を希望した.
【方法】SCDの AB法を用いる.各期間は1週間とする.A 期(第10~16病日)は機能やADL練習,B 期(第17~23病日)はMTDLPを行う.AB期間とも1日1時間の介入とする.MTDLPは日本作業療法士協会マニュアルより,①生活行為聞き取りシートで合意目標を立案する.A氏は「コーラス教室に再参加するため,歩いて身辺処理ができる」とし,予後予測は脳卒中リハビリ患者の早期自立度予測(二木ら,1982)を参考にした.②MTDLPシート,生活行為課題分析シートでアセスメントとプランニングを行う.③A氏,支援者参加型プログラム(基本:機能練習.応用:多職種でADL練習.社会適応:支援者へ合意目標,ADL評価の伝達),モニタリングを実行する.④生活行為申し送り表の活用とした.評価はBRS,FIM総得点,運動FIM合計,認知FIM合計,下位項目得点とし,これらを従属変数とした.統計学的分析は各期の値をMann Whitney U検定を行う.統計ソフトはJSTATを用い,有意水準は5%とした.また,目視法で検討も行う.尚,本研究はA氏より同意を得ている.
【結果】各期で有意差を認めた評価の平均点(勾配)を記載する.A/B期のFIM総得点63.8点(1.4)/ 74.4点(2.9),運動FIM合計34.8点(1.4)/45.8点(3.2),トイレ動作1点(0)/4.6点(0.3),排尿コントロール3.6点(0.3)/ 5.6点(0.4),排便コントロール3.6点(0.3)/5.6点(0.4)であった.他評価に有意差は認めなかった.
【考察】本研究ではFIM総得点,運動FIM合計,排泄関連得点に有意な改善を認めた.これは,以下の2点が要因と考える.1点目が脳卒中者の各ADL項目の順当な回復過程を辿ったためと考える.脳卒中患者のADL回復順序は食事,整容,排泄,更衣,移乗,歩行,入浴,階段としている(道免ら,2018).A氏は食事,整容の自立度が高かった.そのため,排泄関連で有意な改善を示したと考える.2点目が合意目標を支援者で共有し,望む活動に焦点を当てた介入ができたと考えられる.本邦の脳卒中治療ガイドラインより,回復期脳卒中者に対してADLを向上させるため,多職種連携に基づいた包括的なリハビリ診療が勧められる.ADL内でもトイレ動作は頻度が多く,多職種が関わると推測される.MTDLPはPDCAサイクルに基づく対象者と支援者参加型の介入であるため,亜急性期から多職種連携を促進できる手段と考える.望む活動の支援を切れ目なく行えたことで,FIMの有意な改善を示したと考える.
【結論】亜急性期脳卒中者のADLに対するMTDLPの有効性が示唆された.そのため,亜急性期からMTDLPを行う意義があり,今後のMTDLP発展に貢献できると考える.しかし,本研究はSCDであり,自然回復の影響が排除できない.今後は,複数例での効果検証に繋げたい.