[OA-6-3] 左視床出血を呈した独居事例への自動車運転,職場復帰を目指した長期介入の一例
【はじめに】当地域では,公共交通機関が乏しく脳損傷者の社会復帰に自動車運転の再開希望者が多い.当院では,入院中から外来移行後も積極的に自動車運転支援を行い,支援方法をマニュアル化整備し定期的評価や教習所での実車評価も行っている.今回,右上下肢の麻痺,感覚障害,注意障害, 病識の低下が残存した事例に対し,外来OTで各問題点に対するアプローチや教習所との連携を図り7か月の長期的介入の結果,運転再開し復職にも至ったため報告する.尚,報告に関し説明し本人より同意を得ている.
【事例紹介】50代男性.右利き.Z日左視床出血で入院.Z+154日運転支援開始.Z+232日自宅退院後は外来で継続.入院前は独居で工場の経理業務をしていた.独身で家族とは疎遠だった.運転は通勤に必要で,転院時の希望は「運転が出来るようになり,復職したい」だった.実行度,満足度1/10.
【運転支援開始時評価】BRSは右allⅣでMASは上肢1,下肢1+.感覚は右上下肢中等度鈍麻.移動は短下肢装具でT字杖歩行自立.認知機能面はHDS-Rは22点.右手足で運転操作が出来るといった発言から病識低下あり.高次脳機能面では健忘性失語あり,BIT(通常)139点,TMTA157秒,B260秒,かな拾い(有意味)Hit率72.7%,コース立方体IQ93.2,ROCFT36点,RBMT18点で注意機能の低下を認め当院の運転再開の基準値に至っていなかった.HONDAセーフティナビドライブシミュレーター評価(以下DS)でも,左操作による不慣れさに加え,音声案内に従えない等情報処理速度の低下を認めた.
【経過と結果】注意機能,情報処理速度の低下に対しては生活範囲の拡大に伴い改善すると予測し,外来では机上課題やDS,屋外歩行等の自宅での自主トレ指導を中心に実施.屋外歩行では,道路や路面状況を判断し,自宅周囲,車通りの少ない道,多い道と段階付け,同時に標識にも気を配るよう意識付けを行った.病識の理解に対しては,DSで右手足の操作が難しいことを適宜走行エラー時にフィードバックし改造の受け入れと危険認識させ,改造を見据えた左操作での練習を継続.外来OT2か月後の高次脳機能検査でBIT146点,TMTA85秒,B210秒,かな拾いHit率76.9%と改善し,医師より実車評価の指示が出た.麻痺や感覚障害に対しては残存したため,改造で実車評価を行う方向で教習所のOTと連携を図ることとした.医学的情報や確認事項を情報共有し,実車評価前に,公安委員会での臨時適正相談に同行して左アクセル限定免許の交付を共に確認した.教習所で改造車を準備してもらい,技能面の習得を図るため教習所で練習を数回行った後,路上評価を実施した.Z+339日医師より運転許可がおり,本人の車の改造を行った.復職については,入院中から職場社長と連絡を取り,現状説明や今後の経過予測,外来移行時も適宜進捗状況を伝え,運転再開後の復職に向けて事例に適する仕事内容や職場環境の調整依頼など並行して行った.Z+366日復職に至り外来OT終了となる.最終時BRSは手指Ⅴに改善しMASや感覚は著変なし.実行度,満足度10/10と「諦めんでよかった.ありがとう」との発言があった.
【考察】渡邊は,高次脳機能障害はその内容や重症度に依存するものの維持期でも十分回復すると述べており,本事例も外来移行後も改善を認め運転再開に至った.また,入院中から事例の出来ること,環境調整等継続して職場と情報共有を行ったことで運転再開から円滑に復職にも至りQOLの確保にも繋がったと考える.加えて,運転支援において教習所との連携が重要視されている中で,当地域では教習所にOTが勤務しており,連携を図ったことで教官への情報共有が円滑に進んだため今後も密に連携を図っていきたい.
【事例紹介】50代男性.右利き.Z日左視床出血で入院.Z+154日運転支援開始.Z+232日自宅退院後は外来で継続.入院前は独居で工場の経理業務をしていた.独身で家族とは疎遠だった.運転は通勤に必要で,転院時の希望は「運転が出来るようになり,復職したい」だった.実行度,満足度1/10.
【運転支援開始時評価】BRSは右allⅣでMASは上肢1,下肢1+.感覚は右上下肢中等度鈍麻.移動は短下肢装具でT字杖歩行自立.認知機能面はHDS-Rは22点.右手足で運転操作が出来るといった発言から病識低下あり.高次脳機能面では健忘性失語あり,BIT(通常)139点,TMTA157秒,B260秒,かな拾い(有意味)Hit率72.7%,コース立方体IQ93.2,ROCFT36点,RBMT18点で注意機能の低下を認め当院の運転再開の基準値に至っていなかった.HONDAセーフティナビドライブシミュレーター評価(以下DS)でも,左操作による不慣れさに加え,音声案内に従えない等情報処理速度の低下を認めた.
【経過と結果】注意機能,情報処理速度の低下に対しては生活範囲の拡大に伴い改善すると予測し,外来では机上課題やDS,屋外歩行等の自宅での自主トレ指導を中心に実施.屋外歩行では,道路や路面状況を判断し,自宅周囲,車通りの少ない道,多い道と段階付け,同時に標識にも気を配るよう意識付けを行った.病識の理解に対しては,DSで右手足の操作が難しいことを適宜走行エラー時にフィードバックし改造の受け入れと危険認識させ,改造を見据えた左操作での練習を継続.外来OT2か月後の高次脳機能検査でBIT146点,TMTA85秒,B210秒,かな拾いHit率76.9%と改善し,医師より実車評価の指示が出た.麻痺や感覚障害に対しては残存したため,改造で実車評価を行う方向で教習所のOTと連携を図ることとした.医学的情報や確認事項を情報共有し,実車評価前に,公安委員会での臨時適正相談に同行して左アクセル限定免許の交付を共に確認した.教習所で改造車を準備してもらい,技能面の習得を図るため教習所で練習を数回行った後,路上評価を実施した.Z+339日医師より運転許可がおり,本人の車の改造を行った.復職については,入院中から職場社長と連絡を取り,現状説明や今後の経過予測,外来移行時も適宜進捗状況を伝え,運転再開後の復職に向けて事例に適する仕事内容や職場環境の調整依頼など並行して行った.Z+366日復職に至り外来OT終了となる.最終時BRSは手指Ⅴに改善しMASや感覚は著変なし.実行度,満足度10/10と「諦めんでよかった.ありがとう」との発言があった.
【考察】渡邊は,高次脳機能障害はその内容や重症度に依存するものの維持期でも十分回復すると述べており,本事例も外来移行後も改善を認め運転再開に至った.また,入院中から事例の出来ること,環境調整等継続して職場と情報共有を行ったことで運転再開から円滑に復職にも至りQOLの確保にも繋がったと考える.加えて,運転支援において教習所との連携が重要視されている中で,当地域では教習所にOTが勤務しており,連携を図ったことで教官への情報共有が円滑に進んだため今後も密に連携を図っていきたい.