[OA-7-2] 急性期脳卒中患者における作業療法が麻痺側上肢使用量に及ぼす影響
【はじめに】脳卒中上肢片麻痺の改善において麻痺手の使用は重要である.麻痺側上肢使用時間の向上に作業療法が寄与するとの報告は亜急性期以降に限られ,急性期ではほとんどない.また上肢片麻痺の重症度別の検討も亜急性期以降に限られる.本研究の目的は,急性期脳卒中患者における作業療法が麻痺側上肢使用量に及ぼす影響を明らかにすることである.
【方法】 2021年6月から2022年9月に初発の一側大脳半球脳卒中で当院に入院し,運動麻痺を認めた107例のうち,意思疎通困難,入院中に症状の増悪や合併症の併発,骨折等の上肢運動制限,透析シャントや末梢点滴により加速度計の装着が困難,同意が得られなった症例らを除外し,発症後2週時に評価測定出来た30例を対象とした.研究プロトコルは発症後2週時にActigraph の3軸加速度計を両手首と体幹部に24時間装着し,臨床評価としてFugl-Meyer Assessment上肢スコア(FMA-UE),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)を測定した.統計解析方法は,Chinらの報告をもとに,各秒の3軸加速度をVector Magnitude(VM)=√(x2+y2+z2)に結合しVM≧2の時間を活動時間とした.そこから麻痺側上肢使用時間,上肢使用時間の比(麻痺側上肢使用時間/非麻痺側上肢使用時間),全身活動時間をそれぞれ24時間中,作業療法(OT)中,理学療法(PT)中,言語聴覚療法(ST)中に分けて算出した.次に算出したデータをKolmogorov-Smirnov検定を用いて正規性を確認し,OT中とPT中の上肢使用時間の比及び全身活動時間をWilcoxon符号付順位検定にて,20分当たりの上肢使用時間を対応のあるt検定にて比較した.なお,有意水準は5%とした.最後にFMA-UEを元に軽度群(51-66),中等度群(23-50),重度群(0-22)に分類し,上肢片麻痺重症度別に上肢使用時間の比を確認した.本研究は当院倫理委員会で承認を得ており,対象者の同意を得て行っている(承認番号 浦倫第3-026号).
【結果】対象は年齢平均67.5±14.3歳,男性12例女性18例,脳梗塞19例脳出血11例,左半球損傷17例右半球損傷13例,左利きは1例であった.臨床評価の中央値(四分位範囲)は,FMA-UE 56(24.8-61.5),ARAT 29(4-53.8),MALのAmount of use 0.6(0-4.1)であった.麻痺側上肢使用時間は中央値で24時間中3.4時間,OT中22.9分,PT中10.1分,ST中4.8分,20分当たりではOT中9.5分,PT中5.5分,ST中3.0分であった.上肢使用時間の比は中央値で,24時間中0.55,OT中1.29,PT中0.82,ST中0.44であった.20分当たりの麻痺側上肢使用時間及び上肢使用時間の比はOT中がPT中に比べ有意に高かった(p<0.001).20分当たりの全身活動時間はOT中1.5分,PT中3.4分,ST中0.8分であり,PT中がOT中に比べ有意に高かった(p<0.001).また,OT中における上肢片麻痺重症度別の上肢使用時間の比は軽度群1.37,中等度群1.29,重症度群0.82であった.
【考察】本研究では麻痺側上肢使用時間及び上肢使用時間の比はOT中が最も高く,これは亜急性期の報告と同様の結果となった.全身活動時間はPT中が最も多く,立位や歩行訓練が結果に貢献していると考えられる.また,OT中の上肢片麻痺重症度別における比較では,軽度群及び中等度群にて非麻痺側上肢に比べ麻痺側上肢の使用時間が多く,全ての重症度において亜急性期の報告より上肢使用時間の比が高い結果となった.これは病期だけでなく治療施設や治療者間における治療内容の差などが影響を与えている可能性がある.
【結論】急性期においても作業療法が麻痺側上肢の使用時間向上に寄与すると考えられる.
【方法】 2021年6月から2022年9月に初発の一側大脳半球脳卒中で当院に入院し,運動麻痺を認めた107例のうち,意思疎通困難,入院中に症状の増悪や合併症の併発,骨折等の上肢運動制限,透析シャントや末梢点滴により加速度計の装着が困難,同意が得られなった症例らを除外し,発症後2週時に評価測定出来た30例を対象とした.研究プロトコルは発症後2週時にActigraph の3軸加速度計を両手首と体幹部に24時間装着し,臨床評価としてFugl-Meyer Assessment上肢スコア(FMA-UE),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)を測定した.統計解析方法は,Chinらの報告をもとに,各秒の3軸加速度をVector Magnitude(VM)=√(x2+y2+z2)に結合しVM≧2の時間を活動時間とした.そこから麻痺側上肢使用時間,上肢使用時間の比(麻痺側上肢使用時間/非麻痺側上肢使用時間),全身活動時間をそれぞれ24時間中,作業療法(OT)中,理学療法(PT)中,言語聴覚療法(ST)中に分けて算出した.次に算出したデータをKolmogorov-Smirnov検定を用いて正規性を確認し,OT中とPT中の上肢使用時間の比及び全身活動時間をWilcoxon符号付順位検定にて,20分当たりの上肢使用時間を対応のあるt検定にて比較した.なお,有意水準は5%とした.最後にFMA-UEを元に軽度群(51-66),中等度群(23-50),重度群(0-22)に分類し,上肢片麻痺重症度別に上肢使用時間の比を確認した.本研究は当院倫理委員会で承認を得ており,対象者の同意を得て行っている(承認番号 浦倫第3-026号).
【結果】対象は年齢平均67.5±14.3歳,男性12例女性18例,脳梗塞19例脳出血11例,左半球損傷17例右半球損傷13例,左利きは1例であった.臨床評価の中央値(四分位範囲)は,FMA-UE 56(24.8-61.5),ARAT 29(4-53.8),MALのAmount of use 0.6(0-4.1)であった.麻痺側上肢使用時間は中央値で24時間中3.4時間,OT中22.9分,PT中10.1分,ST中4.8分,20分当たりではOT中9.5分,PT中5.5分,ST中3.0分であった.上肢使用時間の比は中央値で,24時間中0.55,OT中1.29,PT中0.82,ST中0.44であった.20分当たりの麻痺側上肢使用時間及び上肢使用時間の比はOT中がPT中に比べ有意に高かった(p<0.001).20分当たりの全身活動時間はOT中1.5分,PT中3.4分,ST中0.8分であり,PT中がOT中に比べ有意に高かった(p<0.001).また,OT中における上肢片麻痺重症度別の上肢使用時間の比は軽度群1.37,中等度群1.29,重症度群0.82であった.
【考察】本研究では麻痺側上肢使用時間及び上肢使用時間の比はOT中が最も高く,これは亜急性期の報告と同様の結果となった.全身活動時間はPT中が最も多く,立位や歩行訓練が結果に貢献していると考えられる.また,OT中の上肢片麻痺重症度別における比較では,軽度群及び中等度群にて非麻痺側上肢に比べ麻痺側上肢の使用時間が多く,全ての重症度において亜急性期の報告より上肢使用時間の比が高い結果となった.これは病期だけでなく治療施設や治療者間における治療内容の差などが影響を与えている可能性がある.
【結論】急性期においても作業療法が麻痺側上肢の使用時間向上に寄与すると考えられる.