[OA-7-4] 脳卒中患者における手の心的回転課題と機能障害の関連性
【序論】作業療法士は,脳卒中患者の上肢機能障害に対して機能改善訓練を実施することが多い.脳卒中患者の上肢機能障害に対する機能改善訓練の一つに,運動イメージの想起を用いた訓練があり(推奨度Bエビデンスレベル中:脳卒中治療ガイドライン2021),その運動イメージの評価・訓練として「手の心的回転課題(HMRT)」がある.HMRTは,手の写真を1枚提示し,それが「左手」か「右手」かを判断する課題である.この課題では,指尖が身体の中心側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしやすい角度;Medial)への応答時間(RT)が身体の外側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしにくい角度;Lateral)のRTよりも短いという特徴的なRTプロフィール(ML効果)がみられることから,課題遂行時に被験者の運動イメ-ジが誘発されると考えられている.
HMRTを脳卒中患者の運動イメージ評価・訓練として用いる際には,脳卒中による機能障害の程度を考慮する必要があるが,機能障害の程度とHMRTのRTプロフィールにどのような関連性があるかは不明である.
【目的】本研究の目的は,HMRTのRTプロフィールと機能障害の程度の関連性を明らかにすることである.
【方法】参加者は,文書にて参加同意を得た右手利きの初発脳卒中患者13名(68.2 ± 10.2歳.男性)とした.機能障害の評価には,SIAS,FMA運動・感覚,MMSE-J,TMT-A・Bを用いた.運動イメージ課題には,矢印の左右選択課題(矢印課題)とHMRTを用いた.矢印課題は,左右の矢印画像がコンピュータの画面にランダムに提示された(左右各15枚:30枚).HMRTは,第3指が垂直方向0度となる位置から,時計回りに60度おきに6段階に回転させた左・右および手掌-手背の手写真がランダムに提示された(4種類×6角度×4回:96枚).参加者は左右を出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右ボタンを押して応答した.計測後は,運動応答時間の個人差を考慮して,HMRTのRTから矢印課題のRTを減算した(ΔRT).ML効果を確認するためにMedial ΔRT(左手掌60°120°,左手背240°300°,右手掌240°300°,右手背60°120°)とLateral ΔRT(左手掌240°300°,左手背60°120°,右手掌60°120°,右手背240°300°)を対応のあるt検定にて比較した.また,Medial ΔRTおよびLateral ΔRTと各機能障害の評価結果の関連性をピアソンの積率相関係数を用いて検討した.解析はIBM SPSS Statistics Ver. 27を使用し,危険率は5%とした.
本研究は,所属施設およびデータ収集施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】Medial ΔRT(1179.0 ± 528.4 msec)はLateral ΔRT(1752.6 ± 1124.6 msec)よりも有意に短かった(p = .036).Medial ΔRTおよびLateral ΔRTと各機能障害の評価結果に有意な相関はなかった.
【考察】ML効果がみられたため,本研究の参加者はHMRTを実施する際に運動イメージ方略を用いていることが示唆された.MedialΔRTおよびLateral ΔRTと機能障害の程度に相関関係がなかったことは,本研究で調査した機能障害の程度にかかわらず,HMRTを運動イメージ評価・訓練の一つとして活用できることを示唆している.
HMRTを脳卒中患者の運動イメージ評価・訓練として用いる際には,脳卒中による機能障害の程度を考慮する必要があるが,機能障害の程度とHMRTのRTプロフィールにどのような関連性があるかは不明である.
【目的】本研究の目的は,HMRTのRTプロフィールと機能障害の程度の関連性を明らかにすることである.
【方法】参加者は,文書にて参加同意を得た右手利きの初発脳卒中患者13名(68.2 ± 10.2歳.男性)とした.機能障害の評価には,SIAS,FMA運動・感覚,MMSE-J,TMT-A・Bを用いた.運動イメージ課題には,矢印の左右選択課題(矢印課題)とHMRTを用いた.矢印課題は,左右の矢印画像がコンピュータの画面にランダムに提示された(左右各15枚:30枚).HMRTは,第3指が垂直方向0度となる位置から,時計回りに60度おきに6段階に回転させた左・右および手掌-手背の手写真がランダムに提示された(4種類×6角度×4回:96枚).参加者は左右を出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右ボタンを押して応答した.計測後は,運動応答時間の個人差を考慮して,HMRTのRTから矢印課題のRTを減算した(ΔRT).ML効果を確認するためにMedial ΔRT(左手掌60°120°,左手背240°300°,右手掌240°300°,右手背60°120°)とLateral ΔRT(左手掌240°300°,左手背60°120°,右手掌60°120°,右手背240°300°)を対応のあるt検定にて比較した.また,Medial ΔRTおよびLateral ΔRTと各機能障害の評価結果の関連性をピアソンの積率相関係数を用いて検討した.解析はIBM SPSS Statistics Ver. 27を使用し,危険率は5%とした.
本研究は,所属施設およびデータ収集施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】Medial ΔRT(1179.0 ± 528.4 msec)はLateral ΔRT(1752.6 ± 1124.6 msec)よりも有意に短かった(p = .036).Medial ΔRTおよびLateral ΔRTと各機能障害の評価結果に有意な相関はなかった.
【考察】ML効果がみられたため,本研究の参加者はHMRTを実施する際に運動イメージ方略を用いていることが示唆された.MedialΔRTおよびLateral ΔRTと機能障害の程度に相関関係がなかったことは,本研究で調査した機能障害の程度にかかわらず,HMRTを運動イメージ評価・訓練の一つとして活用できることを示唆している.