第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

脳血管疾患等

[OA-7] 一般演題:脳血管疾患等 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 第3会場 (会議場B1)

[OA-7-5] 急性期脳卒中片麻痺患者における3軸加速度計を用いた上肢活動量の解析方法

植田 修二郎1,2, 北野 花穂子2, 保田 由美子2, 羽鳥 浩三1,2, 藤原 俊之1,3 (1.順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学, 2.順天堂大学医学部附属浦安病院リハビリテーション科, 3.順天堂大学保健医療学部理学療法学科)

【はじめに】脳卒中上肢片麻痺の改善において,麻痺手の使用は重要である.3軸加速度計を使用し上肢活動量を定量化及び可視化することは,上肢の使用頻度やパターンを把握し,患者教育にも応用される.データ解析はいくつかの方法に集約されてきているが確立はしていない.本研究の目的は,急性期脳卒中片麻痺患者における3軸加速度計を用いた上肢活動量の解析方法の特徴を明らかにすることである.
【方法】2021年6月から2022年9月に初発の一側大脳半球脳卒中で当院に入院し,運動麻痺を認めた107例のうち,意思疎通困難,入院中に脳卒中の増悪または合併症の併発,骨折等の上肢運動制限,透析シャントや末梢点滴により加速度計装着が困難,同意が得られなかった症例らを除外し,そこから発症後2週のアウトカム評価を実施できた30例を対象とした.研究プロトコルは,発症後2週に3軸加速度計Actigraph GT3X+を両手首及び体幹部に24時間装着し,臨床評価として,Fugl-Meyer Assessment上肢スコア(FMA-UE),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL),Stroke Impairment Assessment Setの下肢体幹項目を測定した.統計解析方法はBaileyらの報告を参考に,各秒の3軸加速度をVector Magnitude(VM)=√(x2 + y2 + z2 ) に結合し,VM≧2の時間を上肢使用時間とした.そこから麻痺側上肢活動量(麻痺側VM総和),上肢活動量の比(各秒のLog(麻痺側VM/非麻痺側VM)の中央値),上肢活動量の差(麻痺側VM総和-非麻痺側VM総和),麻痺側上肢使用時間,上肢使用時間の比(麻痺側上肢使用時間/非麻痺側上肢使用時間)を算出した.次に加速度計から得られたデータと臨床評価との相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて確認した.有意水準は0.05とした.なお本研究は当院倫理委員会で承認を得ており,対象者に同意を得て行っている(浦倫第3-026号).
【結果】対象は年齢67.5±14.3歳,女性18例男性12例,脳梗塞19例脳出血11例,左半球損傷17例右半球損傷13例,左利きは1例であった.臨床評価は中央値(四分位範囲)にて,FMA-UE 56(24.8-61.5),ARAT 29(4 – 53.8),MALのAmount of use(AOU)0.6(0–4.1),麻痺側上肢活動量の実測値0.67(0.39-1.33)×106,比-5.45(-7- -0.69),差-1.06(-1.32- -0.48)×106,麻痺側上肢使用時間3.41(2.62-5.49)時間,比0.55(0.34-0.84)であった.3軸加速度計から得られたデータと脳卒中上肢評価との相関関係は,麻痺側上肢活動量,上肢活動量の比,麻痺側上肢使用時間,上肢使用時間の比において強く(r= 0.8~0.9),相関係数は上肢使用時間の比において最も高かった.上肢活動量の差は脳卒中上肢評価と相関し(r=0.7前後),下肢体幹機能とも相関した(r=0.5前後).
【考察】本研究結果では,上肢活動量及び上肢使用時間のデータと脳卒中上肢評価は相関関係にあり,相関係数は上肢使用時間の比において最も高かった.また上肢活動量の差は下肢体幹機能とも相関を認めた.Bhatnagarらは,慢性期においてFMA-UE,ARATとの相関は上肢活動量の比で強く,MALとの相関は上肢使用時間の比で強いと報告しており,本研究結果とは一部異なった.またNaraiらは,上肢活動量の差を算出することで,下肢機能とは独立して上肢機能との関連性を確認できると報告しており,本研究結果は異なる結果となった.上肢使用時間の比は脳卒中上肢評価と強く相関し,またデータ抽出及び数値の解釈が容易であるため,臨床で用いやすい指標であると考えられる.
【結論】上肢使用時間の比は臨床に即した解析方法であり,データ集積の統一化や研究者間の相互理解に役立つと考える.