[OA-9-3] 自宅退院となった重度脊髄損傷患者の特徴
【はじめに】
医療の進歩に伴い脊髄損傷者の生存率は飛躍的に向上しているが,継続的な入院が必要となる場合も多い.しかし,医療費が圧迫されるため自宅復帰を進める必要がある.そのため,退院に必要な要因を重点的に支援する必要があるが,その要因については十分な検討がなされていない.そのため,本研究の目的は目的重度脊髄損傷者が自宅退院可能となるための運動機能やADL能力及び社会的側面など要因を明らかにすることである.
【方法】
平成27年4月から令和4年10月まで間に当院に転入院した脊髄損傷患者全70例のうち,明らかにデータ診療録からデータを抽出できなかった例や別疾患治療のため転院した例を除外した.入院時のtotal-Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目が39点以下の重度脊髄損傷者35名(自宅退院23名,非自宅退院12名)を対象とし,後方視的に調査した.対象者の内訳は,C4残存8人,C5残存8人,C6残存8人,C7残存9名,Th1残存2名であった.調査項目を以下に示す.
受傷時年齢,性別,前院入院日数,当院入院日数,前院在院日数と当院在院日数の和である総在院日数,頚椎手術歴の有無,損傷髄節,退院時Frankel分類,退院時AISA分類,入退院時のFIM,入他院時のBarthel Index(以下,BI),退院時HDS-R,褥瘡の有無,尿路感染症の有無,起立性低血圧の有無,同居者の状況,家屋調査の有無,家屋改修の有無,退院後のリフトの使用状況を調査した.また,退院時の移動能力を車椅子移動介助,車椅子駆動自立(電動車椅子含む),歩行(歩行補助具は問わない)の 3つに分類した.統計処理については,各項目について自宅退院可否の2群間においてχ2検定,Mann-Whitney-U検定,2標本t検定を用いて比較した.統計処理は改変Rコマンダー(ver4.0.2)を使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
自宅退院群と非自宅退院群の比較では,退院時BI総得点,退院時BI各項目【トイレ・移乗・階段・歩行】,退院時FIM各項目【上衣更衣・下衣更衣.清潔・排泄・排尿管理・移乗(トイレ)・移乗(ベッド),・移動・運動項目・FIM認知項目】,同居者の有無,退院時移動能力において統計学的有意差を認めた.
【考察】
自宅退院群と非自宅退院群の比較では,BI,FIM共に「移動・移乗に関連する内容」,「排泄・更衣・清潔に係わる内容」に有意な差を認めた.また,環境的な側面は「同居者の有無」に有意な差を認めた.
脊髄損傷者において移動能力は重要な要素であり,自宅内において自身で移動・移乗できれば介助負担が軽減されるため,自宅復帰につながった可能性があると考える.
排泄・更衣・清潔は特に介護者が介護負担を感じやすい部分であることから自宅退院との関連が認められた可能性がある.一方で夜間定時での導尿や日中の頻回な導尿などに対しては夜間間歇バルーン留置や膀胱瘻の造設などが知られているが,本研究では調査の対象としていなかった.そのため,これらの対処方法が自宅退院に繋がる因子となりえるのかについても追加の検証を行う必要があると考える. 環境的要因として本研究では同居者の有無も関係していた.古川ら(2018)は「ADLレベルが高い方が在宅復帰しやすいがマンパワー(同居人数)の方がより自宅復帰に大きく関わっていることも明らかになった」と述べている.しかし,同居家族の果たしている役割や負担感に関しては調査が不足しているため,今後の課題である.
医療の進歩に伴い脊髄損傷者の生存率は飛躍的に向上しているが,継続的な入院が必要となる場合も多い.しかし,医療費が圧迫されるため自宅復帰を進める必要がある.そのため,退院に必要な要因を重点的に支援する必要があるが,その要因については十分な検討がなされていない.そのため,本研究の目的は目的重度脊髄損傷者が自宅退院可能となるための運動機能やADL能力及び社会的側面など要因を明らかにすることである.
【方法】
平成27年4月から令和4年10月まで間に当院に転入院した脊髄損傷患者全70例のうち,明らかにデータ診療録からデータを抽出できなかった例や別疾患治療のため転院した例を除外した.入院時のtotal-Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目が39点以下の重度脊髄損傷者35名(自宅退院23名,非自宅退院12名)を対象とし,後方視的に調査した.対象者の内訳は,C4残存8人,C5残存8人,C6残存8人,C7残存9名,Th1残存2名であった.調査項目を以下に示す.
受傷時年齢,性別,前院入院日数,当院入院日数,前院在院日数と当院在院日数の和である総在院日数,頚椎手術歴の有無,損傷髄節,退院時Frankel分類,退院時AISA分類,入退院時のFIM,入他院時のBarthel Index(以下,BI),退院時HDS-R,褥瘡の有無,尿路感染症の有無,起立性低血圧の有無,同居者の状況,家屋調査の有無,家屋改修の有無,退院後のリフトの使用状況を調査した.また,退院時の移動能力を車椅子移動介助,車椅子駆動自立(電動車椅子含む),歩行(歩行補助具は問わない)の 3つに分類した.統計処理については,各項目について自宅退院可否の2群間においてχ2検定,Mann-Whitney-U検定,2標本t検定を用いて比較した.統計処理は改変Rコマンダー(ver4.0.2)を使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
自宅退院群と非自宅退院群の比較では,退院時BI総得点,退院時BI各項目【トイレ・移乗・階段・歩行】,退院時FIM各項目【上衣更衣・下衣更衣.清潔・排泄・排尿管理・移乗(トイレ)・移乗(ベッド),・移動・運動項目・FIM認知項目】,同居者の有無,退院時移動能力において統計学的有意差を認めた.
【考察】
自宅退院群と非自宅退院群の比較では,BI,FIM共に「移動・移乗に関連する内容」,「排泄・更衣・清潔に係わる内容」に有意な差を認めた.また,環境的な側面は「同居者の有無」に有意な差を認めた.
脊髄損傷者において移動能力は重要な要素であり,自宅内において自身で移動・移乗できれば介助負担が軽減されるため,自宅復帰につながった可能性があると考える.
排泄・更衣・清潔は特に介護者が介護負担を感じやすい部分であることから自宅退院との関連が認められた可能性がある.一方で夜間定時での導尿や日中の頻回な導尿などに対しては夜間間歇バルーン留置や膀胱瘻の造設などが知られているが,本研究では調査の対象としていなかった.そのため,これらの対処方法が自宅退院に繋がる因子となりえるのかについても追加の検証を行う必要があると考える. 環境的要因として本研究では同居者の有無も関係していた.古川ら(2018)は「ADLレベルが高い方が在宅復帰しやすいがマンパワー(同居人数)の方がより自宅復帰に大きく関わっていることも明らかになった」と述べている.しかし,同居家族の果たしている役割や負担感に関しては調査が不足しているため,今後の課題である.