第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

心大血管疾患/神経難病

[OB-1] 一般演題:心大血管疾患 1/神経難病 2

2023年11月11日(土) 14:50 〜 16:00 第5会場 (会議場B2)

[OB-1-2] 心臓血管外科術前患者における重症度ランクの調査

小林 勇基, 増田 智也, 桑島 壱成, 菅原 信太郎, 三本木 光 (イムス葛飾ハートセンターリハビリテーション科)

【序論】我々は作業機能障害の種類と評価(以下,CAOD)を用いて心臓血管外科術前患者の作業機能障害を報告した.その中で心不全症状の有無と抑うつ症状は作業機能障害に影響を与える可能性が示唆されている.一方,CAOD52点未満の対象においては重症度ランクを調査するとランク2およびランク3の患者が一定数存在していた.
【目的】本研究では重症度ランク1の患者とランク2以上の患者を比較検討し,心不全症状や抑うつの有無が重症度ランクと関連しているのか調査する.
【方法】対象は2020年8月から11月までの間に当院心臓血管外科に入院した手術待機例108例のうち,除外基準に該当した47例を除く61例を対象とした.除外基準は既往歴に脳血管疾患,神経筋疾患,整形外科疾患のある患者,会話での指示理解や意志の表出が困難な患者,手術待機のための入院日数が2日以上の患者,欠損データのある患者とした.全例に作業療法士(以下,OT)がCAODを実施し,調査した内容をExametrika ver5.3を用いて潜在ランク理論で重症度を5段階に分類した.重症度ランク1の患者群をコントロール群,重症度ランク2以上の患者群を対象群とした.調査内容は,主疾患(冠動脈疾患,弁膜症,大動脈疾患,末梢動脈疾患),New York Heart Association分類(以下,NYHA),Body Mass Index(以下,BMI),Left Ventricular Ejection Fraction(以下,LVEF),Barthel Index(以下,BI),Mini Cognitive Assessment Instrument(以下,Mini-Cog),Patient Health Questionnaire(以下,PHQ-2)とし,診療録から後方的にデータ収集を行った.すべての統計解析にはEZR(ver1.54)を使用した.対象群とコントロール群の患者属性のうち,年齢,BMI,LVEF,BI,Mini-Cog,PHQ-2の比較はMann-Whitney U検定を行い,性別,主疾患,NYHAはFisherの正確検定を行った.統計学的有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮】本研究はイムス葛飾ハートセンターの倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号20220820-2).
【結果】対象群の年齢は73.3±10.2歳であり,男性22例,女性14例であった.コントロール群の年齢は73.5±9.3歳であり,男性17例,女性8例であった.対象群とコントロール群の間で,年齢,性別,BMI,LVEF,BI,Mini-Cog,疾患,NYHAに有意差は確認されなかった.PHQ-2で有意差を認めた(P<0.05).
【考察】本研究では心臓血管外科術前患者における作業機能障害の重症度ランクに関して調査した.心臓血管外科術前患者において重症度ランク2以上の患者はPHQ-2の点数が有意に高かった.先行研究では心不全症状の有無が作業機能障害に影響を与えていたが,本研究では心不全症状の有無は関連していなかった.作業機能障害は抑うつと関連していることが報告されており(Teraoka,2015),本研究においても抑うつとの関連性を認め,先行研究を指示した.心臓血管外科術前患者において,無症候性心不全は健常者と同様の生活を送っている可能性があり,心不全症状の有無では差がみられなかったと考えられる.循環器領域のOT介入では心不全症状が生活行為を困難にしている場面が多く,心不全症状に起因する生活行為の障害にフォーカスを当てることが多い.しかし本研究結果より,循環器領域においても生活行為の視点から患者を評価していく重要性が示唆された.