[OB-1-4] 筋萎縮性側索硬化症の同意した目標を達成するための外来作業療法の関わり
【序論】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は,薬物療法とともにリハビリテーションの重要性が報告されており,重症度に応じた補装具や福祉用具の重要性も報告されている.今回,ALSの診断を受けた症例にBFO(以下Balanced Forearm Orthosis)の選定や導入支援を行ったので経過を報告する.
【目的】ALSの診断を受け,上肢優位の麻痺を呈したA氏を担当した.合意した目標に介入し,その結果,BFOの導入を行ったことで,食事を中心に満足度向上やQuality Of Life(以下QOL)の向上を図れた. なお,本報告は,当法人の倫理規定に従ってご本人,ご家族の了承は得ており,当院倫理委員会の審査を受けている.
【方法】事例A氏70代女性.聞き手は右.X年Y月に左手の拇指・示指が固まったようになり,Y+6ヶ月頃左上肢から右上肢に進行する両上肢の麻痺の出現あり.数か所の病院を経て,Y+9か月ALSの診断を受ける.Y+17ヶ月に当院外来を受診し,作業療法が開始となる.独歩可能.左上肢は弛緩性麻痺,右上肢は肘関節より末梢の動きは比較的安定しているが,肩の随意性の低下が著明である.「右手での食事が行いにくくなっている」「外食に行きたいが,お父さんに手伝ってもらわないといけないので,申し訳なくて行けない」との発言があり,活動性の低下がある.Manual Muscle Test右上肢2~3,左上肢2~1,両下肢4~5.認知機能低下なし.感覚は表在感覚,深部感覚の低下なし.ALS Functional Rating Scale(以下ALSFRS-R)42点/48点.減点項目として,書字3点,摂食動作1点,着衣,身の回りの動作1点,階段を昇る2点.厚生労働省のALS重症度Stage2度.合意目標「自身で食事を食べる」「実行度」3/10,「満足度」2/10.
【結果】A氏と目標達成のために,本人や家族,他職種と上肢のBFOの必要性が検討された.最初は見た目などを気にされて,使用に抵抗があったものの,A氏や家族と関係性を築いていき,必要性の説明やデモ機の使用を行っていく中で,BFOを導入することとなった.「自身で食事を食べる」という目標の実行度3/10→9/10,満足度2/10→8/10の改善が認められた.また,ALSFRS-Rの摂食動作について,1点→2点への向上が認められた.自身で食事が出来ないことで敬遠していた外食も,BFOを持って行くことや個室で行うなど環境設定を行うことで,外出の頻度の向上した.その後訪問看護や訪問リハビリと連携していくことで,整容動作の向上にも繋がり,自身で行う動作の拡大に繋げることが出来た.
【考察】ALSは進行性の疾患であり,渋谷らは,「ALS患者に対する作業療法では,身体機能や日常生活のみならず,精神面や社会面に対しても思慮を巡らせ,医学的知識や福祉用具に関する知識を基に残存機能を活かす工夫や改善が期待される.また,それは進行による患者の変化を見越した対応でなければならない.特にALS患者にとって潜在的な上肢機能を生活場面で発揮できるようになることは,福祉用具・機器の活用・導入による補完的対応,ひいてはQOLといった活動に連動する重要な視点である.」と述べている.今回のBFOの利用は,自宅での食事の検討を行い,導入した.外食など外出への発展や自身で整容動作を行うなどA氏やご家族,居宅介護サービスと使用方法の検討を行う中で,可能性が大きく広がっており,今後も一つの動作から派生する可能性についてもっと経験を積んでいき,視野を広げていく必要性を感じた.今回の経験で,各地方自治体が行っている助成制度などの法制度の理解を深める必要があり,必要と利用者やその家族,多職種で検討を行い,決定後に実際に利用者に届くまでには,時間を要することや高額であるので,事前の予後予測やデモ機の活用など導入決定後の準備も並行して行っていくことの重要性を感じた.
【目的】ALSの診断を受け,上肢優位の麻痺を呈したA氏を担当した.合意した目標に介入し,その結果,BFOの導入を行ったことで,食事を中心に満足度向上やQuality Of Life(以下QOL)の向上を図れた. なお,本報告は,当法人の倫理規定に従ってご本人,ご家族の了承は得ており,当院倫理委員会の審査を受けている.
【方法】事例A氏70代女性.聞き手は右.X年Y月に左手の拇指・示指が固まったようになり,Y+6ヶ月頃左上肢から右上肢に進行する両上肢の麻痺の出現あり.数か所の病院を経て,Y+9か月ALSの診断を受ける.Y+17ヶ月に当院外来を受診し,作業療法が開始となる.独歩可能.左上肢は弛緩性麻痺,右上肢は肘関節より末梢の動きは比較的安定しているが,肩の随意性の低下が著明である.「右手での食事が行いにくくなっている」「外食に行きたいが,お父さんに手伝ってもらわないといけないので,申し訳なくて行けない」との発言があり,活動性の低下がある.Manual Muscle Test右上肢2~3,左上肢2~1,両下肢4~5.認知機能低下なし.感覚は表在感覚,深部感覚の低下なし.ALS Functional Rating Scale(以下ALSFRS-R)42点/48点.減点項目として,書字3点,摂食動作1点,着衣,身の回りの動作1点,階段を昇る2点.厚生労働省のALS重症度Stage2度.合意目標「自身で食事を食べる」「実行度」3/10,「満足度」2/10.
【結果】A氏と目標達成のために,本人や家族,他職種と上肢のBFOの必要性が検討された.最初は見た目などを気にされて,使用に抵抗があったものの,A氏や家族と関係性を築いていき,必要性の説明やデモ機の使用を行っていく中で,BFOを導入することとなった.「自身で食事を食べる」という目標の実行度3/10→9/10,満足度2/10→8/10の改善が認められた.また,ALSFRS-Rの摂食動作について,1点→2点への向上が認められた.自身で食事が出来ないことで敬遠していた外食も,BFOを持って行くことや個室で行うなど環境設定を行うことで,外出の頻度の向上した.その後訪問看護や訪問リハビリと連携していくことで,整容動作の向上にも繋がり,自身で行う動作の拡大に繋げることが出来た.
【考察】ALSは進行性の疾患であり,渋谷らは,「ALS患者に対する作業療法では,身体機能や日常生活のみならず,精神面や社会面に対しても思慮を巡らせ,医学的知識や福祉用具に関する知識を基に残存機能を活かす工夫や改善が期待される.また,それは進行による患者の変化を見越した対応でなければならない.特にALS患者にとって潜在的な上肢機能を生活場面で発揮できるようになることは,福祉用具・機器の活用・導入による補完的対応,ひいてはQOLといった活動に連動する重要な視点である.」と述べている.今回のBFOの利用は,自宅での食事の検討を行い,導入した.外食など外出への発展や自身で整容動作を行うなどA氏やご家族,居宅介護サービスと使用方法の検討を行う中で,可能性が大きく広がっており,今後も一つの動作から派生する可能性についてもっと経験を積んでいき,視野を広げていく必要性を感じた.今回の経験で,各地方自治体が行っている助成制度などの法制度の理解を深める必要があり,必要と利用者やその家族,多職種で検討を行い,決定後に実際に利用者に届くまでには,時間を要することや高額であるので,事前の予後予測やデモ機の活用など導入決定後の準備も並行して行っていくことの重要性を感じた.