第57回日本作業療法学会

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一般演題

呼吸器疾患

[OC-1] 一般演題:呼吸器疾患 1

Fri. Nov 10, 2023 1:20 PM - 2:20 PM 第7会場 (会議場B3-4)

[OC-1-1] 肺移植後の作業療法にウェアラブルデバイスを用いてセルフマネジメントを図った一症例

百武 光一1, 井上 雅史1, 西村 繁典1, 長城 晃一2, 鎌田 聡1 (1.福岡大学病院リハビリテーション部, 2.福岡大学医学部 脳神経内科)

【はじめに】肺移植後の作業療法(OT)の報告数は少なく,ガイドラインは示されていない.今回,肺移植後のOT介入のなかでウェアラブルデバイスを用いて活動量を可視化し,主体的なリハビリテーションを図れるように支援した結果,退院後,活動量の維持・向上を図れた症例を報告する.なお,症例報告に際しては対象者に説明し書面上での同意を得た.
【症例紹介】50代,女性,診断名:膠原病性間質性肺炎,現病歴:X-16に皮膚筋炎,間質性肺炎を発症,X-1に左気胸で入退院を繰り返し,X年Y月にドナー適合あり脳死片肺移植術(左肺)を施行した.術翌日よりPT開始,術後8日目にOTが追加された.初期評価では,安静時SpO2:95%(酸素1ℓネーザル投与下),NRADL:51点,活動評価では労作時にSpO2の低下を認めず,修正ボルグスケール0-2程度であったが,術前の記憶が残存し,心理的不安を抱かれ呼吸リズムの乱れを認めていた.
【方法】活動量を可視化するため腕時計型の3軸加速度計(alta HR; fitbit)を活用しウェアラブルデバイスとして装着してもらった.デバイスは入浴と就寝以外は常に装着した状態で生活を送って頂き,日々の活動量のセルフモリタリングすることを定着させた.また,定期的な評価には3軸加速度計(アクティブスタイルPro HjA-750C;オムロンヘルスケア)を装着日記と共に使用した.活動量計は1日10時間以上少なくとも3日間装着された場合,その数値を有効とした.評価は術後2w,4w(病院での入院生活期間),術後8w(近隣の住居での独居生活期間)に実施し,評価項目にはNRADL,FAI(Frenchay Activities Index),LSA(Life Space Assessment),STAI(State-Trait Anxiety Inventiry),GSES (General Self-Efficacy Scale)を使用した.
【経過】第一期(病院生活での活動量を把握する時期)OTプログラムはROM練習,筋力増強練習,全身持久力練習,ADL/IADL練習を実施した.PTのトレーニング負荷量に合わせてOTの練習内容を徐々に拡大した.自宅生活を想定した模擬練習の中では,家屋状況の情報共有を図り,SpO2の数値と呼吸リズムや疲労感を照らし合わせながら休息のタイミング,時間など随時フィードバックを行った.また,週末には平日のデバイスの数値を参考に主体的に自主練習を実施して頂いた.
第二期(近隣住居での独居生活時期)退院後,病院近隣のアパート(3階の部屋,階段のみ)へ移られた.入院中使用していたウェアラブルデバイスは継続して装着してもらい入院中の活動量を参考にして独居生活を送ってもらった.さらにテレリハビリテーションで2週間に1回の頻度でフォローし,感染予防状況,活動内容・範囲など生活状況を確認した.家事は徐々に自立し,ウォーキングを生活に取り入れら活動範囲は拡大していった.
【結果】ウェアラブルデバイスを使用し,主体的に活動管理を行えるように支援した結果(術後2w,術後4w,術後8w),身体加速度計(オムロンヘルスケア)の1日合計平均:歩数(5594,7582,10458),NRADL:(51,94,100),FAI:(9,12,18),LSA:(8,16,100)と活動量,ADL/IADL,活動範囲に改善が認められた.また,STAI状態不安/特性不安:(24/28,23/21,24/25)では状態・特性不安共に術後4wで軽度不安は軽減したが,独居生活時は軽度不安が高まった.GSES:(11,12,12)では高い傾向から非常に高い傾向に改善が認められた.
【結語】今回,肺移植後のOTにてウェアラブルデバイスを使用し,身体活動を可視化する主体的なリハビリテーションの実践が活動量維持につながったと考える.