[OC-1-3] 回復期リハビリテーション病棟における呼吸器疾患患者に対して作業療法が参入する有効性の検討
【はじめに】呼吸リハビリテーション(Pulmonary Rehabilitation: PR)における作業療法(OT)のScoping Reviewでは,PRにOTが参入することで,ADL,肺機能,呼吸困難,QOLおよび死亡率に改善があったと報告されているが,OTの役割は明確とはいえない(Finch, et al, 2022).当院回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)は,2021年3月より呼吸器疾患患者の受け入れを開始した.当院呼吸器疾患患者は,理学療法(PT)とOTが全症例に処方され,筋力や運動耐容能,ADL・IADL,住環境調整等に介入する.一方,回復期のPRにOTが参入することの有効性は明らかとはいえない.本報告の目的は,回復期の呼吸器疾患患者に対するPRにOTが参入する有効性や意義を検討するこことした.
【方法】本調査は,2021年3月~2023年2月までで,当院回復期を退院した全呼吸器疾患患者を後方視的に調査した.当院の呼吸器疾患患者の算定は廃用症候群リハビリテーション料Ⅰであり,主病名が呼吸器疾患である者を対象とした.調査項目は,診断名,基本的属性(年齢,性別,入院前後の在宅酸素療法(HOT)の有無,等),入院日数,Functional Independence Measure(FIM),実績指数等があった.OTが通常診療で得られたデータは,ADL評価であるThe Nagasaki University Respiratory ADL Questionnaire(NRADL),認知機能評価としてMini-Mental Examination(MMSE),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J),Trail Making Test日本版(TMT-J),不安・抑うつ評価として,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS),QOL評価であるCOPD Assessment test(CAT)等であった.除外基準は,急変等による転院,データ欠損がある者とした.診断名,基本的属性,入院日数,FIMと実績指数の集計を行い,OTで得られたデータは,入院時と退院時で比較検討した.統計解析はIBM SPSS Statistics22を用い,OTの初期・最終評価に対し,それぞれの変数ごとに統計処理を行い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会にて承認を得て実施した.
【結果】全呼吸器疾患患者32名から,除外者を除いた21名が対象となった.診断名は,慢性閉塞性肺疾患3名,間質性肺炎7名,慢性過敏性肺炎1名,非結核性抗酸菌症1名,Post COVID-19が9名であった.年齢は74.2±9.1歳,性別は男性17名,女性4名,入院前後のHOTの有無は6名から4名が追加となり10名となった.回復期入院日数は,64.2±34.0日で,FIMは入院時78.0±21.2点,退院時120.6±7.2点で,実績指数は88.0±104.5であった.評価データからは全ての項目で改善を認め,NRADL(p=.000),MMSE(p=.005)TMT-J A/B(p=.009/.15),MoCA-J(p=.002),HADS(p=.002),CAT(p=.003)と,TMT-J B以外のすべてで有意差を認めた.
【考察】本報告から回復期での介入は,ADLや認知機能,QOL等にも影響する可能性が示唆された.OTは,PTとともに運動耐容能向上への介入に加え,日々のトイレ・更衣・入浴等の評価を看護師とともに行い,病棟でのADL拡大時期を検討した.さらにOTで作業分析を行いながら介入することで,FIMで評価できる「している」ADLの改善だけでなく,動作ごとの呼吸困難も評価できるNRADL改善にも影響する可能性が考えられた.今回,回復期を経て4例がHOTを導入していた.酸素濃縮器や携帯用酸素供給器の使用方法の学習は,患者のアドヒアランスにも関わるため,OTでは認知機能や患者特性を評価していくことも重要と考えられた.またTMT-JのBに有意差が出ていない要因としては,個々の患者目標にはよるもののIADL等の転換性や配分性を要すような作業への介入が十分に行えていない可能性が考えられた.
【方法】本調査は,2021年3月~2023年2月までで,当院回復期を退院した全呼吸器疾患患者を後方視的に調査した.当院の呼吸器疾患患者の算定は廃用症候群リハビリテーション料Ⅰであり,主病名が呼吸器疾患である者を対象とした.調査項目は,診断名,基本的属性(年齢,性別,入院前後の在宅酸素療法(HOT)の有無,等),入院日数,Functional Independence Measure(FIM),実績指数等があった.OTが通常診療で得られたデータは,ADL評価であるThe Nagasaki University Respiratory ADL Questionnaire(NRADL),認知機能評価としてMini-Mental Examination(MMSE),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J),Trail Making Test日本版(TMT-J),不安・抑うつ評価として,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS),QOL評価であるCOPD Assessment test(CAT)等であった.除外基準は,急変等による転院,データ欠損がある者とした.診断名,基本的属性,入院日数,FIMと実績指数の集計を行い,OTで得られたデータは,入院時と退院時で比較検討した.統計解析はIBM SPSS Statistics22を用い,OTの初期・最終評価に対し,それぞれの変数ごとに統計処理を行い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会にて承認を得て実施した.
【結果】全呼吸器疾患患者32名から,除外者を除いた21名が対象となった.診断名は,慢性閉塞性肺疾患3名,間質性肺炎7名,慢性過敏性肺炎1名,非結核性抗酸菌症1名,Post COVID-19が9名であった.年齢は74.2±9.1歳,性別は男性17名,女性4名,入院前後のHOTの有無は6名から4名が追加となり10名となった.回復期入院日数は,64.2±34.0日で,FIMは入院時78.0±21.2点,退院時120.6±7.2点で,実績指数は88.0±104.5であった.評価データからは全ての項目で改善を認め,NRADL(p=.000),MMSE(p=.005)TMT-J A/B(p=.009/.15),MoCA-J(p=.002),HADS(p=.002),CAT(p=.003)と,TMT-J B以外のすべてで有意差を認めた.
【考察】本報告から回復期での介入は,ADLや認知機能,QOL等にも影響する可能性が示唆された.OTは,PTとともに運動耐容能向上への介入に加え,日々のトイレ・更衣・入浴等の評価を看護師とともに行い,病棟でのADL拡大時期を検討した.さらにOTで作業分析を行いながら介入することで,FIMで評価できる「している」ADLの改善だけでなく,動作ごとの呼吸困難も評価できるNRADL改善にも影響する可能性が考えられた.今回,回復期を経て4例がHOTを導入していた.酸素濃縮器や携帯用酸素供給器の使用方法の学習は,患者のアドヒアランスにも関わるため,OTでは認知機能や患者特性を評価していくことも重要と考えられた.またTMT-JのBに有意差が出ていない要因としては,個々の患者目標にはよるもののIADL等の転換性や配分性を要すような作業への介入が十分に行えていない可能性が考えられた.