[OD-1-5] 年代別にみた橈骨遠位端骨折術後における機能的推移の違い
【緒言】橈骨遠位端骨折(DRF)においてはVolar Locking Plate(VLP)を使用した骨接合術が一般的になっており,その強固な固定性から術後セラピィの早期化が可能となった.各機能は術後12週までに急速に改善し,以後1年程度まで緩徐に改善する(Stinton SB 2017)との報告もあり,VLP後に対するハンドセラピィは早期からの細やかな対応が求められる.一方で,DRFの受傷年齢は比較的中高年に多いと言われているが幅広く,臨床では骨の癒合状況やセラピィの進行度に加え,就労の有無や家庭環境など,高齢者と若年者でそれぞれに応じた対応を求められる.本研究の目的は,DRF術後の機能的推移を,65歳以上の高齢者群および未満の若年者群に分けて調査することである.
【対象】2014年5月から2022年12月までの間に当院にてVLPを施行され,術後3か月までの経時的調査が可能であり,機能的推移に影響を与える危険のある既往等を除外した80例80手とした.このうち,65歳以上40例(平均年齢71.80±5.39歳,男性4例女性36例,利き手受傷19例)を高齢者群(以下S群),65歳未満40例(平均年齢50.65±12.07 歳,男性17例女性23例,利き手受傷21例)を若年者群(以下Y群)とした.後療法は両群とも術後1日目より手指および肩肘の患部外運動を開始し,およそ1週間の外固定ののち手関節可動域訓練を開始した.ADLおよび軽作業での患側手の使用は疼痛範囲内とし,筋力訓練および荷重,重作業は骨の癒合に併せ医師の指示のもと行なった.
【方法】評価時期は術後1,2,3か月とし,評価項目は可動域(掌背屈,回内外角度),筋力(握力,Key pinch力),主観的上肢機能(Hand20),健康関連QOL(SF-8)とした.筋力は健患比で補正,Hand20は100点換算のトータルスコア,SF-8は身体的健康度(PCS),精神的健康度(MCS)のサマリースコアを算出した.統計解析にはR4.0.2(CRAN,freeware)を使用し,分割プロット分散分析および多重比較法(Shafferの修正によるt検定)にて各項目における時期と群間の比較を行った.有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】本研究における対象者には書面にて説明し同意を得た.また,筆頭演者所属施設倫理委員会の承認を得て行われた(承認番号202212-18).
【結果】各評価時期における反復測定において,掌屈(p<0.001),背屈(p<0.001),回内(p<0.001),回外(p<0.001),握力(p<0.001),Key pinch力(p<0.001),Hand20(p<0.001),SF-8のPCS(p<0.001),MCS(p<0.001)と,全ての項目が経時的に有意に改善した.術後3か月の背屈角度は交互作用を認めS群が有意に低く(p<0.001),MCSは交互作用認めず全期間でS群が有意に低い(p=0.03)結果となった.
【考察】本研究にて上肢機能および健康関連QOLは術後3か月以内で改善しており,諸家の報告を支持する結果となった.その中で背屈可動域に関しては術後3か月にてS群が有意に低く,Y群と比較し改善の停滞が早い可能性が示唆された.DRFでは特に橈骨手根関節への運動に影響することが知られており,隔壁状の瘢痕形成を引き起こすとの報告が散見される.背屈における橈骨手根関節と手根中央関節の運動割合は66.5%対33.5%(Sarrafian SB 1977)との報告があることから,背屈可動域は橈骨手根関節の運動に拠ることが大きく,高齢者ではその影響を著明に受けた可能性がある.MCSは全期間を通じて有意にS群が低かったものの,術前状況が不明でありDRFとの関連があるとは言えず,本研究の限界といえる.
【結論】DRF術後において術後3か月までに上肢機能および健康関連QOLは著明に改善するが,高齢者では若年者と比較し背屈可動域の改善が早期に停滞する可能性が示唆された.
【対象】2014年5月から2022年12月までの間に当院にてVLPを施行され,術後3か月までの経時的調査が可能であり,機能的推移に影響を与える危険のある既往等を除外した80例80手とした.このうち,65歳以上40例(平均年齢71.80±5.39歳,男性4例女性36例,利き手受傷19例)を高齢者群(以下S群),65歳未満40例(平均年齢50.65±12.07 歳,男性17例女性23例,利き手受傷21例)を若年者群(以下Y群)とした.後療法は両群とも術後1日目より手指および肩肘の患部外運動を開始し,およそ1週間の外固定ののち手関節可動域訓練を開始した.ADLおよび軽作業での患側手の使用は疼痛範囲内とし,筋力訓練および荷重,重作業は骨の癒合に併せ医師の指示のもと行なった.
【方法】評価時期は術後1,2,3か月とし,評価項目は可動域(掌背屈,回内外角度),筋力(握力,Key pinch力),主観的上肢機能(Hand20),健康関連QOL(SF-8)とした.筋力は健患比で補正,Hand20は100点換算のトータルスコア,SF-8は身体的健康度(PCS),精神的健康度(MCS)のサマリースコアを算出した.統計解析にはR4.0.2(CRAN,freeware)を使用し,分割プロット分散分析および多重比較法(Shafferの修正によるt検定)にて各項目における時期と群間の比較を行った.有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】本研究における対象者には書面にて説明し同意を得た.また,筆頭演者所属施設倫理委員会の承認を得て行われた(承認番号202212-18).
【結果】各評価時期における反復測定において,掌屈(p<0.001),背屈(p<0.001),回内(p<0.001),回外(p<0.001),握力(p<0.001),Key pinch力(p<0.001),Hand20(p<0.001),SF-8のPCS(p<0.001),MCS(p<0.001)と,全ての項目が経時的に有意に改善した.術後3か月の背屈角度は交互作用を認めS群が有意に低く(p<0.001),MCSは交互作用認めず全期間でS群が有意に低い(p=0.03)結果となった.
【考察】本研究にて上肢機能および健康関連QOLは術後3か月以内で改善しており,諸家の報告を支持する結果となった.その中で背屈可動域に関しては術後3か月にてS群が有意に低く,Y群と比較し改善の停滞が早い可能性が示唆された.DRFでは特に橈骨手根関節への運動に影響することが知られており,隔壁状の瘢痕形成を引き起こすとの報告が散見される.背屈における橈骨手根関節と手根中央関節の運動割合は66.5%対33.5%(Sarrafian SB 1977)との報告があることから,背屈可動域は橈骨手根関節の運動に拠ることが大きく,高齢者ではその影響を著明に受けた可能性がある.MCSは全期間を通じて有意にS群が低かったものの,術前状況が不明でありDRFとの関連があるとは言えず,本研究の限界といえる.
【結論】DRF術後において術後3か月までに上肢機能および健康関連QOLは著明に改善するが,高齢者では若年者と比較し背屈可動域の改善が早期に停滞する可能性が示唆された.