[OD-2-1] 頚椎症性脊髄症患者の手指機能がADL に及ぼす影響
【はじめに】
頚椎症性脊髄症(Cervical spondylotic myelopathy;以下,CSM)はその多くが手指の痺れや筋力低下から発症し,進行すると手指の巧緻障害を来すようになる.CSMはこのような臨床像を呈するにも関わらず,手指機能とADL(Activity of daily life)との関連性ついて検討した報告は見られない.
【目的】
本研究の目的は,手指機能に関連するADLの中でも箸操作やボタン着脱操作に着目し,CSM患者の手指機能との関連性を検討することと,ADLの自立の可否を判断するカットオフ値を検証することである.
【方法】
対象は2014年12月〜2022年3月の期間,CSMと診断された110例中,評価可能であった61例(男性47例,女性14例,平均年齢±標準偏差;73.51±9.77歳)とした.手指機能は,10秒テスト,握力,および手指の痺れの有無によって評価した.また,ADLは箸操作とボタン着脱の自立度によって評価した.箸操作の自立の定義として,JOAスコアの上肢機能の評価から箸操作が「正常」と評価されたものを自立,それ以外のものを非自立とした.ボタン着脱の自立の定義としては,JOACMEQスコアの,前ボタンを両手を使ってかけることができるかの問いに対し,「不自由なくできる」と回答したものを自立,それ以外のものを非自立とした.統計的解析は,箸操作およびボタン着脱のADLの自立群と非自立群をMann-Whitneyを用い群間比較した.多重ロジスティック回帰分析は,従属変数を箸操作とボタン着脱の自立度,独立変数を群間比較で有意差のあった項目とし,調整因子は,年齢と性別とした.有意水準は5%とした.
また,関連の検出された手指機能に関して,箸操作とボタン着脱の自立の可否を判断するカットオフ値を検討するため,ROC曲線から曲線下面積(以下,AUC)と感度・特異度を算出し,自立を判断する最も適したカットオフ値を求めた.
本研究に関して,倫理委員会の承認を得て,対象者には研究内容を説明し十分な理解を得て行った.
【結果】
Mann-Whitneyの結果,箸操作では年齢,10秒テスト,握力で有意差を認めた(p<0.05).ボタン着脱においても同様に年齢,10秒テスト,握力で有意差を認めた(p<0.05).
多重ロジスティック回帰分析の結果,箸操作はp<0.05で有意であり,箸操作に関連する因子は握力であった.Hosmer-Lemeshowの検定はp=0.53であり,odds比は1.07(95%信頼区間;1.002-1.16)であった.ROC解析の結果,AUCは0.748であり,カットオフ値は19.1kg(感度80.0%,特異度69.8%)であった.ボタン着脱に関して,有意差は認めなかった.
【考察】
本研究の結果,箸操作のADLには握力が関連していた.箸操作では箸を開く際,環・小指が曲げ操作を必要とし,閉じる際は示・中指が曲げ操作を必要とする.手指の曲げ操作に関しては握力を計測する際の把握操作に類似しており,そのため箸操作に握力が関連したと考える.また,箸操作のカットオフ値は,19.1kgであった.CSM患者に対して握力を計測することは,リハビリ介入における自立度の判定や目標設定の上で重要である事が示唆された.
頚椎症性脊髄症(Cervical spondylotic myelopathy;以下,CSM)はその多くが手指の痺れや筋力低下から発症し,進行すると手指の巧緻障害を来すようになる.CSMはこのような臨床像を呈するにも関わらず,手指機能とADL(Activity of daily life)との関連性ついて検討した報告は見られない.
【目的】
本研究の目的は,手指機能に関連するADLの中でも箸操作やボタン着脱操作に着目し,CSM患者の手指機能との関連性を検討することと,ADLの自立の可否を判断するカットオフ値を検証することである.
【方法】
対象は2014年12月〜2022年3月の期間,CSMと診断された110例中,評価可能であった61例(男性47例,女性14例,平均年齢±標準偏差;73.51±9.77歳)とした.手指機能は,10秒テスト,握力,および手指の痺れの有無によって評価した.また,ADLは箸操作とボタン着脱の自立度によって評価した.箸操作の自立の定義として,JOAスコアの上肢機能の評価から箸操作が「正常」と評価されたものを自立,それ以外のものを非自立とした.ボタン着脱の自立の定義としては,JOACMEQスコアの,前ボタンを両手を使ってかけることができるかの問いに対し,「不自由なくできる」と回答したものを自立,それ以外のものを非自立とした.統計的解析は,箸操作およびボタン着脱のADLの自立群と非自立群をMann-Whitneyを用い群間比較した.多重ロジスティック回帰分析は,従属変数を箸操作とボタン着脱の自立度,独立変数を群間比較で有意差のあった項目とし,調整因子は,年齢と性別とした.有意水準は5%とした.
また,関連の検出された手指機能に関して,箸操作とボタン着脱の自立の可否を判断するカットオフ値を検討するため,ROC曲線から曲線下面積(以下,AUC)と感度・特異度を算出し,自立を判断する最も適したカットオフ値を求めた.
本研究に関して,倫理委員会の承認を得て,対象者には研究内容を説明し十分な理解を得て行った.
【結果】
Mann-Whitneyの結果,箸操作では年齢,10秒テスト,握力で有意差を認めた(p<0.05).ボタン着脱においても同様に年齢,10秒テスト,握力で有意差を認めた(p<0.05).
多重ロジスティック回帰分析の結果,箸操作はp<0.05で有意であり,箸操作に関連する因子は握力であった.Hosmer-Lemeshowの検定はp=0.53であり,odds比は1.07(95%信頼区間;1.002-1.16)であった.ROC解析の結果,AUCは0.748であり,カットオフ値は19.1kg(感度80.0%,特異度69.8%)であった.ボタン着脱に関して,有意差は認めなかった.
【考察】
本研究の結果,箸操作のADLには握力が関連していた.箸操作では箸を開く際,環・小指が曲げ操作を必要とし,閉じる際は示・中指が曲げ操作を必要とする.手指の曲げ操作に関しては握力を計測する際の把握操作に類似しており,そのため箸操作に握力が関連したと考える.また,箸操作のカットオフ値は,19.1kgであった.CSM患者に対して握力を計測することは,リハビリ介入における自立度の判定や目標設定の上で重要である事が示唆された.