[OD-2-2] 意味づけした活動によって洗体の実行状況が改善した頸髄損傷患者の一例
【はじめに】作業遂行6因子分析ツール(以下OPAT6)は,対象者が主体的に作業に参加することが望まれる作業の実行状況を,健康状態,心身機能,活動能力,環境,認識,情緒の6つの関連因子の相互作用から分析し,介入におけるKeyとなる因子を検討するツールである.今回,頸髄損傷により左片麻痺を認めた症例に対し,OPAT6を用いて,作業の実行状況の分析を行い,介入方針を検討し実践した結果,入浴動作の実行状況に効果を認めたため報告する.今回の発表に際し,対象者の同意を得ている.
【事例紹介】60歳代,女性.利き手は右手.家族構成は夫,子,孫2人の5人家族.仕事は観光業の営業職.真面目な性格のため積極的に仕事,家事を行っていた.またCOVID-19流行のため,清潔を意識されていた.診断名は頚髄損傷.現病歴はX日,階段から転落しA病院搬送.C3~6後方固定術施行し,X+21日当院回復期リハビリテーション病棟に転院となった.
【作業療法評価】心身機能MMT(R/L)肩関節屈曲4/1,肘屈曲4/1,伸展4/1,手関節掌屈4/1,背屈4/1,手指屈曲4/2,伸展4/2.FIM100点(67,33).認知関連行動アセスメント(CBA)軽度25点(4,4,4,5,4,4).左上肢麻痺により落胆はみられるも自主練習を積極的に取り組んでいた.「自立した生活や家事を再開したい」という要望が聞かれたが,「力が入らないからできない」などの理由から洗体,洗髪は介助に依存していた.
【作業療法方針】上記評価より,主体的な作業の実行状況を「右上肢と一部左側の洗体と右側の洗髪を自分でできない」の状態であると捉えた.これに作用している因子として「認識:左手が動かない.手が動くまで介助を受ける」「情緒:絶望,不安」が抽出され,それらには「心身機能:左上肢麻痺」,「活動能力:入浴動作で右上肢の洗体と左側の洗髪ができない」が作用していると考えた.これらより,今後の心身機能改善と生活拡大の阻害因子となっている「認識」を最も影響の強いKey因子とし,認識が得られるよう環境や活動能力にアプローチすることとした.
【経過・結果】生活歴から家事と仕事へのプライド,自ら取り組まないと気が済まない性格を鑑み,変化を捉えやすいと考えた作業(右手支持のもとテーブル拭きや整髪)を選択.家族とスタッフに左上肢機能の改善や本人の取り組みへの称賛を依頼し,生活動作から不安や絶望感の軽減ができるよう関わった.その結果,更なる自主練習の希望やトイレ下衣操作で左手を使い始める行動が見られた.X+75日MMT肩関節屈曲4/2,肘屈曲4/3,伸展4/3,手関節掌屈4/3,背屈4/3,手指屈曲4/3,伸展4/3,FIM106点(73,35),CBA軽度28点(5,5,5,5,4,4)に変化.撫でる程度の右上肢の洗体と左側洗髪ができるようになり,「少し動くようになった」「まだ力が入らないが,洗えるようになってきた」など改善を認識し,「自分でできることはしたい」という認識に変化した.
【考察】今回,努力家な半面,障害による絶望感から洗体,洗髪で介助へ依存があった事例に対して,「認識」をKey因子とし,自己の変化を気づけるよう環境や活動能力にアプローチした結果,更に生活場面で左手の活用が広がり,洗体と洗髪の実施に繋がった.事例の生活歴や性格などの個人因子を理解した上で,OPAT6を用いて,事例の作業の実行状況の変化を導くために有効なアプローチの仮説を立て取り組んだ.結果,事例が意欲的に取り組み,自分はできるという有能性の認識が生じて,実行状況の変化に繫がったと考えられる.
【事例紹介】60歳代,女性.利き手は右手.家族構成は夫,子,孫2人の5人家族.仕事は観光業の営業職.真面目な性格のため積極的に仕事,家事を行っていた.またCOVID-19流行のため,清潔を意識されていた.診断名は頚髄損傷.現病歴はX日,階段から転落しA病院搬送.C3~6後方固定術施行し,X+21日当院回復期リハビリテーション病棟に転院となった.
【作業療法評価】心身機能MMT(R/L)肩関節屈曲4/1,肘屈曲4/1,伸展4/1,手関節掌屈4/1,背屈4/1,手指屈曲4/2,伸展4/2.FIM100点(67,33).認知関連行動アセスメント(CBA)軽度25点(4,4,4,5,4,4).左上肢麻痺により落胆はみられるも自主練習を積極的に取り組んでいた.「自立した生活や家事を再開したい」という要望が聞かれたが,「力が入らないからできない」などの理由から洗体,洗髪は介助に依存していた.
【作業療法方針】上記評価より,主体的な作業の実行状況を「右上肢と一部左側の洗体と右側の洗髪を自分でできない」の状態であると捉えた.これに作用している因子として「認識:左手が動かない.手が動くまで介助を受ける」「情緒:絶望,不安」が抽出され,それらには「心身機能:左上肢麻痺」,「活動能力:入浴動作で右上肢の洗体と左側の洗髪ができない」が作用していると考えた.これらより,今後の心身機能改善と生活拡大の阻害因子となっている「認識」を最も影響の強いKey因子とし,認識が得られるよう環境や活動能力にアプローチすることとした.
【経過・結果】生活歴から家事と仕事へのプライド,自ら取り組まないと気が済まない性格を鑑み,変化を捉えやすいと考えた作業(右手支持のもとテーブル拭きや整髪)を選択.家族とスタッフに左上肢機能の改善や本人の取り組みへの称賛を依頼し,生活動作から不安や絶望感の軽減ができるよう関わった.その結果,更なる自主練習の希望やトイレ下衣操作で左手を使い始める行動が見られた.X+75日MMT肩関節屈曲4/2,肘屈曲4/3,伸展4/3,手関節掌屈4/3,背屈4/3,手指屈曲4/3,伸展4/3,FIM106点(73,35),CBA軽度28点(5,5,5,5,4,4)に変化.撫でる程度の右上肢の洗体と左側洗髪ができるようになり,「少し動くようになった」「まだ力が入らないが,洗えるようになってきた」など改善を認識し,「自分でできることはしたい」という認識に変化した.
【考察】今回,努力家な半面,障害による絶望感から洗体,洗髪で介助へ依存があった事例に対して,「認識」をKey因子とし,自己の変化を気づけるよう環境や活動能力にアプローチした結果,更に生活場面で左手の活用が広がり,洗体と洗髪の実施に繋がった.事例の生活歴や性格などの個人因子を理解した上で,OPAT6を用いて,事例の作業の実行状況の変化を導くために有効なアプローチの仮説を立て取り組んだ.結果,事例が意欲的に取り組み,自分はできるという有能性の認識が生じて,実行状況の変化に繫がったと考えられる.