第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

運動器疾患/援助機器

[OD-3] 一般演題:運動器疾患 3/援助機器 3

2023年11月11日(土) 13:40 〜 14:40 第7会場 (会議場B3-4)

[OD-3-1] 先天性橈尺骨癒合症術後の男児に対して装具療法を用いた外来作業療法の報告

高橋 弘樹, 沖田 隼斗, 伊達 朱里, 山園 大輝, 光永 済 (長崎大学病院リハビリテーション部)

【はじめに】先天性橈尺骨癒合症は近位橈尺骨間が分化障害により前腕中間位から回内位で軟骨性または骨性に癒合する先天異常である.分離授動術のみでは高頻度に再癒合をきたすとされており,近年,有茎脂肪弁移植に尺骨回旋骨切りを加えた授動術が報告されている.
今回,先天性橈尺骨癒合症に対して有茎脂肪弁移植に尺骨回旋骨切りを加えた授動術を施行した男児を担当した.入院での術後作業療法に加え,装具療法を用いた外来作業療法を経験したため報告する.なお,発表に際し症例と母親より口頭と書面にて同意を得ている.
【症例紹介】6歳男児,右利き.3歳頃茶碗をもつようになって両親が異変に気づき当院整形外科を受診し,左橈尺骨癒合症と診断された.5歳頃手術予定だったが新型コロナウイルス感染症予防のため6歳での手術となった.術前ROMは肘屈曲145度,伸展0度,前腕回内40度,回外-10度であった.ADL評価は先天性橈尺骨癒合症のADL評価として使用されている琉大PRUS20(20項目,5段階評価,100点満点)を用いて89点であった.
【術中所見】分離授動術(橈尺骨分離,回外再建,有茎脂肪弁移植,尺骨回旋骨切り,骨移植)を施行し,術中獲得可動域は前腕回内60度,回外60度であった.
【術後プロトコール】術後3週までギプス固定(肘屈曲前腕中間位),術後4週より肘関節,前腕のROMを開始した.上腕二頭筋腱の再縫着により回外再建をしているため-30度以上の肘関節伸展は術後6週より開始した.ADLでの左上肢使用は術後4週より許可し,縄跳びなどの軽負荷運動は術後6週,鉄棒や跳び箱などの荷重を伴う運動は術後12週から許可した.
【経過と結果】入院中の術後作業療法は神経症状の確認や患肢管理の指導,固定部以外の拘縮予防に努めた.術後2週で自宅退院となり,術後4週の外来作業療法からROMが開始となった.外来作業療法では,症例が小児であり逃避反応から痛みを伴うROMが困難であったため,負荷量に注意しながら遊具を用いた運動で左上肢の使用を促し,加えて装具療法とその指導をおこなった.装具療法は自宅で毎日おこなってもらい,1日3回以上,1回15分~30分程度とした.外来作業療法は2週間に1回の頻度でおこない,その都度装具の使用頻度や使用状況を確認した.
ROM開始時である術後4週の可動域は肘屈曲100度,伸展-30度,前腕回内60度,回外30度,握力は9.5kg/7.3kg,琉大PRUS20は71点であった.術後8週の可動域は肘屈曲130度,伸展-30度,前腕回内30度,回外60度,握力は9.6kg/7.7kg,琉大PRUS20は85点であった.回内可動域の低下を認めたため,装具療法を回内優先でおこなうように再指導した.術後12週の可動域は肘屈曲145度,伸展-20度,前腕回内40度,回外60度,握力は10.1kg/7.9kg,琉大PRUS20は89点であった.術後24週の可動域は肘屈曲145度,伸展-20度,前腕回内60度,回外60度,握力は10.5kg/8.4kg,琉大PRUS20は94点であり,「茶碗を持つ」や「洗顔動作」といった項目で「ややぎこちないができる」程度の減点が残存した.
【結論】先天性橈尺骨癒合症に対して有茎脂肪弁移植に尺骨回旋骨切りを加えた授動術を施行した男児を担当し,装具療法を用いた外来作業療法をおこなった.
術前に認めた回外可動域制限は術後に改善を認めたが,外来作業療法介入中に回内可動域の低下を認めた.痛みを伴うROMは困難だったが,症状に合わせて装具療法の再指導をおこなったことで術中可動域と同等の可動域まで改善し,ADLの改善を認めた.