[OD-3-3] 前腕切断後再接着術を受け,実用手として機能獲得に至った症例
【はじめに】切断上肢に対する再接着術後には,将来的な神経再接続を期待したROMをはじめとする手・手指機能の維持が必須である.実臨床では拘縮や廃用を防ぐことは容易ではなく,長期間にわたるリハビリテーションが重要となるが,その具体的な経過や方法を示したものはほとんどない.
今回,上肢再接着術後の急性期より退院後慢性期まで介入を継続.機能訓練や自主練習の指導とともに,状態に合わせ様々なスプリントを用いることで手の機能維持・回復を図り,実用手としての機能を再獲得した症例を経験したので報告する.なお,発表にあたり本人には文書で同意を得た.
【症例紹介】30代,男性.職業はバスの整備士.エンジンルーム内を点検中にベルトに右前腕を巻き込まれ受傷.右前腕中央1/3完全切断,右示指のMP関節完全離断と診断され,同日再接着術が施行された.創部汚染のためデブリードマンが施行され,5cm骨短縮での再接着となった.橈骨・尺骨の内固定術,橈骨・尺骨動脈および橈側皮・伴走静脈縫合術,尺骨・橈骨・正中神経の縫合術,同定できなかった小指伸筋,示指伸筋以外の筋の筋腱移行部での縫合術が実施され,尺骨骨頭骨折,中指・小指中手骨骨折は保存的治療となった.第16病日に示指が血流不良により壊死したため離断され,同時に手関節から前腕部の創外固定術が追加された.第46病日に創外固定の抜去と橈骨のプレート固定術が施行された.
【経過と評価】OTは第8病日より利き手交換を目的に介入し,創外固定術後の安静解除とともに機能回復訓練を追加した.訓練はスプリント療法を中心とし,屈曲拘縮予防のため,着脱可能な手指伸展位保持スプリントを各手指ごとに作製.爪部にRubber Band Traction(以下,RBT)を設置し,牽引により屈曲位保持可能とし,日中は伸展位と屈曲位を1時間毎に交互に実施させた.
第22病日に手指のわずかな自動運動が確認されたため,第30病日より腱滑走や手指の運動イメージが付きやすいように,RBTを利用した自動介助運動,屈曲練習用スプリントによる低負荷の抵抗運動を開始した.創外固定抜去後の前腕保護のため,RBT付の掌側型カックアップスプリントを追加作製.筋力強化に加え,手の使用頻度増加目的でアウトリガーとスパイダースプリントも作製し,場面に応じて使用させた.
第88病日に自宅退院となり,外来OTへ移行した.退院時ROMは手関節他動屈曲10°伸展30°,手指は他動で屈曲伸展ともに制限なし.上肢機能は簡易上肢機能検査(以下,STEF):0/100点.モノフィラメント試験(以下,SWT)では,各手指・手掌のいずれもが測定不能であった.外来は週2回(3単位/回)実施,自宅でもRBTと各種スプリントによる自主練習を半年間継続した.その後はRBTを外し,頻度を週1回に減らし,手指の巧緻動作練習とスプリント療法を継続した.
受傷後1年で上肢機能はSTEF:62/100点,SWT:4.31~5.07(赤)防御知覚脱失まで改善した.
【結果】受傷後2年経過し,自動ROMは手関節屈曲25°伸展30°他動屈曲30°伸展55°,前腕回内45°回外60°他動ROMは制限なしであった.握力:11.7 kg(健側比36%), STEF:92/100点,TAM:母指58%,中指51%,環指40%,小指40%, SWT:手掌面3.61~3.22(青)触覚低下,玉井の評価基準は知覚:S3, ADLスコア:16/20, Chenの評価基準:GradeⅡ, DASHスコア:25,食事や書字は可能であり,生活上は実用的なレベルまで改善した.
【考察】切断肢の再接着後に実用手に至るまでの機能を獲得できた理由の一つとして,機能回復を目的とした様々なスプリントが有効であったと考えられる.介入時に将来の機能を予測することは困難だが,手の機能回復を促進するために,短期的な目標を設け,スプリントを適宜作製し,OT以外の時間に自主練習ができる環境を整えることが重要である.
今回,上肢再接着術後の急性期より退院後慢性期まで介入を継続.機能訓練や自主練習の指導とともに,状態に合わせ様々なスプリントを用いることで手の機能維持・回復を図り,実用手としての機能を再獲得した症例を経験したので報告する.なお,発表にあたり本人には文書で同意を得た.
【症例紹介】30代,男性.職業はバスの整備士.エンジンルーム内を点検中にベルトに右前腕を巻き込まれ受傷.右前腕中央1/3完全切断,右示指のMP関節完全離断と診断され,同日再接着術が施行された.創部汚染のためデブリードマンが施行され,5cm骨短縮での再接着となった.橈骨・尺骨の内固定術,橈骨・尺骨動脈および橈側皮・伴走静脈縫合術,尺骨・橈骨・正中神経の縫合術,同定できなかった小指伸筋,示指伸筋以外の筋の筋腱移行部での縫合術が実施され,尺骨骨頭骨折,中指・小指中手骨骨折は保存的治療となった.第16病日に示指が血流不良により壊死したため離断され,同時に手関節から前腕部の創外固定術が追加された.第46病日に創外固定の抜去と橈骨のプレート固定術が施行された.
【経過と評価】OTは第8病日より利き手交換を目的に介入し,創外固定術後の安静解除とともに機能回復訓練を追加した.訓練はスプリント療法を中心とし,屈曲拘縮予防のため,着脱可能な手指伸展位保持スプリントを各手指ごとに作製.爪部にRubber Band Traction(以下,RBT)を設置し,牽引により屈曲位保持可能とし,日中は伸展位と屈曲位を1時間毎に交互に実施させた.
第22病日に手指のわずかな自動運動が確認されたため,第30病日より腱滑走や手指の運動イメージが付きやすいように,RBTを利用した自動介助運動,屈曲練習用スプリントによる低負荷の抵抗運動を開始した.創外固定抜去後の前腕保護のため,RBT付の掌側型カックアップスプリントを追加作製.筋力強化に加え,手の使用頻度増加目的でアウトリガーとスパイダースプリントも作製し,場面に応じて使用させた.
第88病日に自宅退院となり,外来OTへ移行した.退院時ROMは手関節他動屈曲10°伸展30°,手指は他動で屈曲伸展ともに制限なし.上肢機能は簡易上肢機能検査(以下,STEF):0/100点.モノフィラメント試験(以下,SWT)では,各手指・手掌のいずれもが測定不能であった.外来は週2回(3単位/回)実施,自宅でもRBTと各種スプリントによる自主練習を半年間継続した.その後はRBTを外し,頻度を週1回に減らし,手指の巧緻動作練習とスプリント療法を継続した.
受傷後1年で上肢機能はSTEF:62/100点,SWT:4.31~5.07(赤)防御知覚脱失まで改善した.
【結果】受傷後2年経過し,自動ROMは手関節屈曲25°伸展30°他動屈曲30°伸展55°,前腕回内45°回外60°他動ROMは制限なしであった.握力:11.7 kg(健側比36%), STEF:92/100点,TAM:母指58%,中指51%,環指40%,小指40%, SWT:手掌面3.61~3.22(青)触覚低下,玉井の評価基準は知覚:S3, ADLスコア:16/20, Chenの評価基準:GradeⅡ, DASHスコア:25,食事や書字は可能であり,生活上は実用的なレベルまで改善した.
【考察】切断肢の再接着後に実用手に至るまでの機能を獲得できた理由の一つとして,機能回復を目的とした様々なスプリントが有効であったと考えられる.介入時に将来の機能を予測することは困難だが,手の機能回復を促進するために,短期的な目標を設け,スプリントを適宜作製し,OT以外の時間に自主練習ができる環境を整えることが重要である.