[OD-4-2] 地域在住RA患者の治療満足度に関する調査
【はじめに】
生物学的製剤(b-DMARDs)やjanus kinase阻害薬(ts-DMARDs)の登場や厳密な疾患活動性の評価,それに基づく治療の適正化による治療戦略(T2T)により,関節リウマチ(RA)は寛解が現実的な治療目標となった.寛解・低疾患活動性が達成されても残存する痛みや疲労感,病状進行に対する心理的ストレスは患者の治療満足度や生活の質(QOL)を低下させるとの報告もある.今回,当院外来通院中のRA患者を対象に,現在受けている治療に対する満足度に影響を与える要因を調査・分析したので若干の知見を交えて報告する.
【対象】
対象は当院外来通院中のRA患者のうち,口頭と紙面にて研究の趣旨を説明し,同意を得られた111名(男性16名,女性95名,平均年齢55.5±16.4歳,平均罹病期間14.4±10.7年)である.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,文面と口頭により対象者に同意を得た.なお,本研究については当院倫理委員会の承認を受けている.
【方法】
対象を,世代別に若年期24名(平均年齢33.0歳:21~39歳),壮年期49名(平均年齢52.3歳:40~64歳),前期高齢期22名(平均年齢69.3歳:65~74歳),後期高齢期16名(平均年齢80.1歳:75~88歳)の4群に分類した.評価項目は,疾患活動性としてSDAI, CDAI,身体機能としてHAQとし,治療満足度をNRSと質問票を用いて評価した.評価結果について世代別に統計学的解析を実施した.統計学的解析にはKruskal-Wallis検定を用い,有意水準を5%未満とした.
【結果】
対象の48.6%が寛解,32.4%が低疾患活動性を維持できていた.また,70.2%が機能的寛解を達成できていた.SDAIとCDAI,HAQについても世代間で有意差を認めなかった.治療満足度においても世代間で有意差を認めなかった.一方で,治療満足度を低下させる要因については,全世代を通じて痛みが最も多く,次いで若年期では仕事・社会生活の制限が45.8%,壮年期では関節可動域制限が51.0%,前期高齢者では関節可動域制限が27.3%,後期高齢者では身の回りの生活動作の制限が25.0%をしめるなど各年代間において差がみられた.また,若年期や壮年期の患者からは趣味活動や就業など社会生活に対する自由記載が多かった.
【考察】
本研究では,治療に対する満足度において世代間で有意差を認めなかったが,それらに影響を及ぼす要因については,各世代間にて差異が認められた.若年期や壮年期においては,就業などの社会参加活動や趣味などの余暇活動,結婚生活における家庭での役割に関する要因の影響が強く,それらはRAに対する作業療法のアンメットメディカルニーズであると考えられる.一方で前期・後期高齢者ではADLに対する要因の影響が強く認められた.さらに,若年期や壮年期の患者では,就業や余暇活動などに対する不安の自由記載が多数あり,それらに患者自身が制限をかけている可能性が考えられた.RAに対する作業療法を含むリハビリテーション治療の実践においては,患者のライフステージに応じたADL・IADLばかりでなく,就業活動や余暇活動といった社会参加活動などにも着目し,患者の個別性の高いニーズを見出し,対応していくことが重要であると考えられる.
生物学的製剤(b-DMARDs)やjanus kinase阻害薬(ts-DMARDs)の登場や厳密な疾患活動性の評価,それに基づく治療の適正化による治療戦略(T2T)により,関節リウマチ(RA)は寛解が現実的な治療目標となった.寛解・低疾患活動性が達成されても残存する痛みや疲労感,病状進行に対する心理的ストレスは患者の治療満足度や生活の質(QOL)を低下させるとの報告もある.今回,当院外来通院中のRA患者を対象に,現在受けている治療に対する満足度に影響を与える要因を調査・分析したので若干の知見を交えて報告する.
【対象】
対象は当院外来通院中のRA患者のうち,口頭と紙面にて研究の趣旨を説明し,同意を得られた111名(男性16名,女性95名,平均年齢55.5±16.4歳,平均罹病期間14.4±10.7年)である.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,文面と口頭により対象者に同意を得た.なお,本研究については当院倫理委員会の承認を受けている.
【方法】
対象を,世代別に若年期24名(平均年齢33.0歳:21~39歳),壮年期49名(平均年齢52.3歳:40~64歳),前期高齢期22名(平均年齢69.3歳:65~74歳),後期高齢期16名(平均年齢80.1歳:75~88歳)の4群に分類した.評価項目は,疾患活動性としてSDAI, CDAI,身体機能としてHAQとし,治療満足度をNRSと質問票を用いて評価した.評価結果について世代別に統計学的解析を実施した.統計学的解析にはKruskal-Wallis検定を用い,有意水準を5%未満とした.
【結果】
対象の48.6%が寛解,32.4%が低疾患活動性を維持できていた.また,70.2%が機能的寛解を達成できていた.SDAIとCDAI,HAQについても世代間で有意差を認めなかった.治療満足度においても世代間で有意差を認めなかった.一方で,治療満足度を低下させる要因については,全世代を通じて痛みが最も多く,次いで若年期では仕事・社会生活の制限が45.8%,壮年期では関節可動域制限が51.0%,前期高齢者では関節可動域制限が27.3%,後期高齢者では身の回りの生活動作の制限が25.0%をしめるなど各年代間において差がみられた.また,若年期や壮年期の患者からは趣味活動や就業など社会生活に対する自由記載が多かった.
【考察】
本研究では,治療に対する満足度において世代間で有意差を認めなかったが,それらに影響を及ぼす要因については,各世代間にて差異が認められた.若年期や壮年期においては,就業などの社会参加活動や趣味などの余暇活動,結婚生活における家庭での役割に関する要因の影響が強く,それらはRAに対する作業療法のアンメットメディカルニーズであると考えられる.一方で前期・後期高齢者ではADLに対する要因の影響が強く認められた.さらに,若年期や壮年期の患者では,就業や余暇活動などに対する不安の自由記載が多数あり,それらに患者自身が制限をかけている可能性が考えられた.RAに対する作業療法を含むリハビリテーション治療の実践においては,患者のライフステージに応じたADL・IADLばかりでなく,就業活動や余暇活動といった社会参加活動などにも着目し,患者の個別性の高いニーズを見出し,対応していくことが重要であると考えられる.