[OE-1-3] 入院中のパーキンソン病患者におけるサルコペニア有病率とリハ効果への影響
【目的】パーキンソン病(PD)のサルコペニア有病率は5-55%とされ,一般高齢者よりも有病率が高いとされる(システマティック・レビュー,2021).また,サルコペニアを有する高齢患者では運動療法への満足度やQOLが低くなる可能性も報告されている(Nakagawa,2020).そこで今回,当院に入院しリハを実施したPD患者におけるサルコペニアの有病率とリハ効果への影響について調査した.
【対象】2021年9月から2022年12月に当院に入院したPD患者で,入退院時に骨格筋量および筋力測定を実施した47名を対象とした.内訳は,平均年齢78.2±8.1歳,男性21名,女性26名,平均罹病期間10.0±5.8年,HYⅡ:1名,Ⅲ:27名,Ⅳ:16名,Ⅴ:3名,平均入院期間67.1±34.6日であった.本研究は所属機関の倫理委員会の承認(承認番号:22-05)を得た.
【方法】骨格筋量は体成分分析装置InBodyS10を用いて臥位で測定し,筋力は握力,10メートル歩行速度,5回起立時間,TUGを測定し,栄養状態は簡易栄養状態評価表(MNA-SF)を用いて評価した.いずれも入退院日から1週間以内に測定し,AWGS2019に基づきサルコペニアを診断した.PD評価はMDS-UPDRS,MMSE,PDQ-39,やる気スコア,GDS-15を実施した.運動内容は筋力増強運動やバランス,歩行,日常生活動作など複合的介入とし,介入頻度は週6回,1日2時間とした.統計解析は,2 群間で対応のある差の検定にはWilcoxonの順位和検定およびX2検定を用い,変数間の相関はSpearmanの順位相関係数を用いた.解析はSPSSver28を用い,有意水準は5%とした.
【結果】入院時のサルコペニア有病率は74.5%(男性61.9%,女性84.6%)と3分の2を超え,プレサルコペニア4.3%,ダイナペニア23.4%と,骨格筋量および筋力がともに正常範囲の患者は一人もいなかった.退院時はサルコペニア55.3%(男性42.9%,女性65.4%)と半数程度に減り,プレサルコペニア8.5%,ダイナペニア25.5%,骨格筋量および筋力正常8.5%へと推移した.入院時の筋力低下率は握力72.3%,歩行速度59.6%,起立速度76.6%であり,退院時には起立速度(P=0.03),TUG(P=0.04)が有意に改善した.骨格筋指数の改善はPDの重症度,年齢,罹病期間,入院期間,MDS-UPDRS,GDS-15は相関せず,歩行速度低下の有無(r=.32,P=0.03)と正の相関を認め,TUG(r=-.40,P=0.03)と負の相関を認めた.また,骨格筋指数の改善とBMI(r=-.36,P=0.01)は負の相関を示し,退院時のサルコペニアの有無はMNA-SF(r=-.50,P=0.001),MMSE(r=-.37,P=0.03)と負の相関を認め,やる気スコア(r=.45,P=0.01)と正の相関を認めた.
【考察】本調査にて,入院時のサルコペニア有病率は過去報告よりも大幅に上回り,PDの入院リハにて低栄養および骨格筋量低下を前提とした関わりの必要性を示した.鈴木ら(2021)は,PD患者における骨格筋量の減少の併存により,運動療法の効果に差が生じる可能性を報告している.今回,サルコペニアの併存または低体重・低栄養により,運動しても骨格筋量が増加しにくいことを示した.さらに栄養状態の不良や認知・意欲の低下があるとサルコペニアが改善しにくいことが示唆された.サルコペニアに対する栄養管理として,若林(2022)は,意図的な体重増減を目指した栄養療法やリハ栄養の重要性を述べており,理学療法士や管理栄養士とともにケアプロセスを考える連携が不可欠であると考えられる.
【結語】入院加療を必要とするPDにおいて,重症度に関わらずサルコペニアを併存している可能性を考慮すること,よりリハ効果を得るためには栄養管理および認知・意欲面に働きかけながら下肢筋力の向上を目指す重要性が示唆された.
【対象】2021年9月から2022年12月に当院に入院したPD患者で,入退院時に骨格筋量および筋力測定を実施した47名を対象とした.内訳は,平均年齢78.2±8.1歳,男性21名,女性26名,平均罹病期間10.0±5.8年,HYⅡ:1名,Ⅲ:27名,Ⅳ:16名,Ⅴ:3名,平均入院期間67.1±34.6日であった.本研究は所属機関の倫理委員会の承認(承認番号:22-05)を得た.
【方法】骨格筋量は体成分分析装置InBodyS10を用いて臥位で測定し,筋力は握力,10メートル歩行速度,5回起立時間,TUGを測定し,栄養状態は簡易栄養状態評価表(MNA-SF)を用いて評価した.いずれも入退院日から1週間以内に測定し,AWGS2019に基づきサルコペニアを診断した.PD評価はMDS-UPDRS,MMSE,PDQ-39,やる気スコア,GDS-15を実施した.運動内容は筋力増強運動やバランス,歩行,日常生活動作など複合的介入とし,介入頻度は週6回,1日2時間とした.統計解析は,2 群間で対応のある差の検定にはWilcoxonの順位和検定およびX2検定を用い,変数間の相関はSpearmanの順位相関係数を用いた.解析はSPSSver28を用い,有意水準は5%とした.
【結果】入院時のサルコペニア有病率は74.5%(男性61.9%,女性84.6%)と3分の2を超え,プレサルコペニア4.3%,ダイナペニア23.4%と,骨格筋量および筋力がともに正常範囲の患者は一人もいなかった.退院時はサルコペニア55.3%(男性42.9%,女性65.4%)と半数程度に減り,プレサルコペニア8.5%,ダイナペニア25.5%,骨格筋量および筋力正常8.5%へと推移した.入院時の筋力低下率は握力72.3%,歩行速度59.6%,起立速度76.6%であり,退院時には起立速度(P=0.03),TUG(P=0.04)が有意に改善した.骨格筋指数の改善はPDの重症度,年齢,罹病期間,入院期間,MDS-UPDRS,GDS-15は相関せず,歩行速度低下の有無(r=.32,P=0.03)と正の相関を認め,TUG(r=-.40,P=0.03)と負の相関を認めた.また,骨格筋指数の改善とBMI(r=-.36,P=0.01)は負の相関を示し,退院時のサルコペニアの有無はMNA-SF(r=-.50,P=0.001),MMSE(r=-.37,P=0.03)と負の相関を認め,やる気スコア(r=.45,P=0.01)と正の相関を認めた.
【考察】本調査にて,入院時のサルコペニア有病率は過去報告よりも大幅に上回り,PDの入院リハにて低栄養および骨格筋量低下を前提とした関わりの必要性を示した.鈴木ら(2021)は,PD患者における骨格筋量の減少の併存により,運動療法の効果に差が生じる可能性を報告している.今回,サルコペニアの併存または低体重・低栄養により,運動しても骨格筋量が増加しにくいことを示した.さらに栄養状態の不良や認知・意欲の低下があるとサルコペニアが改善しにくいことが示唆された.サルコペニアに対する栄養管理として,若林(2022)は,意図的な体重増減を目指した栄養療法やリハ栄養の重要性を述べており,理学療法士や管理栄養士とともにケアプロセスを考える連携が不可欠であると考えられる.
【結語】入院加療を必要とするPDにおいて,重症度に関わらずサルコペニアを併存している可能性を考慮すること,よりリハ効果を得るためには栄養管理および認知・意欲面に働きかけながら下肢筋力の向上を目指す重要性が示唆された.