[OE-1-5] パーキンソン病患者の在宅における活動量と活動内容に関する調査
【序論】パーキンソン病(以下PD)はアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり,高齢化率と共に罹患率も増加傾向を示している.PDに対しては,外科的治療と薬物療法,およびリハビリテーションを組み合わせた治療介入が推奨されている.在宅PD患者に対するリハビリテーションは,これまで通りの生活を継続することや,身体機能の維持を図ることが主な目的となる.しかし,在宅PD患者は,運動症状や非運動症状の出現により,外出や社会参加の機会が減少し,日常生活場面での活動量が低下することが知られている.オランダで行われた質問紙による身体活動調査票を用いた調査(Marlies, 2011)では,PD患者群は同年代の健常群と比較して1日の活動時間が短く,特に屋内での活動に費やす時間が有意に短いと述べている.しかし,在宅PD患者の具体的な活動内容についての報告は少なく,どのような活動の傾向があるのかは明らかにされていない.
【目的】在宅PD患者に対して Frenchay Activities Index(以下FAI)を用いて,自宅での活動量と活動内容を調査した.在宅PD患者の活動の傾向を知ることにより,在宅で必要となる実動作の具体的な優先順位を決定することに役立ち,より効率的な作業療法介入が可能となる.
【方法】2020年1月から2022年7月までに兵庫県立リハビリテーション西播磨病院に入院したPD患者で,作業療法においてFAIを実施した88名のうち,日本語版Montreal Cognitive Assessment(以下MoCA-J)21点未満の方を除外した75名を対象とした.カルテより年齢,性別,同居者の有無,Hoehn & Yahr の重症度分類(以下Yahr),MoCA-J,FAIのデータを収集した.FAI総得点と年齢,Yahrの相関をSpearmanの順位相関係数,FAI総得点と下位項目得点の男女差をMann-Whitney U検定を用いて解析を行なった.なお,統計処理にはR 3.5.0を用い,有意水準は5%とした.また,本研究は当院における包括同意(倫理的配慮)に基づき実施した.
【結果】対象者属性は年齢71.2±7.9歳,男性36名(48%),女性39名(52%),同居者ありは67名(89%),なしは8名(11%),Yahrは 2.9±0.7であった.FAI総得点と年齢は有意な相関を認めなかった. FAI総得点とYahrは相関係数-0.313で弱い負の相関を認めた(p=0.007).FAI総得点は,男性の中央値が20点(四分位範囲14.5-26.0),女性の中央値が21点(四分位範囲15.0-28.5)であり,男女間に有意差はなかった.FAI下位項目得点における男女差は,全15項目のうち,「食事の準備」(p=0.012),「洗濯」(p=0.007)は女性,「家や車の手入れ」(p=0.003)は男性で得点が高かった.
【考察】在宅中高年齢者のFAI標準値を示した報告(Hachisuka,1999)では,55歳から79歳では女性の方が男性より有意にFAI総得点が高く,特に屋内家事(食事の用意, 食事の後片づけ, 洗濯, 掃除や整頓, 力仕事)の項目で女性の得点が高いと述べている.本研究は入院リハビリテーションを実施したPD患者を対象としたが,一般の在宅中高年齢者に対する先行研究の結果とほぼ一致した.また,PDの重症度が高くなるにつれて活動量が減少することが示唆され,女性では屋内家事,男性では家や車の手入れに対する動作指導の必要性が明らかとなった.
【目的】在宅PD患者に対して Frenchay Activities Index(以下FAI)を用いて,自宅での活動量と活動内容を調査した.在宅PD患者の活動の傾向を知ることにより,在宅で必要となる実動作の具体的な優先順位を決定することに役立ち,より効率的な作業療法介入が可能となる.
【方法】2020年1月から2022年7月までに兵庫県立リハビリテーション西播磨病院に入院したPD患者で,作業療法においてFAIを実施した88名のうち,日本語版Montreal Cognitive Assessment(以下MoCA-J)21点未満の方を除外した75名を対象とした.カルテより年齢,性別,同居者の有無,Hoehn & Yahr の重症度分類(以下Yahr),MoCA-J,FAIのデータを収集した.FAI総得点と年齢,Yahrの相関をSpearmanの順位相関係数,FAI総得点と下位項目得点の男女差をMann-Whitney U検定を用いて解析を行なった.なお,統計処理にはR 3.5.0を用い,有意水準は5%とした.また,本研究は当院における包括同意(倫理的配慮)に基づき実施した.
【結果】対象者属性は年齢71.2±7.9歳,男性36名(48%),女性39名(52%),同居者ありは67名(89%),なしは8名(11%),Yahrは 2.9±0.7であった.FAI総得点と年齢は有意な相関を認めなかった. FAI総得点とYahrは相関係数-0.313で弱い負の相関を認めた(p=0.007).FAI総得点は,男性の中央値が20点(四分位範囲14.5-26.0),女性の中央値が21点(四分位範囲15.0-28.5)であり,男女間に有意差はなかった.FAI下位項目得点における男女差は,全15項目のうち,「食事の準備」(p=0.012),「洗濯」(p=0.007)は女性,「家や車の手入れ」(p=0.003)は男性で得点が高かった.
【考察】在宅中高年齢者のFAI標準値を示した報告(Hachisuka,1999)では,55歳から79歳では女性の方が男性より有意にFAI総得点が高く,特に屋内家事(食事の用意, 食事の後片づけ, 洗濯, 掃除や整頓, 力仕事)の項目で女性の得点が高いと述べている.本研究は入院リハビリテーションを実施したPD患者を対象としたが,一般の在宅中高年齢者に対する先行研究の結果とほぼ一致した.また,PDの重症度が高くなるにつれて活動量が減少することが示唆され,女性では屋内家事,男性では家や車の手入れに対する動作指導の必要性が明らかとなった.