[OE-1-6] 短期入院中の神経難病患者に対する目標設定の可否に影響する因子
【はじめに】神経難病患者のニーズ調査において,海外では作業に焦点を当てた内容を表明していることが多いが(Kangら,2023),本邦では姿勢や歩行など身体的側面が多いとされている(中馬,2012).当院では神経難病患者の短期入院による集中的リハビリを実施しており,OTでは作業に焦点を当てた目標設定を心がけているが,ニーズが表明されないことによって身体機能訓練を中心とした介入になってしまうことがある.
【目的】短期入院中の神経難病患者に対する目標設定の可否に影響する因子を明らかにすることとした.また目標設定ができた場合の内容と達成状況に加え,できなかった場合の理由も明らかにすることとした.
【方法】研究デザイン:ケースコントロール研究を採用した.倫理的配慮:ヘルシンキ宣言に基づき,対象者に口頭で十分な説明をした後に同意を得た.対象者:2018年4月~2021年12月に当院に短期入院し,研究代表者が担当した神経難病患者とし,疎通不良,途中死亡,同意が得られない者を除外した.手順:初期評価後にADOCを用いて目標設定し,困難な場合は理由を聴取し,診療記録に記載した.分析方法:目標設定の可否で,可能群と不可群に分類し,年齢,性別,疾患,入院目的,在院日数,入院時のFIMとMMSE,訪問リハの有無で比較した.目標設定ができた場合の内容はADOCのカテゴリーで分類し,達成状況は「希望通り達成」「工夫して達成」「未達成」に分類し,できなかった場合の理由は内容の類似性で分類し,それぞれ割合を算出した.統計処理:2群比較は尺度に応じてχ二乗検定,Mann-WhitneyのU検定,対応のないt検定を実施した.統計ソフトはEZR ver1.55を使用し有意水準は5%とした.
【結果】研究対象者112名のうち,29名を除外した83名を分析対象とした.年齢は70.2±12.5歳,性別は男性49名,女性34名,疾患内訳はPD37名,ALS19名,MSA15名,その他12名,入院目的は急性増悪28名,緩徐進行44名,レスパイト11名,在院日数は27.0±22.3日,入院時FIMは72.7±28.5点,入院時MMSEは25.8±5.2点,訪問リハの利用者は24名であった.目標設定可否の影響因子:2群比較(可能群65名/不可群18名)は,年齢68.9±13.4歳/75.1±7.4歳,性別(男:女)36:29/13:5,疾患(PD:ALS:MSA:その他)30:14:12:9/7:5:3:3,入院目的(急性増悪:緩徐進行:レスパイト)22:37:6/6:7:5,在院日数28.8±24.2日/20.6±12.6日,FIM73.4±28.2点/70.3±31.1点,MMSE26.2±4.4点/24.2±7.5点,訪問リハ利用者19名/5名であり,有意差を認めた項目はなかった.目標設定ができた場合の内容と達成状況:136個の目標のうち,セルフケア34%,移動運動32%,家庭生活29%,仕事3%,対人交流3%,趣味7%であり,「希望通り達成」26%,「工夫して達成」53%,「未達成」21%であった.目標設定ができなかった場合の理由:何も望まないといった「希望の希薄」が67%,見通しが立たないからといった「見通しの希薄」が22%,ストレッチだけでよいといった「機能訓練の希望」が11%であった.
【考察】目標設定の可否に影響する因子は明らかにならなかったが,できなかった理由は「希望の希薄」が多く,その背景には「諦めている」または「本当に困っていない」等の思いがあるものと推測された.一方,目標設定ができた内容は,家庭生活や趣味に至るまで多岐に渡り,「工夫して達成」が多かったことから,患者にとって重要な作業を特定し,どのように従事できるかを検討する介入が重要であると考えた.
【目的】短期入院中の神経難病患者に対する目標設定の可否に影響する因子を明らかにすることとした.また目標設定ができた場合の内容と達成状況に加え,できなかった場合の理由も明らかにすることとした.
【方法】研究デザイン:ケースコントロール研究を採用した.倫理的配慮:ヘルシンキ宣言に基づき,対象者に口頭で十分な説明をした後に同意を得た.対象者:2018年4月~2021年12月に当院に短期入院し,研究代表者が担当した神経難病患者とし,疎通不良,途中死亡,同意が得られない者を除外した.手順:初期評価後にADOCを用いて目標設定し,困難な場合は理由を聴取し,診療記録に記載した.分析方法:目標設定の可否で,可能群と不可群に分類し,年齢,性別,疾患,入院目的,在院日数,入院時のFIMとMMSE,訪問リハの有無で比較した.目標設定ができた場合の内容はADOCのカテゴリーで分類し,達成状況は「希望通り達成」「工夫して達成」「未達成」に分類し,できなかった場合の理由は内容の類似性で分類し,それぞれ割合を算出した.統計処理:2群比較は尺度に応じてχ二乗検定,Mann-WhitneyのU検定,対応のないt検定を実施した.統計ソフトはEZR ver1.55を使用し有意水準は5%とした.
【結果】研究対象者112名のうち,29名を除外した83名を分析対象とした.年齢は70.2±12.5歳,性別は男性49名,女性34名,疾患内訳はPD37名,ALS19名,MSA15名,その他12名,入院目的は急性増悪28名,緩徐進行44名,レスパイト11名,在院日数は27.0±22.3日,入院時FIMは72.7±28.5点,入院時MMSEは25.8±5.2点,訪問リハの利用者は24名であった.目標設定可否の影響因子:2群比較(可能群65名/不可群18名)は,年齢68.9±13.4歳/75.1±7.4歳,性別(男:女)36:29/13:5,疾患(PD:ALS:MSA:その他)30:14:12:9/7:5:3:3,入院目的(急性増悪:緩徐進行:レスパイト)22:37:6/6:7:5,在院日数28.8±24.2日/20.6±12.6日,FIM73.4±28.2点/70.3±31.1点,MMSE26.2±4.4点/24.2±7.5点,訪問リハ利用者19名/5名であり,有意差を認めた項目はなかった.目標設定ができた場合の内容と達成状況:136個の目標のうち,セルフケア34%,移動運動32%,家庭生活29%,仕事3%,対人交流3%,趣味7%であり,「希望通り達成」26%,「工夫して達成」53%,「未達成」21%であった.目標設定ができなかった場合の理由:何も望まないといった「希望の希薄」が67%,見通しが立たないからといった「見通しの希薄」が22%,ストレッチだけでよいといった「機能訓練の希望」が11%であった.
【考察】目標設定の可否に影響する因子は明らかにならなかったが,できなかった理由は「希望の希薄」が多く,その背景には「諦めている」または「本当に困っていない」等の思いがあるものと推測された.一方,目標設定ができた内容は,家庭生活や趣味に至るまで多岐に渡り,「工夫して達成」が多かったことから,患者にとって重要な作業を特定し,どのように従事できるかを検討する介入が重要であると考えた.