第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

がん

[OF-1] 一般演題:がん1

2023年11月10日(金) 12:10 〜 13:10 第7会場 (会議場B3-4)

[OF-1-2] 青年期後期血液腫瘍患者の友人関係

関原 雛子1,2, 川間 健之介3 (1.筑波大学人間総合科学学術院人間総合科学研究群リハビリテーション学位プログラム博士前期課程, 2.国立成育医療研究センターリハビリテーション科, 3.筑波大学人間系)

【序論】近年小児血液・悪性腫瘍疾患は集学的治療の進歩に伴い長期生存症例は増加し心身の発達とともに治療を行うため, 生存者のQOL向上,晩期合併症の長期フォローアップが重要視されている. 先行研究よりQOLの要因として身体機能, 心理的要因, 社会適応が挙げられる.その中でも親子関係や友人関係等の対人関係は世代特有の要因とされており, 先行研究において, 兄弟よりも1.7倍, 友人関係に困難であるとされている. 友人関係の困難さを感じているものの, 血液腫瘍患者の実態や要因は明らかになっていない.
【目的】外来通院している青年期後期血液腫瘍患者における友人関係の実態とその要因を明らかにする.
【方法】研究デザインは研究Ⅰ:アンケートを用いた量的研究, 研究Ⅱ:インタビューを用いた質的研究から構成される混合研究とした. 対象は初回治療後, 外来通院18~24歳の血液腫瘍患者とした. 研究Ⅰは外来通院している青年期後期血液腫瘍患者の友人関係の実態と要因を量的に明らかにすることを目的に対象者を友人関係とした青年期用対象関係尺度をメインアウトカムとし, 基本属性, 医学的情報, 社会的情報, 親子関係, 心理面, 晩期合併症を調査した. 調査項目に対しメインアウトカムを変数としたクラスタ分析を実施し, 群分けした. 各群の調査項目に対して対応のないt検定を実施.有意差がある項目に対し因子分析を実施した. 研究Ⅱは青年期後期血液腫瘍患者の友人関係について病前後から退院後, 現在に至る継時的な実態を質的に明らかにすることとし, 半構造化面接を実施し, 逐語録を作成後SCATにて分析を行った.
【結果】研究Ⅰは階層的クラスタ分析を実施し, 解釈可能性を考慮した上で2クラスタ解を抽出した. 対応のないt検定を実施し, 吐き気(p=0.013), 心配(p=0.025), 認知(p<0.01), 容姿(p<0.01), コミュニケーション(p<0.01), 精神的倦怠感(p=0.015), 個人的苦痛(p<0.01), 拒否不安(P<0.01)に有意差を認めた. 以上の8項目に対し因子分析を実施し, 因子Ⅰの項目は個人的苦痛, コミュニケーション, 親和不全, 容姿, 精神的倦怠感であり<心理・精神面>, 因子Ⅱの項目は心配, 吐き気,認知機能であり<治療による身体・認知面への影響>として解釈することが可能であった. 研究Ⅱでは退院後に最も問題を抱えやすい時期であり, 治療により外見の変化や体力面の変化により学校生活などの集団行動に困難感を感じていた. 学校の友人は病気に対する理解に差があり, 理解がないと関係を構築することに難しさを感じ, 交流の幅が狭くなった. 更に進路選択を控え同級生と交流することにより自分自身が学習面などで遅れをとっていることに関し焦燥感を感じ, 孤独感を感じていた. 現在も病気の自己開示について友人に開示する方法について悩みを抱え, 葛藤が見られた.
【考察】友人関係に問題を抱えている群は友人関係が良好な群に比べ少ない結果であったが, その中でも退院直後に問題を抱えやすく, 経過とともに改善または問題が維持していた. 友人関係には2つの要因が関わっており, 医療機関や地域など包括的かつ医師や看護師やリハビリテーション関連職種等多職種で協力した支援が必要であると考えられた. 現時点で問題が生じていないケースでも晩期合併症の影響を考慮すると, 長期的に支援する必要がある. 近年諸外国では友人関係の要因により生じる倦怠感や抑うつ等生活の問題点に対し,認知行動療法が有用とされている. そのため,多職種の中でも発達段階に応じた作業に焦点を当て身体機能面や心理・精神面へのアプローチや, 認知行動療法を用いた介入を行う作業療法士の介入の重要性が示唆された.