第57回日本作業療法学会

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一般演題

がん

[OF-3] 一般演題:がん3

Sat. Nov 11, 2023 11:20 AM - 12:20 PM 第7会場 (会議場B3-4)

[OF-3-4] リンパ浮腫患者における非侵襲的な皮膚力学的特性の測定方法:スコーピングレビュー

藤本 侑大1,2, 由利 禄巳2, 藤井 美希1, 田宮 大也1,3 (1.大阪府立病院機構 大阪国際がんセンターリハビリテーション科, 2.森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科, 3.大阪府立病院機構大阪国際がんセンター整形外科(骨軟部腫瘍科))

【はじめに】
ヒトの皮膚は,硬さや粘弾性,伸展性,強度などの力学的特性を有する.リンパ浮腫患者の皮膚は,重症化に伴い皮膚の線維化や象皮様変化を来たし,力学的特性も変化することが推測される.しかし,臨床においては,皮膚の力学的特性の変化を触診で評価されていることが多く,定量化には課題がある.本研究では,リンパ浮腫患者の力学的特性について定量的かつ非侵襲的に測定されている文献について,既存の知見を網羅的に収集することを目的にスコーピングレビューを実施した.
【方法】
本研究の研究デザインは,スコーピングレビューとし,報告ガイドラインであるPRISMA ScRに従い実施した.文献検索は,2023年2月1日に実施した.検索データベースは,日本語では「医中誌web」「CiNii Articles」「メディカルオンライン」「J-STAGE」「医書.jp」,英語では「Pub Med」「Cochrane Library」「PEDro」「OTseeker」「CINAHL」を使用した.検索用語は,「(リンパ浮腫)AND(皮膚)AND(硬度OR弾性OR粘性OR粘弾性)AND(測定OR評価)」「(lymphedema)AND(skin)AND(stiffness OR thickness OR elasticity OR viscosity OR viscoelasticity)AND(measurement OR assessment)」とし,リンパ浮腫患者の皮膚力学的変化が発生しやすい用語を使用した.適格基準は,リンパ浮腫患者を対象としているもの,非侵襲的かつ定量的な測定であること,測定目的としている皮膚力学的特性の記載があるもの,日本語もしくは英語で記載されていることとした.なお,学会抄録や原著論文などの発行形式に基準は設けなかったが,解説・特集やレビュー論文は除外基準とした.一次スクリーニングとして,タイトルと要旨から適格基準を満たしているものを抽出し,二次スクリーニングで文献本文を査読し,適格基準と除外基準に準じて分析対象となる文献を抽出した.なお,学会抄録については一次スクリーニングのみ行った.対象文献から抽出するデータは,掲載年,測定実施国(日本語文献を除く),対象部位,測定目的している皮膚力学的特性,測定に使用している機器,機器の使用目的とした.
【結果】
データベース検索にて得られた全文献は,438編(日本語113編,英語325編)であり,最終的な分析対象として55編(日本語6件,英語49編)が抽出された.文献の掲載年は,2020年代(20-22年)が23編,2010年代が26編,2009年以前が6編であった.測定実施国では,日本と韓国がそれぞれ9編で最多であり,次いでトルコ(8編),フランス・イギリス(各4編)が上位を占めた.対象部位は,上肢31編,下肢17編,混合7編であったが,測定部位は研究ごとに設定されており,統一されていなかった.測定目的としている皮膚力学的特性(重複あり)は,thickness(36編),stiffness(11編),elasticity(5編),viscosity(5編),その他(6編)であった.測定に使用している機器(重複あり)は,超音波38編,Cutometer(皮膚粘弾性測定装置)8編,その他 11編であった.機器の使用目的は,健常者/健常部位/他疾患との比較19編,介入効果の検討(19編),信頼性・妥当性の検討・診断補助(14編),因子分析(3編)であった.
【考察】
リンパ浮腫患者における非侵襲的な皮膚力学的特性の測定を用いた研究は,近年増加傾向であった.しかし,高価な測定機器である場合が多く,先進国からの報告に偏っていた.また,測定環境や使用機器が様々であり,方法論が確立されていなかった.今後は,機器特性を考慮して,リンパ浮腫患者における皮膚力学的特性の標準的な測定方法の検討および日常臨床への応用が期待される.