[OH-1-4] 包括的支援マネジメントにおける支援計画の分析
【はじめに】2018年1月にまとめられた「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」では,長期入院精神障害者をはじめとする中重度の精神障害者の地域生活を支えていくためには,本人の意思の尊重と多職種協働による包括的支援マネジメントを機能させていくことが提言されている.当院では,2018年より包括的支援マネジメントの実装に向けたモデル事業を実施した.結果として包括的支援マネジメント支援を受けた者ほど再入院において,症状が軽い段階での入院となり,症状の悪化予防に貢献できることがわかった.そこで今回,包括的マネジメントにおける入院中に多職種で支援計画を作成した計画の内容を分析し,入院精神患者のニーズ及び職種の役割,支援内容について明らかにしたので報告する.
【方法】2019~2020年に支援計画を立案した者について,記述式の計画書から,➀本人の生活の希望,➁ニーズ,➂支援内容,➃支援職種,➄包括的支援マネジメントについて取り組んだ感想を職員アンケートとして実施した.➀➁は記述を包括的支援アセスメントに準じカテゴリー分類,③はICFコード分類に記述したものを変換し分類,集計した.支援職種については主に担当することになった職種を集計した.
【結果】包括的アセスメント及び計画書,転帰,再入院まで期間等すべてのデータが残っていた者47名について解析した.➀本人の希望:最も多かったのは,仕事の22件(46.8%),次いで家に帰りたいなど明確な希望が聞けなかった14件(29.8%),家事などIADLに関すること9件(19.1%)であった.➁ニーズ:最も多かったものは,服薬・症状の自己管理の援助(以下,服薬管理)95件(29.1%),次いで就労・就学58件(17.8%),IADL支援44件(13.5%)であった.➂ニーズ毎のプログラムでは,服薬管理はd570健康に関するプログラム(教育等)32件(33.7%),d240ストレス等への対処(クライシスプラン等)15件(15.8%)であった.就労・就学では,d845仕事の獲得等練習10件17.2%,e570社会保障サービス10件(17.2%)であった.IADL支援では,d640調理以外14件(31.8%),d630調理13件(29.5%)であった.➃ニーズ毎の支援職種では,医師は服薬等27件(28.4%)が最も多く,看護師も同様,服薬等49件(51.6%),次いで食事などADL支援16件(53.3%),OTは就労等42件(72.4%),IADLに関する支援26件(54.5%),精神保健福祉士は就労等12件(20.7%),社会生活援助6件(75%)であった.
【考察】精神障害者の地域包括ケアシステムに向けて本人の望む生活を理解することが支援計画を立てていく上で大切である.支援のスタートである本人の望む生活については,約3割が具体的に聞き出せていなかった.看護師から,これまで患者の望む生活を聞くこともなかったが,包括的支援マネジメントに取り組んだ後,望む生活の把握は大切であるとの意見が聞かれた.また,具体的に計画を作成し,共有したことで各職種の役割が明確になったという感想が多く,プログラムの内容からも職種の役割が明確になっていることが分かった.包括的支援マネジメントを取り組むことで,本人たちの望む生活を目的に多職種協働が推進されやすいというメリットがあると考える.
※なお,本研究は厚生労働科学研究費補助金「地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究」の多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究の一環として実施.(石川県立高松病院 倫理番号:9)
【方法】2019~2020年に支援計画を立案した者について,記述式の計画書から,➀本人の生活の希望,➁ニーズ,➂支援内容,➃支援職種,➄包括的支援マネジメントについて取り組んだ感想を職員アンケートとして実施した.➀➁は記述を包括的支援アセスメントに準じカテゴリー分類,③はICFコード分類に記述したものを変換し分類,集計した.支援職種については主に担当することになった職種を集計した.
【結果】包括的アセスメント及び計画書,転帰,再入院まで期間等すべてのデータが残っていた者47名について解析した.➀本人の希望:最も多かったのは,仕事の22件(46.8%),次いで家に帰りたいなど明確な希望が聞けなかった14件(29.8%),家事などIADLに関すること9件(19.1%)であった.➁ニーズ:最も多かったものは,服薬・症状の自己管理の援助(以下,服薬管理)95件(29.1%),次いで就労・就学58件(17.8%),IADL支援44件(13.5%)であった.➂ニーズ毎のプログラムでは,服薬管理はd570健康に関するプログラム(教育等)32件(33.7%),d240ストレス等への対処(クライシスプラン等)15件(15.8%)であった.就労・就学では,d845仕事の獲得等練習10件17.2%,e570社会保障サービス10件(17.2%)であった.IADL支援では,d640調理以外14件(31.8%),d630調理13件(29.5%)であった.➃ニーズ毎の支援職種では,医師は服薬等27件(28.4%)が最も多く,看護師も同様,服薬等49件(51.6%),次いで食事などADL支援16件(53.3%),OTは就労等42件(72.4%),IADLに関する支援26件(54.5%),精神保健福祉士は就労等12件(20.7%),社会生活援助6件(75%)であった.
【考察】精神障害者の地域包括ケアシステムに向けて本人の望む生活を理解することが支援計画を立てていく上で大切である.支援のスタートである本人の望む生活については,約3割が具体的に聞き出せていなかった.看護師から,これまで患者の望む生活を聞くこともなかったが,包括的支援マネジメントに取り組んだ後,望む生活の把握は大切であるとの意見が聞かれた.また,具体的に計画を作成し,共有したことで各職種の役割が明確になったという感想が多く,プログラムの内容からも職種の役割が明確になっていることが分かった.包括的支援マネジメントを取り組むことで,本人たちの望む生活を目的に多職種協働が推進されやすいというメリットがあると考える.
※なお,本研究は厚生労働科学研究費補助金「地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究」の多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究の一環として実施.(石川県立高松病院 倫理番号:9)