第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

精神障害

[OH-2] 一般演題:精神障害 2

2023年11月10日(金) 14:30 〜 15:30 第5会場 (会議場B2)

[OH-2-5] 包括的支援マネジメントにおける再入院に関する実態調査

渡會 佳奈, 村井 千賀, 横井 安芸, 竹澤 翔, 北村 立 (石川県立こころの病院)

【はじめに】2018年1月にまとめられた「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」では,長期入院精神障害者をはじめとする中重度の精神障害者の地域生活を支えていくためには,本人の意思の尊重と多職種協働による包括的支援マネジメントを機能させていくことが提言されている.当院では,2018年より包括的支援マネジメントの実装に向けたモデル事業を実施した.結果として包括的支援マネジメント支援を受けた者ほど再入院において,症状が軽い段階での入院となり,症状の悪化予防に貢献できることがわかった.そこで今回,包括的支援マネジメントの支援計画におけるニーズの内容や,基本情報,介入前後の評価結果から再入院との関係を分析したので報告する.
【方法】2019~2020年に支援計画を立案した者について,(1)基本情報(年齢,性別,退院後再入院の有無), (2)介入前後の評価として,BPRS(簡易精神症状評価),PSP(社会的機能遂行度尺度),FAI(IADL評価),EQ-5D(健康関連QOLを測定する包括的な評価尺度),(3)支援計画における主なニーズ(以下,ニーズ)を調査した.ニーズについては,12項目(①ADL,➁IADL,➂日常生活への援助,➃社会生活への参加,➄社会生活への援助,⑥対人関係の維持・構築の援助,⑦就労・就学支援,⑧診察同行・診察促し・入退院調整,➈服薬・症状の自己管理の援助,➉家族支援,⑪危機管理,⑫環境調整)に分類し,集計した.再入院の有無と基本情報,各評価項目,ニーズとの関係について,ロジスティク回帰分析を,各評価項目に関する比較にはt検定を実施した.
【結果】対象者のうち,データ欠損のない者は47名であった.年齢は平均年齢40.0歳,性別は女性21名(44.7%),男性26名(55.3%)であった.包括的支援マネジメントを受けた後退院し,1年以内に再入院した者は11名(女性9名,男性2名)であり,平均在宅日数は215.6日であった.ニーズは服薬・症状等36件(76.6%)が最も多く,次いで就労・就学支援27件(57.5%),IADLが26件(55.3%)であった.再入院と基本情報の関係については,男性よりも女性の方が有意に再入院の割合が高い結果となった(p<0.05).再入院と各評価項目やニーズについては,有意な関係性は認められなかった.また,各評価の性別比較では,EQ-5Dで測定されたスコアのみに男女差があり,入院時,退院時ともに女性で有意にQOLが低い結果となった(p<0.05).
【考察】再入院の有無とニーズに関しては有意な関係性は認められず,再入院はニーズには左右されないことが考えられた.女性の方が再入院の割合が高かったが,今後,退院後の生活や社会資源などを詳細に検討する必要があると考える.また,女性で有意にEQ-5Dのスコアが低い結果については,QOL尺度の見直しを行い,今後要因となる因子を詳細に分析する必要があると考えられる.
※なお,本研究は厚生労働科学研究費補助金「地域精神保健医療福祉体制の機能評価を推進する政策研究」(19GC2003)の多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究の一環として実施.