[OI-1-4] 幼児期前期の母子間の相互的なふれあい遊びがアタッチメントに及ぼす影響の探索的研究
【はじめに】幼少期の親子間の安定したアタッチメントは,子どもが生涯に渡って心と身体を健康に保ち,幸福に生きる上で根源的な働きをなす.2歳代は親子間の情緒的葛藤が生じやすく,この時期のアタッチメント形成は大切である.乳児と親のアタッチメントの形成には身体接触が重要である.さらに,子どもの発達に伴い幼児期前期には身体接触を介したふれあい遊びが増加するため,ふれあい遊びはアタッチメント形成に寄与する可能性があるが,幼児期前期のふれあい遊びの重要性は明らかではない.また,ふれあい遊びは相互性が重要だが相互性を調査している研究も少ない.
【目的】幼児期前期の母子間の相互的なふれあい遊びがアタッチメントに及ぼす影響を探索的に調査することを目的とした.ふれあい遊びの定義は,「母子間のポジティブな身体接触があり,触覚・前庭感覚・固有受容覚を介した子どもの快を伴う遊び」とした.なお,本研究は所属施設の研究倫理審査委員会の承認を受け実施し,開示すべき利益相反する企業等はない.
【対象】2歳0ヶ月〜11ヶ月の子どもとその母親の36組を対象とした.子どもの除外基準は,出生体重2500g未満,在胎週数37週未満,運動発達の遅れがある(一人での階段昇降が不可),発達面に関して継続的にフォローされている者とした.母親の除外基準は,抗精神病薬や抗うつ薬を服用している者とした.
【方法】①アタッチメント評価:アタッチメント安定性尺度母親用(下位因子:安全基地行動,接近・接触,従順,不信・回避)を用いた.
②ふれあい遊び:母子間の自由な遊び場面を10分間撮影し,ふれあい遊びが多かった連続した5分間を抽出した.ふれあい遊びを始まりと終わりで区切り,その間を1回のふれあい遊びと定義し,1回のふれあい遊び毎を分析対象とした.ふれあい遊びの評価項目は,子どもの身体接触の合計時間とふれあい遊びの実施回数という量的な項目と,母親と子どもの間に相互に働く情緒交流システムに着目した母子間の相互作用に関する項目(子ども側面,母親側面)とした.子ども側面は,「子どもの情動表出(表情)」,「子どもの情動表出(笑い声)」であり,母親側面は,「母親の遊び中の情動応答性」,「母親の遊び後の情動応答性」,「母親の子どもの意思の尊重」とした.その後,アタッチメント安定性尺度母親用の下位因子とふれあい遊びの評価項目との関連性を二項ロジスティック回帰分析にて検討した.
【結果】安全基地行動は,「母親の遊び後の情動応答性」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は0.212であった.Hosmer–Lemeshow検定(以下,検定)はp=0.235,判別的中率80.6%であった.接近・接触は,「子どもの情動表出(表情)」と「母親の遊び後の情動応答性」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は0.068,0.082であった.検定はp=0.214,判別的中率86.1%であった.不信・回避は,「子どもの情動表出(笑い声)」と「母親の子どもの意思の尊重」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は21.875,0.062であった.検定はp=0.991,判別的中率80.6%であった.従順は,有効な回帰式の作成が困難であった.
【考察】アタッチメントの安定性に関連するふれあい遊びの評価項目には量的な項目は関与しなかった.一方で,「母親の子どもの意思の尊重」,「子どもの情動表出(表情)」,「母親の遊び後の情動応答性」とは関連が示された.よって,この一連の流れを伴った母子間の相互的なふれあい遊びがアタッチメントの形成に寄与することが示唆された.また,短時間でも母子間で相互的にふれあい遊びを行うことの重要性が明らかになり,特に母子保健分野で有益な情報になり得る.
【目的】幼児期前期の母子間の相互的なふれあい遊びがアタッチメントに及ぼす影響を探索的に調査することを目的とした.ふれあい遊びの定義は,「母子間のポジティブな身体接触があり,触覚・前庭感覚・固有受容覚を介した子どもの快を伴う遊び」とした.なお,本研究は所属施設の研究倫理審査委員会の承認を受け実施し,開示すべき利益相反する企業等はない.
【対象】2歳0ヶ月〜11ヶ月の子どもとその母親の36組を対象とした.子どもの除外基準は,出生体重2500g未満,在胎週数37週未満,運動発達の遅れがある(一人での階段昇降が不可),発達面に関して継続的にフォローされている者とした.母親の除外基準は,抗精神病薬や抗うつ薬を服用している者とした.
【方法】①アタッチメント評価:アタッチメント安定性尺度母親用(下位因子:安全基地行動,接近・接触,従順,不信・回避)を用いた.
②ふれあい遊び:母子間の自由な遊び場面を10分間撮影し,ふれあい遊びが多かった連続した5分間を抽出した.ふれあい遊びを始まりと終わりで区切り,その間を1回のふれあい遊びと定義し,1回のふれあい遊び毎を分析対象とした.ふれあい遊びの評価項目は,子どもの身体接触の合計時間とふれあい遊びの実施回数という量的な項目と,母親と子どもの間に相互に働く情緒交流システムに着目した母子間の相互作用に関する項目(子ども側面,母親側面)とした.子ども側面は,「子どもの情動表出(表情)」,「子どもの情動表出(笑い声)」であり,母親側面は,「母親の遊び中の情動応答性」,「母親の遊び後の情動応答性」,「母親の子どもの意思の尊重」とした.その後,アタッチメント安定性尺度母親用の下位因子とふれあい遊びの評価項目との関連性を二項ロジスティック回帰分析にて検討した.
【結果】安全基地行動は,「母親の遊び後の情動応答性」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は0.212であった.Hosmer–Lemeshow検定(以下,検定)はp=0.235,判別的中率80.6%であった.接近・接触は,「子どもの情動表出(表情)」と「母親の遊び後の情動応答性」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は0.068,0.082であった.検定はp=0.214,判別的中率86.1%であった.不信・回避は,「子どもの情動表出(笑い声)」と「母親の子どもの意思の尊重」が有意(p<0.05)であり,オッズ比は21.875,0.062であった.検定はp=0.991,判別的中率80.6%であった.従順は,有効な回帰式の作成が困難であった.
【考察】アタッチメントの安定性に関連するふれあい遊びの評価項目には量的な項目は関与しなかった.一方で,「母親の子どもの意思の尊重」,「子どもの情動表出(表情)」,「母親の遊び後の情動応答性」とは関連が示された.よって,この一連の流れを伴った母子間の相互的なふれあい遊びがアタッチメントの形成に寄与することが示唆された.また,短時間でも母子間で相互的にふれあい遊びを行うことの重要性が明らかになり,特に母子保健分野で有益な情報になり得る.