第57回日本作業療法学会

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一般演題

発達障害

[OI-2] 一般演題:発達障害 2

Fri. Nov 10, 2023 3:40 PM - 4:50 PM 第4会場 (会議場B5-7)

[OI-2-2] 障害のある受刑者は受刑生活を送ることで注意機能がどう変化するのか

石田 眞由1,2, 足立 一1,3, 宇都 みずき4 (1.株式会社 セラム, 2.大阪リハビリテーション専門学校, 3.高知リハビリテーション専門職大学, 4.株式会社 小学館集英社プロダクション)

はじめに 我々は,播磨社会復帰促進センター(以下当センター)において,受刑生活が障害のある受刑者の心身機能や能力へ与える影響を明らかにするために2014年から調査を始めた.本報告はその結果の一部について分析し,考察を加えたものである.
方法 評価対象は2018年11月から2020年3月までに当センターに入所し,知的,精神面に何らかの障害がある者とした.評価は,各工場へ作業指定直後とその半年後の計2回行った.評価項目は新ストループ検査Ⅱにより選択性(転換性)注意機能と標準注意検査法の一部(以下CAT)を実施した.倫理的配慮として,当センターにおける個人情報保護及び情報の取り扱いに関する規定を遵守し,報告に関して当センター長の許可を得た.
結果 対象者は計13名であった.平均年齢は43.77(SD13.51)歳,平均IQ相当値(CAPAS)は65.1(SD14.1),学歴は高校卒業以上6名,中学校卒業7名,平均刑期は853.5(SD302.9)日であった.疾病・障害の種別は,のべ人数で知的障害9名,発達障害4名,感情障害1名,神経症性障害1名,薬物依存症5名,その他1名であった.罪名は,のべ人数で窃盗等8名,詐欺等3名,覚せい剤取締法違反等1名,その他6名であった.新ストループ検査Ⅱ(平均値)は,作業指定時の正答数が課題1で,43.9(SD16.6)課題2で38.1(SD17.0),課題3で32.2(SD11.1),課題4で27.6(SD14.1)であった.
半年後の正答数が課題1で47.6(SD16.5),課題2で36.4(SD21.7),課題3で33.6(SD13.3),課題4で28.6(SD13.5)であった.課題1の正答数において有意な差を認めた(p<0.05).CAT(平均値)の作業指定時Spanの項目でDisit Span forwardが5.6(SD1.1),backwardは4.2(SD1.0),Tapping Span forwardは5.1(SD0.6),backward4.4(1.0),聴覚性検出課題は89.3(SD9.4),視覚性抹消課題(平均時間
の①図形は50.3(SD14.3),②図形59.6(SD19.1),③数字93.7(SD28.2),④仮名107.3(SD27.3)であった.半年後はDisit Span forwardが5.6(SD0.8),backward4.0(SD1.1),Tapping Span forwardは4.8(SD0.8),backward4.3(SD1.0),聴覚性検出課題は88.9(SD12.3),視覚性抹消課題(平均時間)は①図形50.3(SD15.4)②図形52.3(SD19.8),③数字92.3(SD27.5),④仮名108.8(SD27.6)であった.視覚性抹消課題の②図形において有意差を認めた(p<0.05).
考察 今回半年間の受刑生活で向上が認められたのは,新ストループ検査Ⅱの課題1と,視覚性抹消課題の②図形であった.いずれも視覚課題であり,かつ単純で簡単な課題であった.これは当センターにおいて障害のある受刑者が単純な軽作業を日中集中して繰り返し行っていた結果と考えられる.また受刑者は作業中許可なく会話できず,脇見もせず目の前の作業に集中することが規則である.このような環境が聴覚課題での変化が認められなかった結果に影響したと考える.受刑者の中には口頭指示に対する注意,理解の低下が顕著であり,対人関係や集団生活を自ら避ける者が多い.そのような受刑者には個別での作業療法の介入により個々の能力に応じたアプローチを行うことで集団生活及び社会生活の基盤を作ることができるのではないか.