第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-3] 一般演題:発達障害 3

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 第6会場 (会議場A2)

[OI-3-2] 学童期自閉スペクトラム症児の睡眠覚醒リズムと感覚特性の関連性

近藤 優樹1, 土屋 謙仕2, 松下 雅子2, 外里 冨佐江2 (1.医療法人公生会 竹重病院リハビリテーション部, 2.長野保健医療大学保健科学部)

【はじめに】
睡眠の問題は,衝動性や注意機能,情動調節の問題を引き起こしやすいと言われている(三星喬史,2013).自閉スペクトラム症(ASD)児では,睡眠覚醒リズムの問題が40〜83%でみられ,ASDの症状特性の悪化につながると報告されている(Whelan S, 2022).また,ASD児の非定型な感覚処理は,不安や自傷行動,問題行動,睡眠障害などの問題につながる(高橋秀俊,2018).近年の研究では,睡眠覚醒リズムと感覚特性の関連が徐々に明らかになっている.しかし,睡眠覚醒リズムの分析には,主に保護者の回答による質問紙などの主観的指標を用いており,活動量計などの客観的指標で睡眠覚醒リズム分析をおこなっている報告は少ない.特に,学童期を対象とした調査はない.
【目的】
本研究は,活動量計を用いて,学童期ASD児の睡眠覚醒リズムと感覚特性との関連性を明らかにすることを目的とする.
【対象・方法】
A病院の小児科外来に通院中でASDと診断された6〜9歳の男女児を対象とした.その他の神経発達症群や知的障害の合併診断を持つ児童,睡眠障害で治療中の児童などは除外した.
測定には,「睡眠覚醒リズム」の客観的指標として「活動量計(MTN-220,アコーズ社製)・解析ソフトSleepSign-Act」を使用し,14日以上の睡眠時の活動量を計測して睡眠変数を算出した.感覚特性の測定には「日本版感覚プロファイル」を用いた.
統計は,活動量による「睡眠変数」と「感覚プロファイル」の下位項目との分析にSpearmanの順位相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮】
本研究は,長野保健医療大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2021-2).
【結果】
分析対象は19例で,男児13例,女児6例であった.平均年齢は7.6±0.9歳であった.感覚プロファイルの結果,全てのスコアの平均値は分類システムで「高い」となり,感覚特性に偏りがあった.睡眠覚醒リズムの結果は定型発達児のデータ(Souders MC, 2009)と比較して総睡眠時間の短縮,入眠潜時・中途覚醒時間の延長,睡眠効率の低さが認められた.
相関分析の結果,睡眠変数の「覚醒持続時間の平均」と感覚プロファイルの「口腔感覚」で有意な相関が認められた(rs= .698,p= .006).さらに,感覚プロファイルの「口腔感覚の低閾値スコア」と睡眠変数の「中途覚醒時間」(rs= .678,p= .002),「睡眠効率」(rs= -.627,p= .008),「覚醒持続時間の平均」(rs= .825,p< .001)で有意な相関が認められた.しかし,その他の「睡眠変数」と象限スコアを含む「感覚プロファイルの各スコア」に有意な相関は認められなかった.
【考察】
中途覚醒時間などと口腔感覚の低閾値スコアに関連がみられた.口腔感覚の質問項目は味覚だけでなく触覚や嗅覚の内容も含まれており,これらの感覚が睡眠覚醒リズムに影響していることが示唆された.ASD児の睡眠覚醒リズムと感覚特性の関連性の研究では,指標や結果に一貫性がないため,今後はASD児の学童期以降の調査や客観的な感覚閾値の測定を考慮した研究が期待される.