[OI-3-4] 知的障害区分の特別支援学校に通う児童生徒の食行動に関する調査
【はじめに】作業療法士は外部専門家として特別支援学校等を巡回している.知的障害区分の特別支援学校には知的障害,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; 以下ASD),ダウン症等の児童生徒が在籍し,ASDが50%程度を占める(西村ら,2017).先行研究において,ASD児とダウン症児では食の問題が異なること(田辺ら,2012),小・中・高等部によって教員が気になる食べ方が異なること(藤井ら,2018)が示されている.また,外部専門家からの助言を受ける機会は少なく,学校と家庭間で食環境を整えていると報告されている(中嶋,2019).そこで,知的障害区分の特別支援学校に通う児童生徒の食行動を調査し,診断および学部による比較を行い,作業療法士が支援に関わるための示唆を得ることを目的とした.本研究は研究倫理審査委員会の承認および学校長の許可を得て実施した.
【方法】対象:知的障害区分のA特別支援学校(小学部,中学部,高等部)に通う児童生徒および保護者.データ収集方法:各クラスの担任から児童生徒の保護者に無記名式質問紙を配布した.同意が得られた場合にのみ回答し,厳封した状態で学校内の回収ボックスへ入れてもらい回収した.質問紙内容:基本情報シート(学年,年齢,診断名,療育手帳の有無等),ASD食行動質問紙(以下,ASD-MBQ).ASD-MBQは偏食,不器用・マナー,食への関心・集中,口腔機能,過食の5領域42項目で構成される.行動の頻度について1点(ない)~5点(いつも)の5件法で回答し,総点および各領域得点は平均値を用いて1~5点の範囲で算出され,食行動の問題が多いと得点が高い.分析:ASD-MBQ得点について(1)診断;ASD/染色体異常症/その他,(2)学部;小学部/中学部/高等部の3群比較を行った.3群の比率の差の検定にはχ2検定を用いた.総点および各領域得点についてKruskal-Wallis検定を行い,Post testはDunn-Bonferroni法を用いた.有意水準は5%未満とし,統計解析にはSPSS Statistics Ver.28を使用した.
【結果】415部配布し250部回収した(回収率60.2%).分析対象は247名(男児158名,女児89名,年齢平均13.5±3.4,療育手帳有241名)で,3群の比率は有意差を認めなかった(p=.443).(1)診断による比較:以下[ASD/染色体異常症/その他]の結果を示す.人数は[124名/ 39名/84名].ASD-MBQ総点は[2.0点/ 1.8点/1.4点]となり,その他が有意に低かった(p<.01).偏食[2.0点/1.6点/1.4点]はASD群が有意に高く(p<.05),偏食以外ではASDと染色体異常症が類似し,その他が有意に低かった(p<.05).(2)学部よる比較:以下[小学部/中学部/高等部]の結果を示す.人数は[64名/52名/131名].ASD-MBQ総点は[2.1点/1.6点/1.7点]となり,小学部が有意に高かった(p<.01).偏食[2.0点/ 1.4点/1.7点]は中学部が有意に低く(p<.05),不器用・マナー[2.5点/1.7点/1.6点]および食への関心・集中[1.8点/1.4点/1.5点]は小学部が有意に高く(p<.01),口腔機能[2.3点/2.1点/2.0点]および過食[2.1点/2.1点/1.8点]は3群で有意差を認めなかった.
【考察】(1)診断による比較:ASD/染色体異常症はその他と比較し食行動の問題が多い結果となった.ASDと染色体異常症は類似した食行動の問題があるが,偏食についてはASDの方が問題となっていることが示唆され,先行研究(田辺ら,2012)と異なる結果が示された.(2)学部による比較:食行動全体として小学部で問題が多いことが明らかとなり先行研究(藤井ら,2018)と同様であった.しかし,不器用・マナー/食への関心・集中は学部が上がると問題が減るが,口腔機能/過食は問題が継続することが示唆された.今後も検討を重ね,支援につなげていきたい.
【方法】対象:知的障害区分のA特別支援学校(小学部,中学部,高等部)に通う児童生徒および保護者.データ収集方法:各クラスの担任から児童生徒の保護者に無記名式質問紙を配布した.同意が得られた場合にのみ回答し,厳封した状態で学校内の回収ボックスへ入れてもらい回収した.質問紙内容:基本情報シート(学年,年齢,診断名,療育手帳の有無等),ASD食行動質問紙(以下,ASD-MBQ).ASD-MBQは偏食,不器用・マナー,食への関心・集中,口腔機能,過食の5領域42項目で構成される.行動の頻度について1点(ない)~5点(いつも)の5件法で回答し,総点および各領域得点は平均値を用いて1~5点の範囲で算出され,食行動の問題が多いと得点が高い.分析:ASD-MBQ得点について(1)診断;ASD/染色体異常症/その他,(2)学部;小学部/中学部/高等部の3群比較を行った.3群の比率の差の検定にはχ2検定を用いた.総点および各領域得点についてKruskal-Wallis検定を行い,Post testはDunn-Bonferroni法を用いた.有意水準は5%未満とし,統計解析にはSPSS Statistics Ver.28を使用した.
【結果】415部配布し250部回収した(回収率60.2%).分析対象は247名(男児158名,女児89名,年齢平均13.5±3.4,療育手帳有241名)で,3群の比率は有意差を認めなかった(p=.443).(1)診断による比較:以下[ASD/染色体異常症/その他]の結果を示す.人数は[124名/ 39名/84名].ASD-MBQ総点は[2.0点/ 1.8点/1.4点]となり,その他が有意に低かった(p<.01).偏食[2.0点/1.6点/1.4点]はASD群が有意に高く(p<.05),偏食以外ではASDと染色体異常症が類似し,その他が有意に低かった(p<.05).(2)学部よる比較:以下[小学部/中学部/高等部]の結果を示す.人数は[64名/52名/131名].ASD-MBQ総点は[2.1点/1.6点/1.7点]となり,小学部が有意に高かった(p<.01).偏食[2.0点/ 1.4点/1.7点]は中学部が有意に低く(p<.05),不器用・マナー[2.5点/1.7点/1.6点]および食への関心・集中[1.8点/1.4点/1.5点]は小学部が有意に高く(p<.01),口腔機能[2.3点/2.1点/2.0点]および過食[2.1点/2.1点/1.8点]は3群で有意差を認めなかった.
【考察】(1)診断による比較:ASD/染色体異常症はその他と比較し食行動の問題が多い結果となった.ASDと染色体異常症は類似した食行動の問題があるが,偏食についてはASDの方が問題となっていることが示唆され,先行研究(田辺ら,2012)と異なる結果が示された.(2)学部による比較:食行動全体として小学部で問題が多いことが明らかとなり先行研究(藤井ら,2018)と同様であった.しかし,不器用・マナー/食への関心・集中は学部が上がると問題が減るが,口腔機能/過食は問題が継続することが示唆された.今後も検討を重ね,支援につなげていきたい.