[OI-4-3] 重症心身障害者に対するギャッチアップが姿勢の崩れと体圧分布に及ぼす影響
【はじめに】
重症心身障害者(以下,重症者)は,成長に伴って脊柱や四肢の変形拘縮を有するものが多くなる.臥位姿勢も自力での安定保持が困難なものが多く,24時間を通じた姿勢管理が非常に重要と考えられている.
姿勢管理の方法の一つにギャッチアップ姿勢がある.この姿勢は,呼吸の促通,胃食道逆流の予防などのメリットがある一方で,身体のずれによる仙骨部の褥瘡リスクの向上,腰椎後弯の助長などのデメリットも報告されている.しかし,重症者において姿勢が崩れやすい姿勢特徴や,保持に適したベッド角度については検討されておらず,適切なギャッチアップ姿勢について客観的に分析した研究はない.
本研究の目的は,ギャッチアップ時の体圧移行の特徴を体圧の測定によって調査し,ギャッチアップ角度の増加に伴ってどのような姿勢変化を生じるのかを検討することである.なお,発表にあたって対象者の保護者に対して研究について説明し同意を得た.
【実験方法】
定型発達者(30代男性)1名と,重症者3名(GMFCS V,平均年齢43.3歳)を対象とした.体圧の測定には圧力分布測定装置FSA(タカノ株式会社)を使用した.被験者は姿勢保持用のクッションを頭・膝裏に配置して背臥位姿勢を保持した.クッションは被験者の通常アライメントの保持に適したサイズのものを選択した.実験姿勢は0°,30°挙上,45°挙上の3姿勢とし,1姿勢につき30分保持した.姿勢の変動と圧分布の変動を比較するために,測定場面の動画撮影を行なった.
体圧データは5回/秒の頻度で取得する設定とし,30〜100mmHgの範囲を分析対象とした.各姿勢保持の最後の5分間において,随意運動がなく特徴的な1フレームを選択して分析対象とした.体圧データから体部位別(頭部,体幹,殿部,足部)に圧データを抽出し,平均圧(mmHg),センシングエリア(以下,エリア)(cm2)を分析した.エリアのデータは0°を100%と換算して比較した.
【結果】
観察より,重症者2は体幹伸展に伴い,重症者3は体幹屈曲・側屈に伴い姿勢が崩れる様子が確認された.平均圧の比較からは,全被験者ともに角度挙上に伴って圧は増加する傾向がみられた.エリアの比較から,定型発達者では,角度挙上につれて体重移行部である臀部のエリアが拡大した(100%→183%→232%).重症者3名は30°挙上までは体重移行部のエリアが拡大するものの,そこをピークとして45°挙上ではエリアを広げられていなかった.崩れの少ない重症者1は全体のエリアは角度挙上に伴って拡大(100%→109%→115%)したが,30°挙上から45°挙上時における臀部のエリア増加はわずかであった(100%→140%→144%).崩れのあった重症者2・3では,30°挙上時に拡大したエリアが45°挙上時には狭くなっていた(重症者2:100%→219%→143%,重症者3:100%→207%→186%).
【考察】
定型発達者では,角度挙上につれて体重移行部のエリアが拡大した.これは,角度の増加に伴い一定の分散ができていることを反映していると考える.重症者では30°挙上までは安定して体重分散ができるが,45°挙上では体重移行がスムーズに行うことができず姿勢の崩れが生じやすくなったものと推測する.また,重症者1のように,姿勢が崩れなくとも,狭い範囲に高圧部位が増加することで褥瘡リスクが高くなり危険な姿勢になる可能性がある.このように,反り返りや側屈を有する対象者が崩れやすいこと,観察からは崩れていなくても局所的な圧分布があることが示唆された.これは,ギャッチアップの適応者や角度設定を行うことに寄与すると考えている.
重症心身障害者(以下,重症者)は,成長に伴って脊柱や四肢の変形拘縮を有するものが多くなる.臥位姿勢も自力での安定保持が困難なものが多く,24時間を通じた姿勢管理が非常に重要と考えられている.
姿勢管理の方法の一つにギャッチアップ姿勢がある.この姿勢は,呼吸の促通,胃食道逆流の予防などのメリットがある一方で,身体のずれによる仙骨部の褥瘡リスクの向上,腰椎後弯の助長などのデメリットも報告されている.しかし,重症者において姿勢が崩れやすい姿勢特徴や,保持に適したベッド角度については検討されておらず,適切なギャッチアップ姿勢について客観的に分析した研究はない.
本研究の目的は,ギャッチアップ時の体圧移行の特徴を体圧の測定によって調査し,ギャッチアップ角度の増加に伴ってどのような姿勢変化を生じるのかを検討することである.なお,発表にあたって対象者の保護者に対して研究について説明し同意を得た.
【実験方法】
定型発達者(30代男性)1名と,重症者3名(GMFCS V,平均年齢43.3歳)を対象とした.体圧の測定には圧力分布測定装置FSA(タカノ株式会社)を使用した.被験者は姿勢保持用のクッションを頭・膝裏に配置して背臥位姿勢を保持した.クッションは被験者の通常アライメントの保持に適したサイズのものを選択した.実験姿勢は0°,30°挙上,45°挙上の3姿勢とし,1姿勢につき30分保持した.姿勢の変動と圧分布の変動を比較するために,測定場面の動画撮影を行なった.
体圧データは5回/秒の頻度で取得する設定とし,30〜100mmHgの範囲を分析対象とした.各姿勢保持の最後の5分間において,随意運動がなく特徴的な1フレームを選択して分析対象とした.体圧データから体部位別(頭部,体幹,殿部,足部)に圧データを抽出し,平均圧(mmHg),センシングエリア(以下,エリア)(cm2)を分析した.エリアのデータは0°を100%と換算して比較した.
【結果】
観察より,重症者2は体幹伸展に伴い,重症者3は体幹屈曲・側屈に伴い姿勢が崩れる様子が確認された.平均圧の比較からは,全被験者ともに角度挙上に伴って圧は増加する傾向がみられた.エリアの比較から,定型発達者では,角度挙上につれて体重移行部である臀部のエリアが拡大した(100%→183%→232%).重症者3名は30°挙上までは体重移行部のエリアが拡大するものの,そこをピークとして45°挙上ではエリアを広げられていなかった.崩れの少ない重症者1は全体のエリアは角度挙上に伴って拡大(100%→109%→115%)したが,30°挙上から45°挙上時における臀部のエリア増加はわずかであった(100%→140%→144%).崩れのあった重症者2・3では,30°挙上時に拡大したエリアが45°挙上時には狭くなっていた(重症者2:100%→219%→143%,重症者3:100%→207%→186%).
【考察】
定型発達者では,角度挙上につれて体重移行部のエリアが拡大した.これは,角度の増加に伴い一定の分散ができていることを反映していると考える.重症者では30°挙上までは安定して体重分散ができるが,45°挙上では体重移行がスムーズに行うことができず姿勢の崩れが生じやすくなったものと推測する.また,重症者1のように,姿勢が崩れなくとも,狭い範囲に高圧部位が増加することで褥瘡リスクが高くなり危険な姿勢になる可能性がある.このように,反り返りや側屈を有する対象者が崩れやすいこと,観察からは崩れていなくても局所的な圧分布があることが示唆された.これは,ギャッチアップの適応者や角度設定を行うことに寄与すると考えている.