[OI-5-1] 小集団療育を通し登校が限局的な児の対人トラブル・登校しぶりが改善した一症例
【はじめに】
不登校児は年々増加している.不登校の背景には発達障害や精神疾患が関与していることが多く,登校転帰には発達特性の把握と教育的・心理的支援が有用であると報告されている(鈴木,2017).今回,限局的な登校となっている児を対象とした小集団の療育を通して,症例の他者との関わりが変化し,学校においても他児とのトラブルや登校しぶりの減少に繋がったため報告する.本報告は症例及び保護者の同意を得ている.
【症例紹介】
10歳男児,ADHD.小学2年で登校しぶり,不登校を呈し当事業所の利用を開始した.その後は校内の適応指導教室への登校を続けている.学校では他児との積極的な関わりはなく,手が出る,暴れる等の行動からトラブルになりやすい.
【作業療法評価】
初対面の相手でも緊張なく関わる.率先して意見を述べることができる一方で,想像性の乏しさから自身の思いと異なる他者の考えを認めにくい.気持ちを穏やかに言葉で表現することが難しく不本意なことがあると手が出てしまう.身体を大きく動かす遊びを好み,静止することが必要な活動場面で静止できない,手足を常に動かす等の感覚探求行動があった.
【介入と結果】
第1期:症例の好む運動遊びを通し信頼関係構築を図り,徐々に他児との関わりへと広げた.目標を他児の話を最後まで聞く,感情コントロールをしつつ楽しく過ごせることとした.活動は,症例の得意な運動や積極的な意見の表出を活かすことのできる内容に工夫した.チーム活動もはじめは職員と組み,段階的に子ども同士で組むように変化をもたせた.徐々に相手の様子に注目したり他児を応援したりできるようになり,手が出ることもなくなった.しかし,遊びを一方的に中断する,言葉や態度で苛立ちを表すことは依然としてみられた.
第2期:他児への積極的なコミュニケーションが増え,活動時にリーダーシップを発揮することが増えた.そこで目標を感情的にならず思いを伝えること,感情的になった際は自身でクールダウンできること,自他の違いに気づき相手を受け入れることに変更した.介入として,言葉での気持ちの表出の支援や,感情的になった際は別室に行く・好みの感覚刺激を提供するなど児が気持ちを落ち着けられる手段の模索をした.その結果,穏やかに思いを表出できることが増え,活動に取り組まない他児に怒ることなく言葉で気持ちを伝えたり,不本意なことがあった際は静かに離れて落ち着こうとしたりする様子が見られるようになった.また,他児と意見が相違した際は職員と話し,折り合いの付け方を検討する中で,一方的だった関わりから他児の気持ちを意識した関わりへと変化し,活動時に意見を取りまとめる役割を担うことが増えた.現在は学校で友人と遊ぶようになり,登校を渋るもことなく,家族の付き添いを要さずに自力で適応指導教室に登校している.
【考察】
症例は小集団療育の中で他児と関わりを持ち,自身の能力に合った集団中の役割を経験したことで対人スキルが向上した.グループ療育運営の留意点としてスモールステップの原則,失敗体験の積極的回避が重要とされている(中島,2009).今回,児の特性を踏まえ目標と活動を段階的にステップアップさせていったことは自信に繋がり,リーダーシップの発揮を促す上で有用であったと考える.話し合いを進行する上で必然的に他者の考えを汲む必要があったことが,感情コントロールや他者との関わり方といった社会性の向上に寄与し,学校におけるトラブルや登校しぶりの減少等の変化に繋がったと推察する.
不登校児は年々増加している.不登校の背景には発達障害や精神疾患が関与していることが多く,登校転帰には発達特性の把握と教育的・心理的支援が有用であると報告されている(鈴木,2017).今回,限局的な登校となっている児を対象とした小集団の療育を通して,症例の他者との関わりが変化し,学校においても他児とのトラブルや登校しぶりの減少に繋がったため報告する.本報告は症例及び保護者の同意を得ている.
【症例紹介】
10歳男児,ADHD.小学2年で登校しぶり,不登校を呈し当事業所の利用を開始した.その後は校内の適応指導教室への登校を続けている.学校では他児との積極的な関わりはなく,手が出る,暴れる等の行動からトラブルになりやすい.
【作業療法評価】
初対面の相手でも緊張なく関わる.率先して意見を述べることができる一方で,想像性の乏しさから自身の思いと異なる他者の考えを認めにくい.気持ちを穏やかに言葉で表現することが難しく不本意なことがあると手が出てしまう.身体を大きく動かす遊びを好み,静止することが必要な活動場面で静止できない,手足を常に動かす等の感覚探求行動があった.
【介入と結果】
第1期:症例の好む運動遊びを通し信頼関係構築を図り,徐々に他児との関わりへと広げた.目標を他児の話を最後まで聞く,感情コントロールをしつつ楽しく過ごせることとした.活動は,症例の得意な運動や積極的な意見の表出を活かすことのできる内容に工夫した.チーム活動もはじめは職員と組み,段階的に子ども同士で組むように変化をもたせた.徐々に相手の様子に注目したり他児を応援したりできるようになり,手が出ることもなくなった.しかし,遊びを一方的に中断する,言葉や態度で苛立ちを表すことは依然としてみられた.
第2期:他児への積極的なコミュニケーションが増え,活動時にリーダーシップを発揮することが増えた.そこで目標を感情的にならず思いを伝えること,感情的になった際は自身でクールダウンできること,自他の違いに気づき相手を受け入れることに変更した.介入として,言葉での気持ちの表出の支援や,感情的になった際は別室に行く・好みの感覚刺激を提供するなど児が気持ちを落ち着けられる手段の模索をした.その結果,穏やかに思いを表出できることが増え,活動に取り組まない他児に怒ることなく言葉で気持ちを伝えたり,不本意なことがあった際は静かに離れて落ち着こうとしたりする様子が見られるようになった.また,他児と意見が相違した際は職員と話し,折り合いの付け方を検討する中で,一方的だった関わりから他児の気持ちを意識した関わりへと変化し,活動時に意見を取りまとめる役割を担うことが増えた.現在は学校で友人と遊ぶようになり,登校を渋るもことなく,家族の付き添いを要さずに自力で適応指導教室に登校している.
【考察】
症例は小集団療育の中で他児と関わりを持ち,自身の能力に合った集団中の役割を経験したことで対人スキルが向上した.グループ療育運営の留意点としてスモールステップの原則,失敗体験の積極的回避が重要とされている(中島,2009).今回,児の特性を踏まえ目標と活動を段階的にステップアップさせていったことは自信に繋がり,リーダーシップの発揮を促す上で有用であったと考える.話し合いを進行する上で必然的に他者の考えを汲む必要があったことが,感情コントロールや他者との関わり方といった社会性の向上に寄与し,学校におけるトラブルや登校しぶりの減少等の変化に繋がったと推察する.