[OI-5-5] 学齢期発達障がい児におけるDevelopmental Eye Movement testの特徴
【はじめに】 発達障がい児(疑いを含む)の30%に,衝動性眼球運動の問題を認めたとの報告がある(三浦,2009).作業療法を処方される発達障がい児の中には,板書が苦手,ボールを目で追えないなど,主訴の背景に眼球運動の問題のある児が一定数存在する.しかし,作業療法が処方される発達障がい児の中にどれほどの割合で眼球運動の問題が認められるのかは明らかになっていない.そこで,本研究では,定量的な読みにおける眼球運動の評価であるDevelopmental Eye Movement test(以下,DEM)を用い,読みにおける眼球運動の問題の出現率とその特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】1.対象:A病院発達センターにて2017年4月から2021年6月に作業療法を処方された585名のうち,①発達障害に該当する診断がある,②6〜10歳,③知的障害の併存がない,④DEMの初回評価データがあることを包含基準とした.2.調査項目:DEMは,読みに関連する眼球運動の評価で,数字を音読させ,衝動性眼球運動の速度と正確性を測定する検査である.TestA・B(等間隔の数字を縦方向に読む課題),TestC(文字間隔が広く不等間隔の数字列を横方向に読む眼球運動の負荷が高い課題)で構成されている.縦読み調整(TestA・Bの合計秒数),横読み調整(TestCの間違い数を勘案し調整した秒数),DEM比率(横読み調整/縦読み調整,不等間隔の数字を呼称する妨げにならないほど眼球運動が正確であれば1に近い値),間違い総数が算出される.3.分析1)出現率:定型発達児(玉井ら,2010)の-1.5SD以下のスコアおよび遂行不可を「問題あり」とし,その割合を算出した.2)特徴:指標間(縦読み調整と横読み調整)の比較,および診断の有無による比較にはχ2検定を用いた.統計解析にはIBM SPSS Statistics25を用いて,有意水準を5%未満とした.なお,本研究は研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】1.対象:分析対象者は207名で,平均月齢は97.6±15.3ヶ月,男性81.2%,女性19.8%,IQ平均95.4±13.8であった.診断は,自閉性スペクトラム症 153名,注意欠如・多動症103名,限局性学習症24名,うち発達障害の重複が63名であった.2.DEM:1)出現率(「問題あり」の割合」は,縦読み調整では25.1%,横読み調整では47.3%,DEM比率では44.9%,間違い総数では51.5%であり,すべての指標において,定型発達児より問題のある児が多かった(P<.001).2)特徴:縦読み調整よりも,横読み調整で問題ありと判定された者が多かった(p<0.001).発達障害の各診断の有無による比較では,ASDで横読み調整に問題のある者が少なく(p=0.02),ADHDで間違い総数に問題のある者が多かった(p=0.04).
【考察】 作業療法を処方された6〜10歳の発達障がい児207名中,44.9%に衝動性眼球運動の正確さをみるDEM比率に問題があった.これは,読み書きに困難を抱える児童の50%に問題があったとする先行研究(後藤ら,2010)に近い割合である.すなわち,発達性協調運動症を併存しやすい発達障がい児では,読みおける眼球運動の問題を有する割合が高く,初期評価時に主訴の聞き取りとともにスクリーニング評価が必要だと考える.また,読みにおける眼球運動の特徴として,縦読み調整よりも衝動性眼球運動の負荷の高い横読み調整に問題のある児が多いことが明らかとなった.
【方法】1.対象:A病院発達センターにて2017年4月から2021年6月に作業療法を処方された585名のうち,①発達障害に該当する診断がある,②6〜10歳,③知的障害の併存がない,④DEMの初回評価データがあることを包含基準とした.2.調査項目:DEMは,読みに関連する眼球運動の評価で,数字を音読させ,衝動性眼球運動の速度と正確性を測定する検査である.TestA・B(等間隔の数字を縦方向に読む課題),TestC(文字間隔が広く不等間隔の数字列を横方向に読む眼球運動の負荷が高い課題)で構成されている.縦読み調整(TestA・Bの合計秒数),横読み調整(TestCの間違い数を勘案し調整した秒数),DEM比率(横読み調整/縦読み調整,不等間隔の数字を呼称する妨げにならないほど眼球運動が正確であれば1に近い値),間違い総数が算出される.3.分析1)出現率:定型発達児(玉井ら,2010)の-1.5SD以下のスコアおよび遂行不可を「問題あり」とし,その割合を算出した.2)特徴:指標間(縦読み調整と横読み調整)の比較,および診断の有無による比較にはχ2検定を用いた.統計解析にはIBM SPSS Statistics25を用いて,有意水準を5%未満とした.なお,本研究は研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】1.対象:分析対象者は207名で,平均月齢は97.6±15.3ヶ月,男性81.2%,女性19.8%,IQ平均95.4±13.8であった.診断は,自閉性スペクトラム症 153名,注意欠如・多動症103名,限局性学習症24名,うち発達障害の重複が63名であった.2.DEM:1)出現率(「問題あり」の割合」は,縦読み調整では25.1%,横読み調整では47.3%,DEM比率では44.9%,間違い総数では51.5%であり,すべての指標において,定型発達児より問題のある児が多かった(P<.001).2)特徴:縦読み調整よりも,横読み調整で問題ありと判定された者が多かった(p<0.001).発達障害の各診断の有無による比較では,ASDで横読み調整に問題のある者が少なく(p=0.02),ADHDで間違い総数に問題のある者が多かった(p=0.04).
【考察】 作業療法を処方された6〜10歳の発達障がい児207名中,44.9%に衝動性眼球運動の正確さをみるDEM比率に問題があった.これは,読み書きに困難を抱える児童の50%に問題があったとする先行研究(後藤ら,2010)に近い割合である.すなわち,発達性協調運動症を併存しやすい発達障がい児では,読みおける眼球運動の問題を有する割合が高く,初期評価時に主訴の聞き取りとともにスクリーニング評価が必要だと考える.また,読みにおける眼球運動の特徴として,縦読み調整よりも衝動性眼球運動の負荷の高い横読み調整に問題のある児が多いことが明らかとなった.