第57回日本作業療法学会

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一般演題

高齢期

[OJ-1] 一般演題:高齢期 1

Fri. Nov 10, 2023 1:20 PM - 2:20 PM 第6会場 (会議場A2)

[OJ-1-3] 主観的記憶障害を有する地域在住高齢者の高次生活機能の特徴

赤崎 義彦1, 丸田 道雄2, 下木原 俊3, 日高 雄磨4, 田平 隆行5 (1.垂水市立医療センター 垂水中央病院, 2.長崎大学生命医科学域(保健学系), 3.日本学術振興会 特別研究員(DC2), 4.医療法人三州会 大勝病院, 5.鹿児島大学医学部保健学科作業療法学専攻)

【背景と目的】
主観的記憶障害(以下:SMC)を有する高齢者は,IADLのような日常生活における応用的な能力が低下しやすいことが報告されている(Abdulrahman H, 2022; Cordier R, 2019).岩佐らが開発したJST版活動能力指標は,日本の地域在住高齢者が活動的な日常生活を送るために必要な能力を評価するために開発された尺度であり,これまでの研究で,地域在住高齢者のIADLよりさらに高度な生活機能を評価するために使用されている(Wada A, 2021).つまり,SMCを有する地域在住高齢者は高次生活機能が低下しやすい可能性が考えられる.そこで本研究は,SMCを有する地域在住高齢者の高次生活機能の特徴を横断的に調査することを目的とした.
【方法】
地域コホート研究(垂水研究)の2018年度および2019年度における参加者1499名のうち,認知機能の低下がない65歳以上の高齢者540名(平均年齢73.2±5.9歳,女性64.9%)を対象とした.なお,脳卒中・パーキンソン病・うつ病・認知症の既往のある者やデータ欠損者は除外した.SMCは,「あなたは記憶に関して問題を抱えていますか」の質問に対し肯定的な回答があった者をSMCと判定した.高次生活機能は,JST版活動能力指標を用いて評価した.「新機器利用」「情報収集」「生活マネジメント」「社会参加」の4領域からなり,それぞれの領域の得点が高いほど,活動能力が高いとされている(Iwasa H, 2018).先行研究(Wada A, 2021)を参考に対象者の総得点と各領域の得点の下位25%以下の得点の者を高次生活機能低下と定義した.その後,SMC群と健常群の比較を行うため,カテゴリ変数はχ²検定と残差分析,連続変数は対応のないt検定を用いて解析を行った.更に,SMCと高次生活機能との関連を明らかにするため,従属変数にJST版活動能力指標の総得点と各領域の低下の有無を,独立変数にSMCを設定,人口統計学的変数と高次生活機能に影響を与える項目を共変量として調整し,二項ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSS ver.28を用い,有意水準は5%未満とした.なお,本研究は鹿児島大学疫学研究等倫理審査委員会の承認を得て実施し,参加者全員からインフォームド・コンセントを得ている.
【結果】
本研究におけるSMCの有症率は21.7%(117人)であった.SMC群は健常群と比較し,「JST版活動能力指標の総得点(p = 0.005)」「情報収集(p = 0.014)」「生活マネジメント(p = 0.007)」が有意に低くなっていた.また,共変量を調整した後の二項ロジスティック回帰分析では,SMCとJST版活動能力指標の総得点(OR:1.74,95%CI:1.00-3.02,p = 0.049),生活マネジメント(OR:1.93,95%CI:1.07-3.49,p = 0.013)において,有意な関連を認めた.
【考察】
本研究において,SMCを有する地域在住高齢者は健常高齢者と比較し,高次生活機能の低下を認め,特に,情報収集,生活マネジメントが低下していた.さらに,SMCと全般的な高次生活機能,生活マネジメントに有意な関連が認められた.生活マネジメントは日常生活における工夫や管理の要素が含まれ,服薬や金銭管理のようなIADLの低下に影響を及ぼす可能性がある.SMCを有する地域在住高齢者が活動的な日常生活を送るために,高次生活機能の特徴を理解し支援することが重要であると考える.