[OJ-2-3] 回復期リハビリテーション病棟における認知症患者のFIM effectivenessに関連する要因の検討
【はじめに】
回復期リハビリテーション病棟(以下, 回リハ病棟)では日常生活活動(以下, ADL)の改善が求められているが, 認知症の合併がADLの改善を阻害することが報告されている(山上ら, 2018).その一方で, 認知症を合併してもADLが改善する報告もあり(Carpenter CI, et al. 2006), 認知症患者においてADLの改善に影響を及ぼす要因を明らかにすることは重要である.
【目的】
本研究の目的は, 回復期リハビリテーション病棟に入院する認知症患者のADL改善の要因を明らかにすることである.
【方法】
研究デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象者は2020年4月から2022年10月までに大阪府内の回復期リハビリテーション病院に入院した患者のうちDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition(DSM-5)にて, 認知症と診断された者とした.除外基準は, 主疾患または併存疾患の影響により覚醒レベルが著しく低下した者, 主治医より活動・離床制限が必要と判断された者, 評価1週間以内に抗精神病薬・抗うつ薬・睡眠薬を新たに服用開始した者, 入院中に転院・死亡した者, FIM利得がマイナスとなった者とした.目的変数となるADL改善の指標は, FIM effectiveness=FIM利得/(126点-入院時FIM)とした.説明変数は, 年齢, 性別, 入院に至った疾患, Body mass index(BMI), チャールソン併存疾患指数(CCI), Mini-Mental State Examination-Japanese(MMSE-J), Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH), Pittsburgh rehabilitation participation scale(PRPS), Functional Balance Scale(FBS), 入院時FIMの総得点とした.説明変数の評価項目は回リハ病棟入院1ヶ月以内の初期評価として実施した.統計解析として, 多重共線性を避けるため, 説明変数間で相関を確認し強い相関(r≧0.8)が認められた変数の一方を削除し, さらに, 目的変数に対して単回帰分析を実施し, p<0.2の変数を独立変数として残し, stepwise法による重回帰分析を行った.統計解析ソフトはSPSS ver27.0を用いた.
【倫理的配慮】
本研究は大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科の倫理委員会の承認(2021-214)を得ている.
【結果】
分析対象は77名であった.対象者の入院に至った疾患としては脳血管疾患15人, 運動器疾患33人, 廃用症候群29人であった.FIM effectivenessに影響を与える因子として, 入院時FIMの総得点(β=0.37, p=0.002), MMSE(β=0.35, p=0.004)の順に有意な関連因子であった.得られた決定係数はR2=0.41であった.
【考察】
回リハ病棟における認知症患者のFIM effectivenessは, 入院時FIMの総得点が高いこと, MMSEの得点が高いことと関連していた.入院時FIMの総得点が高いことは, 脳卒中患者においてもFIMの改善因子になることが報告されており(徳永, 2020), 運動器疾患や廃用症候群などの疾患を含んだ本研究においても同様の結果となった.認知機能とADLとの間には先行研究にて認知機能が高いほど, ADLの自立度が高くなることが報告(田中ら, 2014)されていることから, 回リハ病棟においても有意な関連因子であったと考える.
回復期リハビリテーション病棟(以下, 回リハ病棟)では日常生活活動(以下, ADL)の改善が求められているが, 認知症の合併がADLの改善を阻害することが報告されている(山上ら, 2018).その一方で, 認知症を合併してもADLが改善する報告もあり(Carpenter CI, et al. 2006), 認知症患者においてADLの改善に影響を及ぼす要因を明らかにすることは重要である.
【目的】
本研究の目的は, 回復期リハビリテーション病棟に入院する認知症患者のADL改善の要因を明らかにすることである.
【方法】
研究デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象者は2020年4月から2022年10月までに大阪府内の回復期リハビリテーション病院に入院した患者のうちDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition(DSM-5)にて, 認知症と診断された者とした.除外基準は, 主疾患または併存疾患の影響により覚醒レベルが著しく低下した者, 主治医より活動・離床制限が必要と判断された者, 評価1週間以内に抗精神病薬・抗うつ薬・睡眠薬を新たに服用開始した者, 入院中に転院・死亡した者, FIM利得がマイナスとなった者とした.目的変数となるADL改善の指標は, FIM effectiveness=FIM利得/(126点-入院時FIM)とした.説明変数は, 年齢, 性別, 入院に至った疾患, Body mass index(BMI), チャールソン併存疾患指数(CCI), Mini-Mental State Examination-Japanese(MMSE-J), Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH), Pittsburgh rehabilitation participation scale(PRPS), Functional Balance Scale(FBS), 入院時FIMの総得点とした.説明変数の評価項目は回リハ病棟入院1ヶ月以内の初期評価として実施した.統計解析として, 多重共線性を避けるため, 説明変数間で相関を確認し強い相関(r≧0.8)が認められた変数の一方を削除し, さらに, 目的変数に対して単回帰分析を実施し, p<0.2の変数を独立変数として残し, stepwise法による重回帰分析を行った.統計解析ソフトはSPSS ver27.0を用いた.
【倫理的配慮】
本研究は大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科の倫理委員会の承認(2021-214)を得ている.
【結果】
分析対象は77名であった.対象者の入院に至った疾患としては脳血管疾患15人, 運動器疾患33人, 廃用症候群29人であった.FIM effectivenessに影響を与える因子として, 入院時FIMの総得点(β=0.37, p=0.002), MMSE(β=0.35, p=0.004)の順に有意な関連因子であった.得られた決定係数はR2=0.41であった.
【考察】
回リハ病棟における認知症患者のFIM effectivenessは, 入院時FIMの総得点が高いこと, MMSEの得点が高いことと関連していた.入院時FIMの総得点が高いことは, 脳卒中患者においてもFIMの改善因子になることが報告されており(徳永, 2020), 運動器疾患や廃用症候群などの疾患を含んだ本研究においても同様の結果となった.認知機能とADLとの間には先行研究にて認知機能が高いほど, ADLの自立度が高くなることが報告(田中ら, 2014)されていることから, 回リハ病棟においても有意な関連因子であったと考える.