[OJ-3-5] 楽しさを考慮した作業の提供により余暇活動が習慣化した廃用症候群の事例
【はじめに】
肺炎治療後廃用症候群による臥床傾向の患者に対して集団活動を提供して離床が習慣化した作業療法の報告はあるが,余暇活動が習慣化した報告はみられない.今回,肺炎治療後廃用症候群を呈し,白内障の出現で塗り絵ができず臥床傾向となった高齢者を担当した.そこで本報告の目的は,楽しさを考慮し編み物の過去・現在・未来に想いを広げる楽しさと達成感による楽しさの提供により,白内障でも編み物が習慣化するかを検討することである.尚,本報告は対象者に説明し同意を得ている.
【事例紹介】
A氏は80歳代女性で,診断名は肺炎治療後廃用症候群,腎不全,心不全である.A氏は「身の回りの事や料理がしたいけど無理ですよね」と自己効力感が低下しており,臥床傾向であった.そのため,作業質問紙から重要である塗り絵や編み物を提供したが臥床することが多かった.そこで,塗り絵の習慣化を目的として余暇活動の楽しさ評価法(以下,LAES)を実施し,塗り絵の達成感による楽しさに関わった結果,塗り絵が習慣化した.ところが,白内障が出現して塗り絵が見えなくなり再び臥床傾向となっていた.
【作業療法評価と治療方針および治療計画】
MMTは両下肢3,右上肢3,左上肢4であり,FIMは88点であり,運動項目62点(更衣(上下衣)と階段4点以外は5点),認知項目26点である.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は52/96点,作業への動機づけは8/16点,作業のパターンは7/16点,環境は8/16点であり,「目がかすんでいる」と臥床傾向であった.作業歴より,A氏は手元を見ないで編み物をしていたことから,白内障でも編み物は実施可能と考えた.ただし,編み物への動機づけが低下しているため,以前実施した編み物のLAESの結果を考慮し,過去・現在・未来に想いを広げる楽しさや達成感による楽しさを提供すると編み物の動機づけが高まり習慣化すると考え,これら2つの楽しさを考慮した編み物を提供した.
【介入経過】
作業療法では編み物の楽しさを思いだすという過去・現在・未来に想いを広げる楽しさを尋ねた後に編み物を開始し,編み物終了時にはその日の作品の達成度と努力を確認する達成感による楽しさを尋ね,楽しさを実感することで内発的動機づけによる編み物を重視した関わりを行った.その結果,A氏は手元が見えにくくても編み物の実施が可能であり,「この毛糸がなくなるまでやってみます」と語り,自発的に離床を希望するようになり編み物が習慣化した.また,「退院後も編み物は続けたい」との想いが表出された.
【結果】
MMTおよびFIMは変化ないが,MOHOSTは64/96点となり,作業への動機づけは13/16点,作業のパターンは12/16点,環境は10/16点と改善し,自己効力感や活動性が改善した.
【考察】
編み物が習慣化した理由は,過去の楽しさや未来に思いを広げる楽しさの表出が認められ,それらの楽しさが継続したことで手元が見えにくいなかでも実施可能となり,編み物の内発的動機づけが促進されたことで編み物への動機づけが改善し,自発的に離床できるようになったからであると考えた.本家(2016)は内発的動機づけに基づいた作業経験により自己効力感が向上し,困難も乗り越えることができると述べている.さらにA氏は,「退院後も編み物は続けたい」との想いを表出しており,編み物を継続する可能性を見出した.日谷ら(2014)はがんと脳卒中を併発した対象者が楽しいと感じる作業参加を通して,困難を乗り越える頑張る力を実感して今後の人生の可能性を見出した事例を報告している.編み物の詳細な楽しさの提供で編み物が習慣化したことで,困難を乗り越えて今後の人生でも編み物を実施する可能性をA氏自ら見出したと思われる.
肺炎治療後廃用症候群による臥床傾向の患者に対して集団活動を提供して離床が習慣化した作業療法の報告はあるが,余暇活動が習慣化した報告はみられない.今回,肺炎治療後廃用症候群を呈し,白内障の出現で塗り絵ができず臥床傾向となった高齢者を担当した.そこで本報告の目的は,楽しさを考慮し編み物の過去・現在・未来に想いを広げる楽しさと達成感による楽しさの提供により,白内障でも編み物が習慣化するかを検討することである.尚,本報告は対象者に説明し同意を得ている.
【事例紹介】
A氏は80歳代女性で,診断名は肺炎治療後廃用症候群,腎不全,心不全である.A氏は「身の回りの事や料理がしたいけど無理ですよね」と自己効力感が低下しており,臥床傾向であった.そのため,作業質問紙から重要である塗り絵や編み物を提供したが臥床することが多かった.そこで,塗り絵の習慣化を目的として余暇活動の楽しさ評価法(以下,LAES)を実施し,塗り絵の達成感による楽しさに関わった結果,塗り絵が習慣化した.ところが,白内障が出現して塗り絵が見えなくなり再び臥床傾向となっていた.
【作業療法評価と治療方針および治療計画】
MMTは両下肢3,右上肢3,左上肢4であり,FIMは88点であり,運動項目62点(更衣(上下衣)と階段4点以外は5点),認知項目26点である.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は52/96点,作業への動機づけは8/16点,作業のパターンは7/16点,環境は8/16点であり,「目がかすんでいる」と臥床傾向であった.作業歴より,A氏は手元を見ないで編み物をしていたことから,白内障でも編み物は実施可能と考えた.ただし,編み物への動機づけが低下しているため,以前実施した編み物のLAESの結果を考慮し,過去・現在・未来に想いを広げる楽しさや達成感による楽しさを提供すると編み物の動機づけが高まり習慣化すると考え,これら2つの楽しさを考慮した編み物を提供した.
【介入経過】
作業療法では編み物の楽しさを思いだすという過去・現在・未来に想いを広げる楽しさを尋ねた後に編み物を開始し,編み物終了時にはその日の作品の達成度と努力を確認する達成感による楽しさを尋ね,楽しさを実感することで内発的動機づけによる編み物を重視した関わりを行った.その結果,A氏は手元が見えにくくても編み物の実施が可能であり,「この毛糸がなくなるまでやってみます」と語り,自発的に離床を希望するようになり編み物が習慣化した.また,「退院後も編み物は続けたい」との想いが表出された.
【結果】
MMTおよびFIMは変化ないが,MOHOSTは64/96点となり,作業への動機づけは13/16点,作業のパターンは12/16点,環境は10/16点と改善し,自己効力感や活動性が改善した.
【考察】
編み物が習慣化した理由は,過去の楽しさや未来に思いを広げる楽しさの表出が認められ,それらの楽しさが継続したことで手元が見えにくいなかでも実施可能となり,編み物の内発的動機づけが促進されたことで編み物への動機づけが改善し,自発的に離床できるようになったからであると考えた.本家(2016)は内発的動機づけに基づいた作業経験により自己効力感が向上し,困難も乗り越えることができると述べている.さらにA氏は,「退院後も編み物は続けたい」との想いを表出しており,編み物を継続する可能性を見出した.日谷ら(2014)はがんと脳卒中を併発した対象者が楽しいと感じる作業参加を通して,困難を乗り越える頑張る力を実感して今後の人生の可能性を見出した事例を報告している.編み物の詳細な楽しさの提供で編み物が習慣化したことで,困難を乗り越えて今後の人生でも編み物を実施する可能性をA氏自ら見出したと思われる.