第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

高齢期

[OJ-4] 一般演題:高齢期 4

2023年11月12日(日) 08:30 〜 09:30 第6会場 (会議場A2)

[OJ-4-1] COVID-19(コロナ)禍において復職支援を行った通所リハビリテーションの一事例

西 聡太, 當利 賢一, 大久保 智明, 野尻 晋一 (介護老人保健施設清雅苑清雅苑リハビリテーション部)

目的
 今回,通所リハビリテーション(以下,通所リハ)においてワレンベルグ症候群を呈したA氏を担当する機会を得た.復職を目標とするA氏に対して,コロナ禍における工夫をもとに,多職種と連携して介入したため,考察を踏まえ報告する.
事例紹介
A氏は,ワレンベルグ症候群を呈した50歳代男性である.介護保険認定は,要介護4の認定を受け,訪問リハを週2回,通所介護を週3回利用していたが,復職を目的として,当事業所通所リハを週1回利用が追加となった.身体機能は,上下肢の著明な麻痺はなく,握力は右が25.4kg,左が33.5kgであった.利き手は右手で失調症の影響で右手の巧緻性が低下していた.TUGは,30.8秒,6分間歩行テストは,147.3mであった.FIMは117/126点で, FAIは8点, LSAは48.5点であった. A氏,家族ともに復職を望んでいるが,「会社への通勤が心配」と不安が聞かれた.そこで,A氏,家族,介護支援専門員,関連事業所とのリモートで会議を開催し,合意目標を「週5日一人で自動車を運転し通勤することができる」とした.倫理的配慮として,本人家族の承諾を得ている.
介入経過
通所リハ開始1週目より,有酸素運動,バランス練習,STによる嚥下練習を立案した.また,合意目標の共有と通所介護や自宅でも,自主練習が継続できるように通所介護の職員と妻へ連絡を行った.その結果,自主練習が定着した.6週目に自動車運転の再開に向けて,自動車運転教習への同行と評価を入院時に担当していた作業療法士に依頼した.その結果,片手で操作できるハンドルの改修を提案した.また,通勤に必要な運転練習を行うために,民間企業の自動車運転支援サービスを導入した.15週目に復職先と復職条件に関する1回目のリモート会議を実施し,身体状況と予後予測について,説明を行った.復職の条件は,通勤,パソコン操作ができることであった. 18週目に復職先と2回目のリモート会議を行った.復職練習の進捗状況を報告し,職場への訪問を依頼した. 20週目には,OTRと復職先に赴き職場の動線の確認,環境調整など情報を,職場の上司,人事課と共有した.企業側からは,「リモートで打ち合わせしていたので,大まかな想定ができていた.」と前向きな意見が聞かれた.通所リハ開始から21週目に,半日勤務で復職する事ができた.更に,24週目で全日勤務が可能となり,通所リハを終了することができた.その後,3か月後,1年後,2年後に状態確認と課題に対して助言を行った.
結果
身体機能としては, TUGが21.6秒に短縮し, 6分間歩行テストは270.6mに延長した. FAIは24点に向上した.また,外出する頻度も増えたことからLSAが63.5点に向上した.自動車運転に関しては,職場から自宅まで一人で運転が可能となった.介入から21週で半日勤務にて復職することができ,24週で全日勤務での就労が可能となった.通所介護,訪問リハ,通所リハを終了することができた.3か月後,1年後,2年後の状態確認では,新たな課題はなく,就業を継続できていた.
考察
今回,A氏は24週で復職が可能となった.復職支援は,多職種と連携した支援内容の調整と,家族・会社への情報提供から相互の理解を促すことが重要な課題である. コロナ禍では,他業種との交流が困難となり十分な連携ができにくい状況であったが,リハ会議や情報共有をWeb会議サービスを利用することで円滑に行うことができた.また,ADLの動作や復職に必要な課題についても,パソコンの画面を通して伝えることができたことで,具体的な心身機能をイメージしやすくなり,復職に対する理解を得ることができたのだと考える.今回,コロナ禍においても,対面で実施してきた介入を環境の変化に合わせて工夫していくことが活動参加の支援に重要であると考える.