[OJ-4-3] 地域在住認知症高齢者の認知機能低下に伴う家事能力(食後の片付け,生活用品・寝具管理,掃除,ゴミ処理)の特徴
【序論】
IADLは軽度認知障害および主観的記憶障害の段階から障害されることが知られている(Ikeda Y, 2019).家事は,認知機能低下に伴い様々な困りごとが発生し,早期の対応が在宅生活を継続するポイントなる.地域在住の認知症の診断を有す高齢者に対し,具体的な生活行為の障害/残存を見いだせる生活行為工程分析表(PADA-D)(田平, 2019, Tabira, 2022)を用いて,今回は家事(食後の片付け,生活用品・寝具管理,掃除,ゴミ処理)に絞って重症度の比較検討を行った.
【方法】
2017-2020年に全国の認知症疾患医療センター,通所リハ・介護,訪問看護からリクルートされ,認知症専門医によって診断された65歳以上の地域在住認知症者73名(AD48名,血管性認知症5名,レビー小体型認知症3名,混合型認知症17名)を解析対象とした.調査内容は,基本情報,MMSE,Lawton IADL,PADA-D等であった.PADA-DのIADLは8行為であり,家事は,食事の後片付け,生活用品の管理,寝具管理,掃除する,ゴミ捨ての5工程で各3つの下位項目で構成される.重症度はMMSE(軽度群21以上:26名,中等度群20-11:36名,重度群10点以下:11名)(Perneczky R, 2006)にて分類した.統計は,各工程については完全自立(3点満点),下位項目については自立(Yes)の割合を算出し,χ2および残差分析にて重症度ごとの割合を比較検定した.本研究は鹿児島大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
年齢は(軽度―重度群:83.1-83.5歳)は3群間に差はないが,性別は重度群で女性が多く,独居は軽度群(25.8%)が最も多かった.工程別において食事の後片付け(軽度51%,重度9%),掃除(軽度33%,重度0%),ゴミ処理(軽度26%,重度0%)に有意差があり,重症度に伴い自立度低下した.一方,生活用品の管理(冷蔵庫管理,書類管理等),寝具管理(ベッドメイキング,干す等)については,軽度から自立度が低く(18.3%,11.9%),難易度の高い工程であった.食事の後片付けででは,3群ともに下位項目「洗う」,「拭く」,「元の場所に戻す」の順に低下し,重症度の自立度差が大きくなった.掃除では,「掃除機をかける・掃く」,「拭く・磨く」,「片づける」の項目で軽・中等度群と重度群で大差がついた.ゴミ処理では,「分別」,「収集日に出す準備」,「集積所への持ち運び」ともに軽度群では40%以上であったが,重度群では10%を下回った.
【考察】
書類管理や衣類管理等の日常用品の管理,ゴミ処理「収集日に出す準備」は,予定記憶や見当識など中・長期的なマネジメントを必要とする家事である.マーキングなどの手がかり対策に加えカレンダーやリマインダー機能のある情報通信機器等を活用した早期からの対策が必要となる.一方,掃除や食事の後片付けでは,習慣的な手続き記憶を要する項目では,中・重度者でも残存する可能性が高いため,家族介護者への協力(過介助を避ける説明等)が必要なのかもしれない.PADA-Dで生活行為を詳細に分析することは作業療法士の得意を引き出せる可能性がある.
IADLは軽度認知障害および主観的記憶障害の段階から障害されることが知られている(Ikeda Y, 2019).家事は,認知機能低下に伴い様々な困りごとが発生し,早期の対応が在宅生活を継続するポイントなる.地域在住の認知症の診断を有す高齢者に対し,具体的な生活行為の障害/残存を見いだせる生活行為工程分析表(PADA-D)(田平, 2019, Tabira, 2022)を用いて,今回は家事(食後の片付け,生活用品・寝具管理,掃除,ゴミ処理)に絞って重症度の比較検討を行った.
【方法】
2017-2020年に全国の認知症疾患医療センター,通所リハ・介護,訪問看護からリクルートされ,認知症専門医によって診断された65歳以上の地域在住認知症者73名(AD48名,血管性認知症5名,レビー小体型認知症3名,混合型認知症17名)を解析対象とした.調査内容は,基本情報,MMSE,Lawton IADL,PADA-D等であった.PADA-DのIADLは8行為であり,家事は,食事の後片付け,生活用品の管理,寝具管理,掃除する,ゴミ捨ての5工程で各3つの下位項目で構成される.重症度はMMSE(軽度群21以上:26名,中等度群20-11:36名,重度群10点以下:11名)(Perneczky R, 2006)にて分類した.統計は,各工程については完全自立(3点満点),下位項目については自立(Yes)の割合を算出し,χ2および残差分析にて重症度ごとの割合を比較検定した.本研究は鹿児島大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
年齢は(軽度―重度群:83.1-83.5歳)は3群間に差はないが,性別は重度群で女性が多く,独居は軽度群(25.8%)が最も多かった.工程別において食事の後片付け(軽度51%,重度9%),掃除(軽度33%,重度0%),ゴミ処理(軽度26%,重度0%)に有意差があり,重症度に伴い自立度低下した.一方,生活用品の管理(冷蔵庫管理,書類管理等),寝具管理(ベッドメイキング,干す等)については,軽度から自立度が低く(18.3%,11.9%),難易度の高い工程であった.食事の後片付けででは,3群ともに下位項目「洗う」,「拭く」,「元の場所に戻す」の順に低下し,重症度の自立度差が大きくなった.掃除では,「掃除機をかける・掃く」,「拭く・磨く」,「片づける」の項目で軽・中等度群と重度群で大差がついた.ゴミ処理では,「分別」,「収集日に出す準備」,「集積所への持ち運び」ともに軽度群では40%以上であったが,重度群では10%を下回った.
【考察】
書類管理や衣類管理等の日常用品の管理,ゴミ処理「収集日に出す準備」は,予定記憶や見当識など中・長期的なマネジメントを必要とする家事である.マーキングなどの手がかり対策に加えカレンダーやリマインダー機能のある情報通信機器等を活用した早期からの対策が必要となる.一方,掃除や食事の後片付けでは,習慣的な手続き記憶を要する項目では,中・重度者でも残存する可能性が高いため,家族介護者への協力(過介助を避ける説明等)が必要なのかもしれない.PADA-Dで生活行為を詳細に分析することは作業療法士の得意を引き出せる可能性がある.