第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

高齢期

[OJ-4] 一般演題:高齢期 4

2023年11月12日(日) 08:30 〜 09:30 第6会場 (会議場A2)

[OJ-4-4] 在宅認知症高齢者に対する認知機能支援機器の提供に関わる専門職の役割と課題:インタビュー調査

川崎 めぐみ1, 西浦 裕子2, 井上 剛伸1 (1.国立障害者リハビリテーションセンター研究所, 2.名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻 作業療法科学講座)

【序論】認知症高齢者の自立生活を支援し,認知機能の改善に働きかける支援機器として,認知機能支援機器の有効性が示されている.支援機器の種類としては,メモリーエイド,服薬支援機器,スケジュール支援機器,セラピーロボット,徘徊感知機器など,近年様々な支援機器が開発・利用されてきている.しかし,支援機器の受け入れや操作の複雑さ,必要性の認識の低下,支援や情報の不足など導入における課題も指摘されており(Yusif et al., 2016),十分に普及していない現状がある.
【目的】在宅認知症高齢者の生活を支援するための認知機能支援機器の提供状況,関連職種の関わり,提供における課題及び必要な支援を明らかにする.
【方法】在宅認知症高齢者に対して支援機器提供に携わるリハビリテーション専門職や介護支援専門員等(以下,専門職)を対象としてインタビュー調査を実施し,7施設より10名の参加協力を得た.インタビューガイドを用いた半構造化面接を実施し,認知機能支援機器の提供状況,導入における課題,必要な支援や情報,必要としている支援機器について回答を得た.回答は録音し,逐語録を作成,回答をコード化し,関連する項目をカテゴリー化して分析した.対象者には文書及び口頭にて説明し,研究参加の同意文書に署名を得た.当センターの倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】対象者は平均年齢46.3±SD6.4歳,女性8名,男性2名,職種はリハビリテーション専門職4名(作業療法士3名,理学療法士1名),介護支援専門員4名,福祉用具専門相談員2名であった.認知機能を支援する機器に関する相談としては,徘徊対策,服薬管理,買い物支援,生活の見守り支援などが挙げられた.全ての回答者は認知機能を支援する機器を活用した経験があり,これまでに提供に携わった支援機器は,徘徊感知機器など安全管理に関わる支援機器9名,服薬支援ロボット4名,電子カレンダー3名などであった.専門職間で情報共有し,多職種協働で導入や利用継続を検討されているも,退院や転院に伴う専門職間の連携不足,支援機器の共通認識が十分でないこと,専門職の関わりのない利用対象者への適合評価の不十分さ,などが課題として挙げられた.認知機能支援機器導入における課題としては,年代による支援機器受け入れの違いや抵抗感,機器操作・管理の複雑さ,高齢者世帯,支援者不在,金銭的負担,支援機器や支援制度に関する情報の不足などの項目が抽出された.必要としている支援機器としては,認知症の進行予防や自立支援,健康増進,介護者の負担軽減につながることを目的に,服薬支援や外出支援,見守り支援に関連する機器が挙げられ,通信機能付き支援機器の導入費用の助成や高齢者の方も情報通信技術(ICT)が活用しやすい環境の構築に関する回答も挙げられた.
【考察】在宅認知症高齢者の自立生活を維持し,認知機能を支援し,介護負担を軽減するために,支援機器の活用が期待されており,徘徊対策など安全に関わる支援機器が多く提供されていた.専門職としては,利用者の認知特性に加えて,支援機器利用への積極性,介護力を含めた生活環境,活用可能な支援制度を踏まえて,有効な支援機器提供を検討する必要がある.多職種協働での評価・介入をより円滑に進めるためにも,専門職が必要とする情報が不足していることは課題である.今後,認知機能支援機器提供に必要な関連職種の役割を整理し,導入からフォローまでに必要な支援の枠組みを検討し,必要とする方に対して,より適する支援機器が提供できるよう目指していく.