[OK-2-2] COVID-19罹患後に出現した高次脳機能障害に対する作業療法
【はじめに】
近年,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)罹患後に疲労感や倦怠感,呼吸苦や筋力低下,睡眠障害,高次脳機能障害等の出現が報告されている.しかしCOVID-19罹患後入院治療する機会は減少し,それらの症状が遷延したまま生活している方も少なくない.特に高次脳機能障害は自宅生活や復職について大きな影響を及ぼし,心理的負担は大きくQOLの低下にも繋がっている.
今回我々は,COVID-19罹患後より疲労感や倦怠感,記憶障害を呈したまま自宅生活を送っていた40代男性に対して作業療法(以下,OT)を実施し,復職に向けた支援を行ったのでここに報告する.
なお倫理的配慮として,発表にあたり本人には口頭・書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
40歳代男性,右利き,妻,子供と同居し,現職の警察官であった.X-4ヶ月COVID-19陽性となり,発熱,頭痛,咽頭痛,食欲低下が出現,1週間にて症状改善するも,その頃より頭重感,物忘れの症状が出現した.他院にてMRI施行するも異常所見は認められなかったため復職,しかし倦怠感や記憶障害を認め2週間にて休職となった.自宅生活において「料理ができない」,「易怒性」等の症状を認め,当院受診,精査目的にてX月Y日入院となった.本人の主訴は,「疲れやすく,記憶が混乱してしまう」であった.採血,頭部MRI,髄液検査,脳血流SPECT,脳波の検査を行うも,特記すべき異常所見は認められなかった.
【初期評価(Y+1〜2日)】
身体機能は,握力(右)9.2kg,(左)18.1kg,Sit to Stand-5(以下,SS-5) 11.1秒,Timed Up & Go Test(以下,TUG)快適歩行条件8.5秒(以下,快適),努力歩行条件7.4秒(以下,努力),10m歩行テスト快適9.8秒,努力8.2秒であった.認知機能は,MMSE20点(時間の見当識-1,場所の見当識-1,計算-5,遅延再生-3),FAB16点(類似性-1,語の流暢性-1),ACE-Ⅲ85点(記憶-6,流暢性-7)であり,WAIS-Ⅳは,言語理解72,知覚推理93,ワーキングメモリー91,処理速度128,全検査IQ89であった.またS-PAは有関係対語0-5-4,無関係対語0-0-2であり記憶面の低下を示していた.病棟内ADLは自立にて可能であったものの,日中の多くをベッド上臥位にて過ごしていた.
【経過】
易疲労性のため症例とスケジュールについて話し合い,倦怠感の少ない午後からOT介入を開始した.介入2週後日中座位にて過ごす時間が増えたため,午前・午後と介入時間を増やし実施した.記憶障害に対してはメモリーノートを使用し,「主治医,病棟スタッフからのコメント」「その日にあった検査」等を説明する課題を設定した.また復職に向けては事務職等への配置転換を考慮し,文章をタイピングする課題を実施した.
【最終評価(Y+19〜20日)】
握力(右)11.1kg,(左)19.6kg,SS-5は9.3秒,TUG快適6.3秒,努力5.6秒,10m歩行テスト快適8.1秒,努力6.6秒であった.MMSE28点(遅延再生-2),FAB18点,ACE-Ⅲ93点(記憶-5,流暢性-2)であり改善が認められた.S-PAは有関係対語2-7-8,無関係対語1-2-4であり記憶面の低下は残存していた.主治医と本症例の身体・認知機能を協議し,職場の上司に説明,今後の復職について検討した結果,Y +21日回復期病院へ転院となった.
【考察】
本症例はCOVID-19感染症後,記憶障害を中心とした高次脳機能障害を認め,復職困難であり自宅生活を送っていた.臨床検査では異常所見が認められなかった症例であるが,OTが関わることで症状が明確となり,アプローチすることで復職に向けた支援が可能となった.
近年,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)罹患後に疲労感や倦怠感,呼吸苦や筋力低下,睡眠障害,高次脳機能障害等の出現が報告されている.しかしCOVID-19罹患後入院治療する機会は減少し,それらの症状が遷延したまま生活している方も少なくない.特に高次脳機能障害は自宅生活や復職について大きな影響を及ぼし,心理的負担は大きくQOLの低下にも繋がっている.
今回我々は,COVID-19罹患後より疲労感や倦怠感,記憶障害を呈したまま自宅生活を送っていた40代男性に対して作業療法(以下,OT)を実施し,復職に向けた支援を行ったのでここに報告する.
なお倫理的配慮として,発表にあたり本人には口頭・書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
40歳代男性,右利き,妻,子供と同居し,現職の警察官であった.X-4ヶ月COVID-19陽性となり,発熱,頭痛,咽頭痛,食欲低下が出現,1週間にて症状改善するも,その頃より頭重感,物忘れの症状が出現した.他院にてMRI施行するも異常所見は認められなかったため復職,しかし倦怠感や記憶障害を認め2週間にて休職となった.自宅生活において「料理ができない」,「易怒性」等の症状を認め,当院受診,精査目的にてX月Y日入院となった.本人の主訴は,「疲れやすく,記憶が混乱してしまう」であった.採血,頭部MRI,髄液検査,脳血流SPECT,脳波の検査を行うも,特記すべき異常所見は認められなかった.
【初期評価(Y+1〜2日)】
身体機能は,握力(右)9.2kg,(左)18.1kg,Sit to Stand-5(以下,SS-5) 11.1秒,Timed Up & Go Test(以下,TUG)快適歩行条件8.5秒(以下,快適),努力歩行条件7.4秒(以下,努力),10m歩行テスト快適9.8秒,努力8.2秒であった.認知機能は,MMSE20点(時間の見当識-1,場所の見当識-1,計算-5,遅延再生-3),FAB16点(類似性-1,語の流暢性-1),ACE-Ⅲ85点(記憶-6,流暢性-7)であり,WAIS-Ⅳは,言語理解72,知覚推理93,ワーキングメモリー91,処理速度128,全検査IQ89であった.またS-PAは有関係対語0-5-4,無関係対語0-0-2であり記憶面の低下を示していた.病棟内ADLは自立にて可能であったものの,日中の多くをベッド上臥位にて過ごしていた.
【経過】
易疲労性のため症例とスケジュールについて話し合い,倦怠感の少ない午後からOT介入を開始した.介入2週後日中座位にて過ごす時間が増えたため,午前・午後と介入時間を増やし実施した.記憶障害に対してはメモリーノートを使用し,「主治医,病棟スタッフからのコメント」「その日にあった検査」等を説明する課題を設定した.また復職に向けては事務職等への配置転換を考慮し,文章をタイピングする課題を実施した.
【最終評価(Y+19〜20日)】
握力(右)11.1kg,(左)19.6kg,SS-5は9.3秒,TUG快適6.3秒,努力5.6秒,10m歩行テスト快適8.1秒,努力6.6秒であった.MMSE28点(遅延再生-2),FAB18点,ACE-Ⅲ93点(記憶-5,流暢性-2)であり改善が認められた.S-PAは有関係対語2-7-8,無関係対語1-2-4であり記憶面の低下は残存していた.主治医と本症例の身体・認知機能を協議し,職場の上司に説明,今後の復職について検討した結果,Y +21日回復期病院へ転院となった.
【考察】
本症例はCOVID-19感染症後,記憶障害を中心とした高次脳機能障害を認め,復職困難であり自宅生活を送っていた.臨床検査では異常所見が認められなかった症例であるが,OTが関わることで症状が明確となり,アプローチすることで復職に向けた支援が可能となった.