[OK-3-2] 鍵探し検査(Key Search Test;KST)の認知機能障害スクリーニング検査としての有効性 第2報
【序論】
近年の高齢化に伴い，医療機関で認知機能検査を行う機会が増加している．検査では軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の早期発見が重要で，その鑑別には複数の領域を評価する事が必要となる．なかでも実行機能検査はMCIの鑑別に有用とされる．そこで比較的導入が容易な実行機能検査である鍵探し検査(Key Search Test:KST)に着目した．本研究の目的はKSTが認知機能障害のスクリーニングに有用であるかを検証した．
【方法】
本研究は高齢者を対象に，KSTの有用性を調査する横断的研究である．方法はすべての対象にKST，Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J)，Trail Making Test(TMT)，Clock Drawing Test(CDT)，Frontal Assessment Battery(FAB)，老研式活動能力指標(老研式)および一般情報の問診を実施した．主治医の確定診断後，対象を健常群・MCI群・認知症群のいずれかに振り分け分析対象とした．変数はKSTを始め各種得点及び，年齢，教育年数，自覚症状を独立変数とし，従属変数は健常者,認知症群,MCI群の3群とした．統計学的手法は対応のない3群間の差の比較を行った．解析はSPSS Ver23で解析を行い，帰無仮説の棄却域は有意水準を5%とした．
【対象】
対象は2018年11月30日から2019年10月31日までの間に，認知機能検査のため受診した65～90歳までの高齢者70名である．対象は画像診断と神経心理学検査の結果に欠損がなく，主治医による診断がなされた者を選択した．
【倫理的配慮】
研究実施にあたり全対象に書面にて説明を行い，同意を得た．なお，国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:18-ifn-067 )．また本研究は企業等と経済的な利益関係のない研究である．
【結果】
調査の結果，70名中59名(男性29名・女性30名)から有効なデータが得られた．内訳は健常群10名，MCI群25名，認知症群24名であった．MCI群と認知症群および健常群と認知症群の比較は，すべての検査で有意差を認めたが(P>0.001)，健常群とMCI群ではFABでのみ差を認め(P=0.03)，その他の検査は統計学的有意差を認めなかった．KSTの採点項目は線の水平または垂直性(P=0.001)・連続性(P=0.006)・既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み(P>0.001)，鍵の発見(P>0.001)，実施時間(P>0.001)に有意差を認めた．中でも，MCIと健常者の比較では，線の水平または垂直性(P=0.002)と実施時間(P=0.013)で有意差を認め，MCIと認知症の比較では， 既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み・鍵の発見・実施時間(すべてP>0.001)に有意差を認めた．
【考察】
KSTのPPの比較では，認知症とMCIの鑑別には有用であるが，健常者との鑑別は困難であった．しかし，KSTの採点項目別の比較を行うと，MCI特有の非効率性や時間の延長などが観察され，なかでも所要時間はMCIにおいて延長し易い特徴がみられた．そのため，KSTの下位項目を分析・比較や実施時間の傾向を把握することが，MCIの検出に有用な手段となる可能性がある．以上の結果から，KSTは認知機能障害スクリーニング検査として有用である可能性が示唆された．
近年の高齢化に伴い，医療機関で認知機能検査を行う機会が増加している．検査では軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の早期発見が重要で，その鑑別には複数の領域を評価する事が必要となる．なかでも実行機能検査はMCIの鑑別に有用とされる．そこで比較的導入が容易な実行機能検査である鍵探し検査(Key Search Test:KST)に着目した．本研究の目的はKSTが認知機能障害のスクリーニングに有用であるかを検証した．
【方法】
本研究は高齢者を対象に，KSTの有用性を調査する横断的研究である．方法はすべての対象にKST，Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J)，Trail Making Test(TMT)，Clock Drawing Test(CDT)，Frontal Assessment Battery(FAB)，老研式活動能力指標(老研式)および一般情報の問診を実施した．主治医の確定診断後，対象を健常群・MCI群・認知症群のいずれかに振り分け分析対象とした．変数はKSTを始め各種得点及び，年齢，教育年数，自覚症状を独立変数とし，従属変数は健常者,認知症群,MCI群の3群とした．統計学的手法は対応のない3群間の差の比較を行った．解析はSPSS Ver23で解析を行い，帰無仮説の棄却域は有意水準を5%とした．
【対象】
対象は2018年11月30日から2019年10月31日までの間に，認知機能検査のため受診した65～90歳までの高齢者70名である．対象は画像診断と神経心理学検査の結果に欠損がなく，主治医による診断がなされた者を選択した．
【倫理的配慮】
研究実施にあたり全対象に書面にて説明を行い，同意を得た．なお，国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:18-ifn-067 )．また本研究は企業等と経済的な利益関係のない研究である．
【結果】
調査の結果，70名中59名(男性29名・女性30名)から有効なデータが得られた．内訳は健常群10名，MCI群25名，認知症群24名であった．MCI群と認知症群および健常群と認知症群の比較は，すべての検査で有意差を認めたが(P>0.001)，健常群とMCI群ではFABでのみ差を認め(P=0.03)，その他の検査は統計学的有意差を認めなかった．KSTの採点項目は線の水平または垂直性(P=0.001)・連続性(P=0.006)・既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み(P>0.001)，鍵の発見(P>0.001)，実施時間(P>0.001)に有意差を認めた．中でも，MCIと健常者の比較では，線の水平または垂直性(P=0.002)と実施時間(P=0.013)で有意差を認め，MCIと認知症の比較では， 既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み・鍵の発見・実施時間(すべてP>0.001)に有意差を認めた．
【考察】
KSTのPPの比較では，認知症とMCIの鑑別には有用であるが，健常者との鑑別は困難であった．しかし，KSTの採点項目別の比較を行うと，MCI特有の非効率性や時間の延長などが観察され，なかでも所要時間はMCIにおいて延長し易い特徴がみられた．そのため，KSTの下位項目を分析・比較や実施時間の傾向を把握することが，MCIの検出に有用な手段となる可能性がある．以上の結果から，KSTは認知機能障害スクリーニング検査として有用である可能性が示唆された．