[OL-1-1] Brain-computer interfaceを上肢動作支援ロボットに実装するためのアプリケーション開発
[はじめに] 脳卒中による運動機能障害は, 患者の運動能力, 日常生活活動の制限, 社会への参加, および専門的活動の阻害因子である. リハビリテーションでは, 患者が他動的に運動されるよりも, 能動的に目標に向かって運動練習したほうが, 回復が良いことが報告されており, 近年ではMotor Imagery : MIとrobotによる運動サポートや電気刺激を組み合わせたBrain computer interface-robot : BCI-robotによるリハビリテーションにより有意な回復が報告されている. 重度麻痺のある患者では, 能動的な上肢運動が困難なため, 適切な運動介助は機能回復に重要である. 本研究は, 回復期における重度上肢麻痺患者が, 対象の運動に関する動画を見ながらMIを行ったときに脳波のevent related desynchronization:ERDを検出し, これを埼玉県立大学で開発された上肢関節可動域練習ロボット:DiCに実装し, リアルタイムフィードバックできるBCI-DIC systemを開発することを最終目標とし, まず, BCIアプリを作成し, 実装検証を行った.
[方法] 脳卒中後片麻痺を有して回復期病棟に入院の患者を対象として, FMAが20点未満のもの15人選定した. その中で同意の得られた13名に対して国際10-20法に準じて8個のアクティブ電極でC3, Cz, C4, P3, Pz, P4の脳波を測定し, MI行う際に脳電位が急激に低下する現象(ERD)を起源としてDiCに肘関節屈曲運動を行わせた. ERD検出にはマルコフスイッチングモデル(MSM)とrelative powerが知られている.そこで双方の計算が行える脳波検出アプリを作成した. ERD検出の有無は検出アプリによるDiCの作動によって判断した. BCIにとってMSMとrelative powerのどちらが有利かを判定するために, DICの反応時間δ(t)(測定された脳波から脳波検出アプリを用いてERDを検出し, DiCに出力されるまで)を計測し, MSMとrelative powerの反応時間をOne sample T-testを用いて比較した. 統計学的有意水準は0.05未満とした.
[結果] 実験に同意した患者は13名だった. さらにCOVID19蔓延により実験が延期になり実験日の延長をしているうちに退院した患者1人と, 上肢麻痺が回復してFMAの点数が適格基準の20点を超えていた患者2名が除外され, 解析対象者は10人となった. 利き手は全員右手, 年齢76歳[53.5, 77.8], 身長155.5cm [153.0, 170.0], 体重58.4kg [53.0, 59.7], 発症日数76日[40.8, 90.5], FMA: 8.0 [7.0, 8.8], MMSE: 27.5 [26.3, 28.8](中央値[第一四分位, 第三四分位])であった.MSMとrelative powerのどちらも測定した10人の被験者の全員でERDを検出することができた. MSMとrelative powerの演算処理方法でDiCの反応時間を比較したところ結果はMSMが10.5±0.1秒,relative powerが12.4±1.4であり,反応時間はMSMのほうが有意に短かった (t=-3.80, p=0.009, Cohen’s d=1.43).
[考察] 本研究では重症の上肢麻痺患者においてMI時に脳電位の減少が観察され, ERD反応を確認することができた. 重度の上肢麻痺による不活動期間が長い患者であってもMIにより運動野は興奮し, ERDが検出できることが示唆された. MSMとrelative powerの演算処理の違いによるDiCの反応時間では, MSMの方が処理時間は短いことが分かったが, 現状のシステムではフィードバックまでの時間がかかりすぎるため, 現在と異なる安全制御システムを考案する必要がある.
患者の運動意図と実際の関節運動による訓練が従来の運動療法に比べて回復量が大きいことから,今後はDiCの改良と並行して, MIと脳波によるバイオフィードバック装置の開発と,徒手療法を組み合わせた訓練方法の効果を検証して社会実装につなげたい.
[方法] 脳卒中後片麻痺を有して回復期病棟に入院の患者を対象として, FMAが20点未満のもの15人選定した. その中で同意の得られた13名に対して国際10-20法に準じて8個のアクティブ電極でC3, Cz, C4, P3, Pz, P4の脳波を測定し, MI行う際に脳電位が急激に低下する現象(ERD)を起源としてDiCに肘関節屈曲運動を行わせた. ERD検出にはマルコフスイッチングモデル(MSM)とrelative powerが知られている.そこで双方の計算が行える脳波検出アプリを作成した. ERD検出の有無は検出アプリによるDiCの作動によって判断した. BCIにとってMSMとrelative powerのどちらが有利かを判定するために, DICの反応時間δ(t)(測定された脳波から脳波検出アプリを用いてERDを検出し, DiCに出力されるまで)を計測し, MSMとrelative powerの反応時間をOne sample T-testを用いて比較した. 統計学的有意水準は0.05未満とした.
[結果] 実験に同意した患者は13名だった. さらにCOVID19蔓延により実験が延期になり実験日の延長をしているうちに退院した患者1人と, 上肢麻痺が回復してFMAの点数が適格基準の20点を超えていた患者2名が除外され, 解析対象者は10人となった. 利き手は全員右手, 年齢76歳[53.5, 77.8], 身長155.5cm [153.0, 170.0], 体重58.4kg [53.0, 59.7], 発症日数76日[40.8, 90.5], FMA: 8.0 [7.0, 8.8], MMSE: 27.5 [26.3, 28.8](中央値[第一四分位, 第三四分位])であった.MSMとrelative powerのどちらも測定した10人の被験者の全員でERDを検出することができた. MSMとrelative powerの演算処理方法でDiCの反応時間を比較したところ結果はMSMが10.5±0.1秒,relative powerが12.4±1.4であり,反応時間はMSMのほうが有意に短かった (t=-3.80, p=0.009, Cohen’s d=1.43).
[考察] 本研究では重症の上肢麻痺患者においてMI時に脳電位の減少が観察され, ERD反応を確認することができた. 重度の上肢麻痺による不活動期間が長い患者であってもMIにより運動野は興奮し, ERDが検出できることが示唆された. MSMとrelative powerの演算処理の違いによるDiCの反応時間では, MSMの方が処理時間は短いことが分かったが, 現状のシステムではフィードバックまでの時間がかかりすぎるため, 現在と異なる安全制御システムを考案する必要がある.
患者の運動意図と実際の関節運動による訓練が従来の運動療法に比べて回復量が大きいことから,今後はDiCの改良と並行して, MIと脳波によるバイオフィードバック装置の開発と,徒手療法を組み合わせた訓練方法の効果を検証して社会実装につなげたい.