第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

援助機器/理論

[OL-1] 一般演題:援助機器 4/理論 1

2023年11月11日(土) 14:50 〜 16:00 第7会場 (会議場B3-4)

[OL-1-6] 急性期病院作業療法の介入戦略としての院内活動実践プログラムの提案

白砂 寛基1, 杉原 素子2 (1.国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション技術部, 2.国際医療福祉大学大学院)

【はじめに】
急性期病院から自宅退院する患者への作業療法では日常生活活動(Activities of Daily Living: ADL)に加え手段的日常生活活動(Instrumental Activities of Daily Living; IADL)への介入が必要であるが,IADLへの介入は療法士個人の判断に任されているとの報告がある.そこで,作業療法士が急性期から積極的にIADLを行うためのツール「院内活動表」を考案し,実践してきた.院内活動表とは,「手を洗う」「食器を洗う」など病院内で実施可能な60種類の生活行為をまとめた一覧表である.
院内活動表を用いた実践の成果をまとめ,急性期から生活行為を積極的に用いる作業療法の介入戦略の意義を考察し,「院内活動実践プログラム」として提案する.
【方法】
1)院内活動表を用いた比較試験
院内活動表を用いた介入群(1日上限20分として,毎日異なるADL・IADL練習を行う)18名と,ADL等の目標を設定し,その達成のための心身機能やADL練習を行う対照群14名との準ランダム化比較試験を行い,患者の心身機能,ADL,活動への意識を評価した.
2)人工膝関節全置換術(Total knee arthroplasty: TKA),人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty: THA)術後患者への実践と院内活動表の作成
TKA・THA術後患者に院内活動表を参考にした作業療法介入を行い,その実施記録からADL・IADL練習の内容とその実施日(術後日数),対象者の介入に対する発言を調査した.
【結果】
1)MMSE,握力,FIMは,介入群と対照群ともに介入前後には有意な改善が見られたが,2群間に有意な差は認められなかった.活動に関するアンケートでは,リハビリテーション実施時間以外の活動量について,介入群のみ介入前後に有意な改善が得られた.
2)作業療法で行われたADL・IADL練習は,ベッド周辺の生活行為から段階的にバランスを要する応用的な生活行為が行われた.行われた生活行為40項目を実施順に並べ,TKA・THA患者用の表を作成した.対象者からは,ADL・IADLの実施で生活に目が向くようになったとの発言が得られた.
【考察】
院内活動表を用いた介入は,ADL獲得を目指す心身機能,ADL中心の介入に比べ,身体機能に対しては同等の効果を得ながらリハビリテーション実施時間以外の活動量増加,意識を生活に向けるきっかけとなることが示唆された.また,介入群に実施された生活行為の変遷は,生活行為を用いた介入が作業療法士にとっては生活行為の評価になり,より複雑な生活行為が行えるようになったものと考える.この方法により,急性期作業療法において,より多くのIADLの実施が可能となると考える.
 このような急性期作業療法で,ADL・IADLを難易度順に段階的に行う介入を「院内活動実践プログラム」として提案する.「院内活動実践プログラム」の目的は,1)患者の自身の生活行為に対する自己認識(できる/できない)を正しいものにすること,2)患者の生活に対する意識を高め,具体的な目標を引き出すこと,3)患者が安全に行える生活行為を増やし,入院中の活動量を高めることである.また,その意義と新規性は,1)患者の状態の変化の大きい急性期においても,作業療法士が生活行為を通して患者の状態を把握できること,2)急性期の短時間,短期間の介入においても,作業療法士が多くのIADLへの介入が可能になることであると考える.